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愛されていると思って居た夫には、何も残りませんでした。
後編
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「では……私もそろそろ行きます、迎えが来ておりますので。私とあなたは、今日を持って離縁ですから。そうそう、慰謝料替わりに……この花瓶を頂いて行きますね。これだけは、私のお気に入りなので。あとは……何も要りません」
「そんなガラクタ、どうでも……それより、迎えとは、一体──?」
「私も彼女たち同様、あなたの妻として生きる以外の道を見つけたのです。そしてそれは、もう他人となったあなたには関係の無い事。では、私はこれで──」
「どうしてこんな状態の俺を一人に出来るんだ、お前たちは!?待ってくれ……俺を一人にしないでくれ──!」
それから、一年が過ぎた。
久しぶりにこの地に来て、馬車であの家の前を通ったが……そこはもう、人が住める状態ではない程に荒れていた。
一人取り残されたあの人は、その後破産し……逃げるようにこの地を出て行ったと聞く。
他所に居た愛人達も、彼を助ける気は無いのは知って居たから、当然と言えば当然だ。
彼は、自分が皆に愛され、大事にされて当然だという思いがあった。
でもそれは、ただの勘違いだったのだけれど──。
「……昔が、恋しくなったのかい?」
「まさか。幻の壊れた様を目にし、改めてあの男を愚かだと思っただけです──」
隣に座る彼は、現在の私の婚約者だ。
そして彼こそが、夫の事業を潰した男でもある。
彼は、私に恋心を持って居た。
決して口には出さないが……私には分った。
だから、私は言ったのだ。
私が欲しいのなら、夫の事業を潰せばいい、と──。
彼の幻が崩れ去ったきっかけは、私のこのたった一言が原因だ。
そしてその事は、私とこの彼だけが知っている秘密だ。
「……君はもう、俺のものだ。だから、あんな男の事は早く忘れればいい。さぁ……早く我が屋敷へ帰ろう、せっかく買った花が、しおれてしまう」
「そうですね。帰ったら、早速あの花瓶に──」
自分が愛されていると思って居た夫……彼には、何も残らなかった。
そしてそうなって、自分がいかに愚かだったのかを漸く悟ったようだが……何もかもが、遅すぎたのだ。
そんなあなたとの生活では、何一つ幸せな事は無かった。
だからその分、私はこの彼と幸せになるわ……必ずね──。
「そんなガラクタ、どうでも……それより、迎えとは、一体──?」
「私も彼女たち同様、あなたの妻として生きる以外の道を見つけたのです。そしてそれは、もう他人となったあなたには関係の無い事。では、私はこれで──」
「どうしてこんな状態の俺を一人に出来るんだ、お前たちは!?待ってくれ……俺を一人にしないでくれ──!」
それから、一年が過ぎた。
久しぶりにこの地に来て、馬車であの家の前を通ったが……そこはもう、人が住める状態ではない程に荒れていた。
一人取り残されたあの人は、その後破産し……逃げるようにこの地を出て行ったと聞く。
他所に居た愛人達も、彼を助ける気は無いのは知って居たから、当然と言えば当然だ。
彼は、自分が皆に愛され、大事にされて当然だという思いがあった。
でもそれは、ただの勘違いだったのだけれど──。
「……昔が、恋しくなったのかい?」
「まさか。幻の壊れた様を目にし、改めてあの男を愚かだと思っただけです──」
隣に座る彼は、現在の私の婚約者だ。
そして彼こそが、夫の事業を潰した男でもある。
彼は、私に恋心を持って居た。
決して口には出さないが……私には分った。
だから、私は言ったのだ。
私が欲しいのなら、夫の事業を潰せばいい、と──。
彼の幻が崩れ去ったきっかけは、私のこのたった一言が原因だ。
そしてその事は、私とこの彼だけが知っている秘密だ。
「……君はもう、俺のものだ。だから、あんな男の事は早く忘れればいい。さぁ……早く我が屋敷へ帰ろう、せっかく買った花が、しおれてしまう」
「そうですね。帰ったら、早速あの花瓶に──」
自分が愛されていると思って居た夫……彼には、何も残らなかった。
そしてそうなって、自分がいかに愚かだったのかを漸く悟ったようだが……何もかもが、遅すぎたのだ。
そんなあなたとの生活では、何一つ幸せな事は無かった。
だからその分、私はこの彼と幸せになるわ……必ずね──。
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