おっさんが願うもの 〜異世界行ったらイケメンに大切にされ、溺愛され、聖女と呼ばれ、陰謀に巻き込まれ。それでも幸せ目指して真面目に頑張ります〜

猫の手

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王都編 〜歴史〜

115.おっさん、ジュノーの話を聞く

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 夜になって夕食を済ませ、まったりしていると、ディーが遊びに来る。
「キース、アランに何かしましたか?」
「いいえ、何も。どうしてですか?」
 聞かれたキースはいつも通り普通に答える。それに対してディーがあれ?と首を傾げた。
 昨日の今日で、まだキースもアランも通常運行のままだ。
「今日、アランがすこぶる機嫌が良くて…キースと何かあったかと思ったんですが…」
 察しのいいディーでも、流石に気付かないらしい。
 2人の関係が進んだことは、俺がバラすことでもないし、そのまま俺も何も知らないフリをする。
「ちょうど良かった。ディーに聞きたいことがあったんだ」
 だが、これ以上突っ込まれる前に、とさりげなく話題を変える。
 そして、テーブルの上に読んでいたジュノーの本を置いた。
「5年前に他国で見つかったっていうジュノー、この本に3行しか説明が載ってないのはなんで?
 だいぶ前にチラッと話聞いたけど、その時は教えてくれなかったよな」
「あー…それは…」
「あれか」
 オスカーも聞いていて顔を顰めた。
「オスカーも知ってるんだ」
「俺は噂だけ知ってる」
 ロイは5年前この国を出ていて、帝国にいた時に噂を聞いたと言った。
「あの方は…」
 キースも知っているらしく、顔を顰める。
「ジュノーだから保護されたんじゃないのか?」
「保護はされたんですが…」
 ディーが苦笑し複雑な表情を浮かべる。
「メイフォール共和国からシグルド国、シグルドから帝国へ。帝国からこの国へ。
 たらい回しにされたんだ」
 オスカーが鼻で笑う。
「たらい回しって…」
 聞いていたジュノーの扱いにしては意外な対応で、怪訝な表情を浮かべる。
「あの方は少々変わった思考の持ち主でしたね…」
 キースも会ったことがあるのか、思い出して辟易している。
「あれはイカれてんだよ」
 オスカーが自分の頭の横で指をクルクルと回した。
「でもジュノーなんだろ…?」
「会話にならない人だったんですよ。一方的に話して、こちらの話は全く聞かない」
「だから各国でポイされた」
 オスカーが眉間に皺を寄せ、吐き捨てるように言う。
「ポイって…」

 要するに捨てられたということか、と思うが、ジュノーだけど、もしかして異世界に来た時のショックでおかしくなってしまったんだろうか、と思った。
 実際に、俺だって異世界だと気付いた時、おかしくなりそうだった。俺の場合はそれよりも、追いかけられて逃げるという行動があったため、深く考えることが出来なかったのもあるが。
 もし5年前の人が現実を受け入れられずにおかしくなってしまったのなら、かなり同情すると思った。

