運命を知っているオメガ

riiko

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本編

49、天才を知っているオメガ

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 あれから櫻井とは学校帰りにちょくちょく会っている。

 司のことを、運命のことを唯一知っているから、誰にも言えない悩みを一緒に抱えてくれる唯一の友達だったから、そう理由をつけている自分がちょっと卑怯だけど、だって、俺だって、いっぱいいっぱいなんだも――ん!

 俺まだピチピチの高校一年生だよ!? こんな悩みヘビーすぎだろ――! それに遊びたいお年頃なのにさ、学校の奴と帰ろうとすると司がすぐ邪魔しにくるから、最近じゃ友達と放課後遊びにも行けてない。

 そんな俺と遊びに行けるのは、学校の外で会える櫻井しかいない! 今となってはそんな存在は貴重なのだ。

 あれから核心に迫った話はしないが、でも櫻井はまた前みたいに友達ではなく、俺を好きな男という立場を隠さなくなった。

 流石に手は出してこないが、行動の端々で感じる優しさや愛情には時々困る。やっぱりもう、男友達には戻れないのかなという寂しさもあったが、でもアルファとしてオメガを大事にするいい奴なのだろうなというのは、日に日に確信を持てるようになった。

 なんだ? これ。まるで結婚相手を見定めている女じゃないか……。

 どちらの方が幸せになれるか的な? 俺はいつからこんな打算的な人間になってしまったのだろう、なんだかオメガになってからは情けないことが増えた気がする。

「正樹、また難しいこと考えている? ただこの時間は変なこと考えないで楽しんで欲しいな。俺は別に今回すぐつがいにしなくてもいいんだ。でも今回のヒートでつがいにならないなら、西条から発情期に見つからない方法を考えないと、正樹のオメガの運命はもう決まっちゃうよ?」
「うん。でも司から逃げるからって、こんな大事なこと決めるのはちょっと。見つからない方法あるかな?」
「やっぱり、俺のつがいになるって方法は取らないんだね」
「いや、その、お前がすごくいいやつなのは知っている。けど、でも、早急すぎるよ。仮に櫻井のつがいになるとしても、こんないきなりじゃなくて、時間をかけてきちんと信頼関係を築いてからがいい、ダメかな?」

 一生の問題を、司から逃げるだけの為に決めるのもおかしいし、やっぱり櫻井に悪い。

「ううん、完全否定じゃなくて良かった。でも、もし仮に俺と付き合ったとしても、つがいにならない限り西条にかっさらわれる気がする。そして怒りに狂った西条は何するかわか
らない。やっぱり早く俺とつがいになることが一番安全かな」
「なんか、あいつならやりかねない気がしてきた。あいつ、自分勝手で自分の決めたことは覆さないから。そして俺は知らない奴のつがいになる、そんな未来しか浮かばない」

 急に身震いしてきた。

 だって、こないだ付き合ってないって本当のこと言っただけで拉致されたし。さらにはしつこいくらい抱かれた。あれは同意ではないはず、でもオメガの俺は逆らえないから、同意みたいになっていたけど。

 いや、同意かも? 俺、気持ち良すぎてすげぇ、ねだっちゃったよ。も――恥ずか死ぬ!

 それにしてもだ! 毎回ああやって、抱かれることを正当化されても困る。仮に、発情期に司に見つかってしまったら、俺は抵抗できず、司が運命に気が付いてドン引きしたって、今度こそ淫らに誘ってしまうだろう。

「ふふっ、正樹もついに弱気になってきたな、西条に何かされた?」

 さすが櫻井、察しがいいな。

「いや、でも、あいつ横暴だし、これ以上逆らえきれないから、先手を打つのは正しいと思って」
「そうだな、正樹をそんなに悩ます存在はもう近くにいない方がいい」

 あれ? 微笑みの国の王子様が珍しく攻撃的な雰囲気だ。

「そうじゃないんだ。俺、それでも側にいたいんだ。でも俺がフリーのオメガな以上、いつかは運命がバレちゃう。だったら友達でもいいから司の側にいる方法ないかな」
「まぁ正樹につがいがいれば、つがい以外のアルファにはもうフェロモンは感知できないから、早く俺とつがいになることが一番の方法じゃない?」

 そうか、そうだよな。

 俺が櫻井のつがいになれば、大手をふって司と会えるんじゃね? もうビクビクせずに、友達になれるんだ! 告白はされたけど、最初は友達になりたいってとこから俺たちの関係は始まった。俺がオメガじゃなければ司と友達になれたんだ。だったらフェロモンさえ司にバレなければ一生友達でいれる?

 司の側を離れなくてすむなら、めっちゃいい! なにも恋人として付き合わなくても、これが一番いいじゃん!? 

 まさかの……オレ、天才!? 

 マジやばい、トリハダぁ――、キタ――、俺どんだけ――。父さん母さん、凡人正樹はついに、凡人を卒業して……天才になりました!

 いきなり最上の解決策が目の前に見えたぜ! 西条との問題だけに、な――んてな、ははっ! これでもう解決だぜ! 俺に怖いものなんて無い、最強だぁ!

 オレ、Sgeeeeee――。
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