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本編
50、恋が終わる時
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そうと決まれば櫻井にお願いするぞ。散々あーだこーだ言ったからな、櫻井もいい加減に俺のウダウダにうんざりしてきたかもしれないし、ここはちょっと控えめに……。
「や、やっぱ櫻井に番にしてもらおうかな……?」
「正樹ぃ!」
「お、おう!?」
問題なかったぞ、櫻井食い気味だった。
平日の夕方のカフェで俺の手を握ってきた。他の人は俺たちのことなんて見ないからどうってことないが、再会以来、初めてこうやって触れられた。少し怖い気もしたが、もう櫻井のことは認めている、だから俺も手を握り返した。
「でも、本当にいいの? 俺だよ? 噛んだら流石にもう逃してあげないよ? 今までは追ってくれたけど、俺オメガだから番になった途端、べったりしちゃうかもしれないよ? 俺ってとんでもない、い、い、淫乱オメガかもよ。気持ち悪くない? 考え直すなら今だぞ」
「ははっ、そんなの嬉しいしかないよ」
「そ、そうか……」
櫻井は相変わらずさわやか王子様でいい奴だった。そんな感じであっさりと櫻井に噛んでもらうことは決まった。
あとは発情期に司に見つからないことだ。俺の周期的にもうすぐなのはわかるけど、まだ人生二回目の発情期だから、いつ来るか正確な日までは俺には読めない、学校が同じ以上、毎日会う、これをどう回避すればいいのだろうか。
「もうすぐにしても正確な日にちがわからないなら、学校は風邪ひいたことにして、早めに休むのもありじゃない? もう俺と篭る?」
「う――ん。でもさすがにヒートで一週間休むのに、その前にって怪しすぎない? 薬飲んでいるし大丈夫だろ? 予定の前日には休むことにするよ」
着々と司とお友達になる計画が進んでいく!
「わかった、ヒートになってからじゃ危ないから、兆しきたらすぐ連絡して、とにかくヒートになる前に会おう」
「うん、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
そんなやり取りをして、その後はメールだけで近況報告していた。
はやければ来週にも、俺は櫻井の番になる。
それまでは司にバレないように行動していけばなんとかなるだろう、流石に家を一週間も空けるから親には櫻井のことを伝えなくちゃダメだろなと思いつつも、あいつうちではレイプ犯になっているし、ちょっと大変そうな気がする。
櫻井は俺の両親にきちんと謝って、それで番になることを許して欲しいってお願いしたいと言っていたけど、それはそれで難しそうだし、今話がこじれるのは面倒くさい。番になった事後報告の方がうまくいくだろうと言って、親には今回のことを言わずにいた。
ヒートが来そうな時に、ホテルに籠ると言えばいいか。そしたら自然と誰かと過ごすと察知してくれるだろう、オメガとはそういう生き物らしいから。
これで準備もできたし、あとは司と濃厚な接触をさけて過ごしていけばいいな。
これでいいんだ、だってあいつといても俺は運命と言えない。それに知られた時の報復の方が怖いし、何より俺を卑しいオメガとして見られるのだけは俺の心が耐えられそうにない、だから、これでいいんだ。
俺さえアルファに反応しなくなれば、司とは友達として付き合っていけるし、恋人にはなれなかったけど、番になれないなら友達としてでも側に居られればそれでいい。
俺の恋心はこれでおしまい。
番さえできれば、きっとこの心も落ち着いてくれるだろう。
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