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イギリス編
閑話 ~愛したいβと愛されたいα~類視点
しおりを挟む「僕、自分から告白したのって初めてで、しかも人生初の告白で最愛の人と一生を誓えるなんて、凄くない!?」
「ふふ、光栄だなぁ。俺だって告白されて付き合うのは初めてで、それで童貞もらってくれた人と一生誓うのも凄くない!?」
「ふふ、お互い奇跡だね」
海斗ほどの人なら自分から行かなくても、周りがほっとかないのはわかる。それほどの人が俺に……まぁ始まりは軽い感じだったけど、告白してくれたなんて、今振り返ってもラッキーだったとしか考えられない。
今となっては無くてはならない人だし、正直初めからなんとなく惹かれていたのは確かだ。それは有名な美人モデルだからかと思いきや、実はしっかりした人で、わりと警戒心強そうなのに二人の時はくったくない笑顔を見せるとかで。
小悪魔にやられるって思ったのは秘密だけど、俺はすぐに恋に落ちた。
「類、大好き! 自分から好きになるって大事なことなんだね。前の彼氏の時は言われて付き合って、流されて三年も経ったけど結局終わったのはそういうことかな。僕を好きっていう人よりも、僕が好きって思える人といる方が幸せだってことだよね。ほら有名な言葉もあるし、僕は愛されるよりも愛したいんだなって」
「前の話持ちだすとかさ、嫉妬させたいの? 俺は海斗好きだよ」
まさか俺だって愛しているのに、愛されるより愛したいってなんだ? まぁ海斗は愛を惜しみなくくれるから、俺は嬉しいんだけど。俺の愛、伝わっている?
始まりが押されて付き合ったから、俺って情けないアルファって思われてないかな? ちょっと不安になって海斗をぎゅっと抱きしめた。海斗は俺の背中をポンポンって叩いて、耳もとでささやく。
「ん? 僕だって類が好きだよ? ううん大好きだよ、愛している」
「そうじゃなくて、俺も愛しているけど……俺が海斗を好きだって言っても、俺のことも好きって言い続けてくれる? 愛されるのも許して欲しい」
「ふはっ、相変わらず類は可愛いなぁ。もちろん、ただ僕が愛しているが強いのが大前提ってこと、それこそが僕の欲しかったものなんだよね」
海斗が俺にキスをした。海斗とのキスは、誰よりも気持ちいい。
「俺は、アルファは番や恋人を愛するのが当たり前で、アルファの相手は愛されるのが当たり前なんだって思っていた。そういう関係が普通なのかって、でも海斗に愛されて俺は愛するよりも愛されたかったのかなって、ちょっと自分でもアルファらしくない考えがでてきて驚いた。もちろん海斗をたまらなく愛しているけど、それ以上に愛される喜びが勝るというか……」
「なんか難しいこと言うね? でも大丈夫。僕は世界が認めるほどに、類を愛している。そして類は僕を愛している。ほら、ジャックにキスした時の記事にもあったでしょ?」
そうだ。あの俺の運命に出会った事件は、あの後やはり記事にされていた。
その内容は、道端でヒートを起こしたオメガを救ったモデルのkaiというものだった。kaiとジャックのキス写真と俺が自分にアルファ抑制剤を注射する写真。
『まだ番になっていない二人、 kaiの性別はオメガか!? ベータか!?』
というタイトルだった。
内容はアルファの俺が海斗にキスをして、海斗がその唾液をオメガにキスで送り、一時的にアルファの唾液を接種したオメガが、ヒートを落ち着かせたというものだった。そこで海斗のアルファ説が消えた。
恋人である俺が自分に緊急抑制剤を打っている……というのは、まだ俺に番がいない証拠だった。番がいるアルファはオメガのヒートにラットを起こしづらい。良かった、運命と出会ったkaiの恋人というタイトルじゃなくて!
そしてkaiの人命救助と、俺が恋人以外のオメガのヒートでも冷静に対処できるkaiの恋人ということで、世間は盛り上がった。kaiは愛されていると。そしてkaiが絶大な信頼をおけるアルファは、サクラジュエリー御曹司のルイ・サクライだと。二人は結婚秒読みとまで書いてくれた。まさにその通りだけど、世界に認められた関係は嬉しくて仕方ない。
結果、あの運命の出会いは、いろんなことが俺に味方をしてくれて、文字通り運命だった。
あの事件があったからこそ、海斗は俺と一生を誓ってくれた。俺というアルファを認めてくれたのだから。俺にとって海斗と一生を過ごせることになった運命の日だった。
「そうだね、あの記事を書いてくれた記者に感謝したい。俺たち、これからずっと一緒だよ」
「うん。僕はもう類を離さない」
俺は海斗を離さない、あの日、俺を諦めそうになった海斗だったけれど、それでも俺のもとに来てくれた。それを信じている。俺は、もうこの人しかいない。
この先、海斗に降りかかる困難があるのなら、全て俺が解決する。
今日も海斗のぬくもりに癒されて、一日が終わる。抱き合う日もあれば、ただ添い寝をする時もある。とにかく海斗と共に終え、そして目覚めると一番に海斗を見られる喜びに感謝して、これから先も海斗と生きていく。
「類、おはよう」
「海斗、おはよう。今日も愛している」
「ふふ、僕も愛している」
目が覚めるとキスをして、今日も愛おしい海斗と生きていく。
***
類視点でした。次回から日本編! 物語は激しく動き出します。
応援ありがとうございます!
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