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日本編
24、過去との決着 2 ※
しおりを挟む「……最低だ」
「お前がそうさせたんだ、イギリスなんか行かず日本にいたら、俺と一緒にいられたのに、お前が俺も陸斗も捨てたんだ」
「どうしてそうなるの? 逆恨みも良いところだね、もういいよ。過去のことはわかった。聞いたところで胸糞悪いだけだけど、陸斗を大切な守るべき弟だってことを再確認できたから、それでいい。もう帰って、二度とうちと関わらないで。陸斗の産んだ子供も、陸斗は誰かさんのせいで忘れているし、もう関係ないから」
話にならない、もう限界だった。過去付き合っていたこの人が、気持ち悪くて仕方ない。
「俺は、海斗を諦められない。俺たちは、陸斗さえ現れなければうまくいっていた」
「いい加減にして、バカじゃないの‼ もう昔の話であって、とっくに僕はその先に進んだ」
「そんなにあのガキがいいのか? ただの金持ちだろ、それにその匂い、マーキングされ過ぎだ。俺の香りを上書きしたら、そのガキ狂うだろうな。ベータ相手にそこまで香りをつけるなんて、相当な奴だ」
そう言うと、僕を押し倒した。
「えっ、何する気?」
「お前の初めてを俺が奪った、だったらお前の男からも俺が奪う。あんなガキだ、所詮アルファだから、自分の嫁を奪われたら目が覚める。アルファは人のモノを嫌う節があるからな」
「や、止めて‼」
僕の服を破いた、爽がこんなに乱暴に力任せにするとは信じられない。どうして、どうしてこんなことを。
「クソっ、なんだよコレ。体中いやらしい跡付けやがって‼」
「あっ。痛っ‼」
勢いよく乳首をつねられた。胸周りは類が大好きだから、いつもポテっと腫れている。類が嘗め回す胸周りもキスマークが集中している。
「相変わらず、吸い付く肌をしているな。大人になってますます綺麗になった」
「やだ‼ やめて、離してっ‼ ひぁっ」
「感じているじゃん」
違う、爽の舌が胸を這った時、気持ちが悪かった。僕の胸が感じやすいはずなのに、一瞬で吐き気までしてきた。なんでだろう、とにかくただただ気持ち悪いし、鳥肌も凄い。
「やだ、やだ、類っ‼」
「他の男の名前なんて、この先呼ばせない」
「ん、んんん」
キスされた、気持ち悪くてたまらない、息苦しさを吐き出そうと口を開いた瞬間、爽の舌が入り込んでくる。あんなにキスをしてきた人でも、今は嫌悪感しかない。とにかく気持ちが悪いし、頭も痛くなってきた。
僕は手で爽の胸を抑えて引き離そうとしたけど、やはりアルファで僕よりガタイがいいだけに、びくともしない。
「抵抗なんて無駄だよ、あぁ新鮮だな。海斗あの頃、気分じゃない日でも俺に流されて、抵抗することなかったもんな。美人を凌辱するのも悪くない」
「変態、こんなことして許されると思っているの? 爽はもう契約書を交わした、それを破るのは犯罪だ」
「大丈夫だよ、元サヤに戻っただけで終わる話だ」
僕は必死に抵抗しても、全く歯が立たない。どんどん服は剥ぎ取られて、ついに全裸にされた。
「綺麗だ、海斗。俺は今の嫁と離婚するから、陸斗の産んだ子供を二人で育てよう」
「やめて‼ ほんとにこんなのどうかしている。僕は結婚しているんだ、こんなことして僕の旦那が許すはずない」
「慰謝料ならいくらでも払う。日本に来て元カレと盛り上がるなんてよくある話だろ? 離婚手続きまでこっちでやるから、何も心配するな」
話が全く通じない。そういえば、爽は自分の思い通りになんでもこなしていく男だった。あの頃は、僕自身も何かに熱中することも、誰か特別な人もいなかったから、受け入れたというより抵抗する隙もなく流された。けど今は違う‼ 僕は類を愛しているし、モデルという仕事も誇りに思っている。
「やめてよ、爽。お願い、僕は類を、類だけを愛しているんだ」
「すぐに忘れさせてやる。なんだ、これ……」
「えっ」
爽は僕の手をきつく縛り直して、自由を奪った。そしてキスをして首元に顔が近づいた時、ひたすら気持ち悪かった。その首元を見て、爽は怒りだした。
「お前、ベータだろ。なんでうなじに噛み跡があるんだよ‼」
「あっ、それは」
「あのガキがしそうなことだ、番の真似事か?」
日本に来てから噛んだうなじ、今もまだ噛み跡は残っていたらしい。それを見た爽が怒り出した。そしてうつ伏せにすると、足を開かれて僕の蕾を撫でた。
「んんっやだ‼」
「海斗、あんな男忘れさせてやる」
