運命を知りたくないベータ

riiko

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イギリス編

18、二人の約束 

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 シャワーを浴びた後、僕はいつになくだるくて動けなくなった。多分、類は自分のせいだと思ったのだろう、僕をそのまま家まで送ってくれた。

 抱きかかえて家に入ってくれたので、僕は鍵を閉めてキスをした。きちんとキスは返してくれるところが本当に可愛い。唇を離した時に、類は僕を降ろして言った。

「海斗、どうしたの? そんなに可愛く誘われたら俺、本当に困るよ」
「だって、僕、やっぱり後ろにれてもらわないと、うずいて仕方ないんだもん。類との撮影のために、僕は二週間も禁欲生活したんだよ、ご褒美くれてもいいじゃん」

 類は少し考えてから、僕を引き離して腕を両手でつかんで真剣な目をして僕を見た。

「俺は、付き合っている人とじゃなくちゃ、そこまでできない」
「……じゃあ、付き合おうか、僕たち」

 類が驚きの顔で僕を見た。

 僕はこの時、そんな気はさらさらなかった。だけど、どうしてもこのアルファとセックスがしたい、こんな優しい男は、どんな抱き方をするのだろうか。そればかりがその時は気になってしまった。

 それに、もうセフレ達との関係は辞めたかったのも本当。

 撮影までの二週間の間、いろんな男から連絡はきたが、しばらくそういうことはしないと断ると、今までアッサリしていたと思っていた相手達は、むしろ執着が見られるようになって怖くて、思わずメールアドレスを変えるほどだった。

 ビリーからは今後遊びを継続するなら、仕事は厳選すると言われたのも嫌だったし、セフレを断るのもこんなに苦労すると思わなかった。だからといって誰かと付き合うのも怖い。でも仕事に生きるには今以上に仕事をしたいのに、セフレというリスクのために減らされてしまう。

 仕事を失うのは、僕という人間の価値がなくなるようで嫌だった。

 類なら、もしかしたら、そう打算的に思ってしまった。

「海斗はそれでいいの? 俺は正直海斗に惹かれているし、もし付き合うなら離さないよ」
「……うん」

 僕のどこに惹かれる要素があったのかは謎だったけれど、類がそう思ってくれるのは嬉しかったので、思わずすぐに即答した。

「ほら、簡単にそういうこと言わないの」
「でも、だったら類につがいができるまで、僕を恋人にして。それならお互い困らないんじゃない? 僕は今回のことで、撮影にも影響があるって知ったから体だけを交わす付き合いはもうしたくない、だけどこの体は疼くんだ。類ならビリーも信頼しているし僕も安心できる、だめ?」
「それって、好きだから付き合うんじゃなくて、仕事のため?」

 僕は最低なことを言っている、だけどそれだけが理由じゃない。他の人では駄目なのに類なら……類となら向き合える気がした。

「そうだけど、そうじゃない。僕のトラウマ話したの、類が初めてだったんだ。僕もこんな自分が嫌で、でも誰かにそれを打ち明けることもできなかった。だから、類になら、本当の僕を見せられそうで、ダメかな? 類は僕を自由にできるしきっと誰かを抱くことで、もっと自信も持てると思うよ? 僕はトラウマの克服ができる、少なからず僕は類が好き」
「……俺、付き合うなら引かないよ。真剣に付き合うことになる、それでもいいの?」
「今は、それでいい。でも類はアルファだから、いつかオメガとつがいになるのもわかる。そうなったら別れてあげる」
「そうはならない、付き合うなら俺は躊躇ちゅうちょしない」

 僕は類を見上げて、笑った。

「わかった。でも運命だけはだめ、普通のオメガには譲らないけど、運命を見つけたら類だってすぐに噛みたくなる、僕はいつでも運命に譲ってあげる。もし噛むことを抑えることができたら、その時は真剣に付き合おう」
「今も真剣だけど?」
「ふふ、今はどちらかというと、お互い体が疼いているほうが強いでしょ。ほら、僕たちの初めてをしよう、そのあといくらでも話をするから、今はその口で僕を求めて……」

 類は観念したのか、僕をベッドに運んだ。


 控えめに言っても、類との初めては最高だった。なんだろう、今までハマらなかったピースがしっくりとハマる感じ。僕を優しく誘うその仕草、空気感、そして僕の中に挿入はいいる全てがとにかくピッタリと僕の中に落ちてきた。

 翌朝、僕の目が開くと類が優しい目で僕を見つめていた。

「海斗、おはよう」
「んん、おはよう、類」

 僕が目を開くのを待っていたのだろうか? 優しいキスがおりてきた。なんだかくすぐったいな、誰かとベッドを共にしても、滅多に朝までは一緒にいないようにしていたから、こんなに安心して迎える朝は久しぶりだった。嫌じゃない、朝一番に類の顔を見れてむしろ嬉しい自分がいることに気がついた。

 やっぱりくすぐったいな。

「海斗、好きだよ」
「うん、僕も……」

 お互いになんともくすぐったくて、照れ臭い朝なのだろうか。こんな新鮮な空気に幸せを感じてしまった。
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