「俺は勇者で、この世界を救う運命にある。俺を敬え、讃えろ。お前らは俺に感謝すべきだ。
 口を開けば、勇者だ魔王だと…。
 一体なんの話をしているのか」
 ディーが呆れたように首をすくめた。
 それを聞いて、どこかで聞いたことのある話にザワッと鳥肌が立つ。
「5年前のジュノーは、ハヤトという名前の19歳の青年でした」
 ディーの言葉に飲んでいたお茶を気管に入れてしまい、激しく咳き込む。
「大丈夫か」
 隣のロイが俺の背中をさする。
「は、はや、と?」
 咳き込みながら、聞き返す。
「ハヤトです。ご存知なんですか!?」
 ディーが驚いたように聞き返してくる。
 咳き込み終わり、深呼吸すると、ハヤトという名前について説明する。
「俺がいた世界。俺のいた国にある名前だよ。
 ついでに言うなら、ディーの曽祖母のサヤカ、ミルアのソーイチロー・ヤクモ、ゲーテのチヨ、全部俺のいた日本という国によくある名前だ」
 俺以外がポカンと口を開けた。
「同じ…国?」
「ああ。日本人の名前だ。俺も日本人」
 この世界に日本人が迷い込んでいたのはディーから聞いて知っていた。さらにチャールズはアメリカ人だった。
 昨日読んだ本に書かれていた歴代ジュノーの容姿を想像するに、他にもヨーロッパやアフリカ、アジア、様々な場所からこの世界に来ているのはわかっていた。
「5年前のそのハヤトは俺と同じ日本人だ」
「ニホンジン…」
 ディーが眉間に皺を寄せる。
「で、なんでそのハヤトはたらい回しにされたわけ?」
 話がズレたので元に路線を戻す。
「あ、ああ…、ハヤトはメイフォール共和国で発見されて、共和国で保護すると全世界に向けて発表されました。
 我が国同様、メイフォールもジュノーの知識がいかに重要か認知していますから」
「だが、その1年後、ハヤトを譲渡したいと言い出した」
 オスカーが続ける。
「理由は?」
「その時は、他国にもジュノーの知識を広めるため、ととってつけたような理由でしたけど…。実際は厄介払いですね」
 キースがさらに続ける。
「そして名乗りを上げたシグルドに譲られたんだが、僅か3ヶ月でシグルドから帝国に」
「しかも、帝国は属国であったシグルドに頼まれて引き受けた形だったんです」
 それを聞いて、だんだんと嫌な予感が襲ってくる。
 ハヤトが言っていた勇者や魔王という言葉。19歳の日本人男性。学生か、もしくはニート。
 そんな言葉が頭をよぎった。
「さらにその半年後、帝国から逃亡しました」
 ディーがメガネを外して目頭を揉む。この仕草は本当に嫌な気持ちを拭おうとする時のディーの癖だ。
「逃亡して、今どうしてるんだ…?」
 嫌な予感がピークを迎え、その答えが合っているかを確認する。
「死にました」
 やっぱり、と思った。
「そうか…」
「事故だった。逃げる途中で足を滑らせて崖から落ちたんだ」
 オスカーが死んだ時の状況を話す。
「なんで逃げたんだ?」
 俺の質問に、ディーもオスカーもキースも口を噤む。
「そのハヤトは、何をしたんだ」
 ロイが改めて聞く。
 ハヤトがこの国に来た時、ロイはもう戻っていたはずだが、ディーと交流はあっても獣士団に戻らず、王家にも国にも関わっていなかったから知らないんだろうと思った。
 だが、ロイもまた薄々とハヤトが何に追われて死んだのかは察しているようだった。
「5年前のジュノー、ハヤトは…」
 ディーが語り始める。



 ハヤトが見つかったのは、メイフォール共和国の農村地帯の畑の中だった。
 ヨレヨレの上下グレーのスウェットを着て、何日も風呂に入っていないようなフケだらけのバサバサの髪、メガネ、猫背ででっぷりと太った不健康そうな体型。
 その浮浪者のような姿のハヤトを農作業中の農民が見つけ、村へ慌てて戻り、不審者、ようするに畑泥棒として警備隊に突き出した。
 だが、言葉が通じないのと、着ていた服が見たこともないもので、警備隊から軍へ引き渡され、そこでジュノーであると判断された。
 軍の砦に駆けつけたメイフォールの研究者や魔導士達が、同調スクロールをハヤトに施し、ようやっと言葉が通じる。
 だが、ハヤトは一方的に話すだけで、全く話を聞こうとしなかった。
 すぐに共和国の総統は他国に奪われる前に保護すると発表したのはいいが、首都に連れて来られたハヤトは、ブツブツと呟くだけで、会話は成り立たなかった。
 それでも、何度もジュノーについて説明したおかげで、自分は特別だということは認識したらしい。

「1年メイフォールで過ごしたようですが、結局何の知識も得られなかったと。
 彼は1日中、食べて寝て、ゴロゴロするばかり。
 かと思えば、突然魔法の練習をしだしたり…」

 そしてその1年の間、ハヤトに数人のメイドがレイプされた。
 流石に使用人への暴行に目を瞑ることはできず、かと言って犯罪者として処罰することも出来ず、メイフォールは1年後に彼を手放す。
 知識を得られないばかりか、性犯罪を犯したただの男など必要ないと、早々に見切りをつけて、本当の理由を隠したままシグルドに譲渡する。

 そしてシグルドでも同様の行為を繰り返したハヤトは3ヶ月後に帝国に送られた。

 帝国では若い女性だけを襲うハヤトに、屈強な男や老執事だけを周囲に置き、メイドを近づけることはしなかったが、軟禁されていた屋敷に毎日食事を運んでいたメイドに目をつけ、隙をついて彼女を襲った。