爽は、自分の唾液を指につけて、僕のソコに入れてきた。
「いやっ‼」
どうしよう、一度は関係を持った相手だし、ただ凌辱されていれば、いずれは助けが来るかもしれない。そう思って諦めようとしても、体は拒否している。
「は、相変わらずいやらしくて、締まりがいいいな」
「やっ、やっ、やだぁ、痛いっ、いや」
ひたすら気持ちが悪いし、全く受け入れる余地がないくらい、僕のそこは侵入を拒んだ。吐き気が凄い、今まで誰かと体を交えて、そんなこと思ったこともない。ビッチだった自分が嘘のように、蕾は頑なに類以外の男を拒んでいる。
「あ、痛いっ、やめて‼」
「さんざんあのガキとやっているんだろ? それともここは使わないのか? すげぇ締めつけで俺の指拒むなんて、可憐でかわいいな。お前ビッチって噂があったから心配していたが、まるで遊んでなさそうで安心したわ」
類の指はすんなり受け付けるのに、爽の指は本当に無理だった。痛いし怖いし、震えも止まらない。
「ひっ、ひっく、や、お願い。許して」
「ダメだよ、これからはもうお前を離さない」
僕は、また類に同じ悲しみを味あわせることになるのかな。愛している人を他のアルファに奪われる。しかも、今度は嫁になったばかりの相手、高校生の頃の類と違う、もっとひどいトラウマを植え付けてしまう。
僕が犯されるだけじゃなくて、また大好きな人が悲しませるなんて耐えられない。きっと、僕は、爽と関係を持ったら、もう生きていけない。類の前に出られない。
「……ごめんなさい」
涙を流してつぶやいた。その時、ベッドルームのドアが勢いよく開いて、僕の上にいた爽が入ってきた人に拘束された。
「うわっ、なんだ‼」
「強姦の現行犯で、警察に引き渡します」
「強姦じゃねえよ。こいつは俺のだ‼」
「そもそも、ホテルへの不法侵入です。あなたのご実家の会社はうちとの取引停止命令を出されています」
凄いイケオジが、爽を拘束して淡々と話をしている。そして、そのイケオジと一緒に入ってきた男が僕を呼んだ。
「カイ‼」
「つ、つかさ?」
「もう大丈夫だ」
「ふっ、ふぅっ、ふえっん、わぁ――ん‼」
僕は司に抱きついた。類じゃないのは嫌だけど、こんな姿を類に見られなくて良かった、なんとも思っていない司だから問題なく、縋りつけた。
司はすぐに僕にシーツをかけてきて、ポンポンって背中をなでてくれた。
そして爽の叫び声が聞こえる。
「な、なんだって!? どうしてそうなった」
「海斗様のご主人のご実家である、サクラジュエリーの関連企業が縁を切られたと聞いたので、取引先はどんどん手を引いていますよ。サクラジュエリーを怒らせた企業と取引を続けるメリットなどありませんからね」
爽の家は有名な華道家で、フラワー事業では、大手ホテルなど数々の取引がある会社だった。サクラジュエリーとも取引があったのか、それで類のご両親が取引をやめて、他の企業もそうなったとのことらしい。
「そんな……海斗、あのガキにそんなことは止めさせろ! 陸斗のこと責任もって、これからも面倒を見るから! あいつはまだ俺を好きなはずだ、きっと俺が会いに行けば記憶も戻る」
「あなたは海斗様と直接交渉などできない身分だと聞いております、残念ですが海斗様とはこちらでお別れですよ」
「海斗、海斗‼」
爽はイケオジに連れて行かれた。司が僕に話しかけた。
「もう大丈夫、あいつはうちの支配人が警察に引き渡す。それでいい? それとも警察沙汰は困る?」
「ううん、それでいい。うやむやにはしたくない」
「櫻井にはこれから連絡する、助けにきたのが俺で悪かったな」
「ううん、こんな姿、類に見せられないから司で良かった、本当ありがとう。なんで僕が襲われているってわかったの?」
「ルームサービスに行ったやつが、カイじゃない男が出たって、それでエレベーターと廊下の監視カメラ見たら、無理やり部屋に連れ込まれるカイを確認したから」
「やっぱり司は優秀なんだね」
そんな会話をしていたら、急に吐き気がしてきた。
「大丈夫か? すぐに医者を呼ぶ」
「なんだろ、緊張がとけたの、かな? あっ、ダメだ、これ、頭、頭がいたいっ‼」
「カイ? カイ、カイ‼ おい、誰か、すぐに救急車呼べ‼ カイしっかりしろ、カイ!」
司が叫んでいるけど、もう限界だった。僕は急な頭痛で、痛みに耐えられなくなり、その場で意識がとだえた。
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