 帝国でもハヤトの処遇に困り果て、軟禁から監禁へと移行した。
 だが、警備の隙をついてハヤトは逃亡する。
 逃亡した先は公国領内で、帝国領にほど近い場所で野盗まがいのことをして、自警団に捕えられた。
 その時、襲われた一般人、自警団側にハヤトのめちゃくちゃな魔法で死傷者が出てしまった。

「ジュノーであるがゆえ、ですね。
 やはり魔力が多く、1年以上この世界に居て、魔法をある程度使いこなせるようにはなっていたんです」

 ディーが顔を歪ませる。

 そのままハヤトを帝国に引き渡そうとしたが、帝国、メイフォール、シグルドからある提案をされる。

 ハヤトは表向き帝国国内においてジュノーとしてこの世界の発展のために魔道具の研究に協力していることになっていた。
 その研究中、事故によって死亡したということにして欲しいという打診をされた。
 4カ国で秘密裏に協議され、ハヤトが起こした事件の被害者へ3カ国が共同で賠償金を払うという形で、公国側は了承した。

 そしてハヤトは公国内にある監獄へ収監された。
 公国内ではハヤトをジュノーとして扱わず、殺人と強盗、性犯罪者として、他の犯罪者と同じような扱いをした。
 だが、彼の言動によりジュノーだと気付かれてしまうため、他の犯罪者と一緒に強制労働に従事させるわけにもいかなかった。
 よって、監獄の独房に入れられた。
 だが、ハヤトの魔力は膨大で、本人もその自覚があったのか、溜めに溜め込んだ魔力を爆発させて、その独房を破壊し、収監されて1ヶ月で脱獄を果たす。
 そして、追ってきた監獄の警備兵、自警団、騎士達から逃れるために森に入り、足を滑らせて崖から転落死した。
 頭を強打して即死だったため、治療することも叶わず、そのままひっそりと火葬され、監獄内にある墓所に埋葬された。



 ディーが数度話したことのあるハヤトのことを思い出す。
「ハヤトはいつもブツブツと独り言を言っていました。
 俺は勇者だ。
 魔王を倒して世界を救う。
 ハーレムを作る、とか。
 意味がわかりませんよ」
 ディーの言葉を聞いて、深いため息をついた。
 ハヤトが何を考え、何を妄想していたのかがわかったからだ。
「俺やそのハヤトがいた世界でな、別の世界に行って勇者になって魔王を倒す。そういう物語がたくさんあったんだよ」
「御伽話ですか?」
 キースが首を傾げて聞いてくる。
「いいや、子供に聞かせるような御伽話じゃなくて、大人が読んだり見たりするものがたくさんあった」
「いい年こいて、そんなもの読むのか」
 オスカーが失笑する。
「ヒーローやヒロインに憧れる気持ちに年は関係ないだろ?
 異世界っていう非現実的な世界で、自分がその世界を救ったり、仲間と協力して強大な敵を倒す。そういう遊びもあったし。
 俺もその遊びをしたし、本も読んだよ。読む分には面白いし」
 ゲームと言っても伝わらないから、似たような言葉を選ぶ。
「きっとハヤトは元の世界で、その空想の世界にずっと浸っていたんだと思う。
 それがリアルに自分の身に起こった時、妄想と現実の区別が出来なくなった」

 おそらく、ハヤトの容姿や見つかった時の姿を聞く限り、彼は引きこもりだったんだろうと思う。
 ずっと自室に篭り、剣と魔法の世界のゲームをして、異世界に転生や召喚された主人公が活躍する小説や漫画、アニメを見ていたんだろうと想像した。
 そして、実際に自分がこっちの世界に来た時、その主人公になったと勘違いを起こした。
 人や獣人のメイド服の女性を目の当たりにして、妄想の異世界のまま、女性達を性の対象とした。
 自分は勇者で、何をしても許されると勘違いしたのかもしれない。

「ハヤトは突然この世界に迷い込んで、妄想が現実になったと勘違いしたんだと思う」
 俺の言葉に全員が黙り込む。
「聖女ちゃんがいた世界の空想と、こっちの世界が同じってことか?」
 オスカーが首を捻って聞いてくる。
 ディーやロイには俺が居た世界のことを詳しく話したこともあったが、オスカーやキースは知らない。
「まるっきり同じというわけではないけど、近いと思う。
 元の世界じゃ、獣人やエルフ、ドワーフ、リザードマン、そういう人たちは全部空想上の生き物だった。
 俺だって、実際に目にして、ほんと驚いたんだよ。今はもう慣れたけど」
 言いながら、ロイの尻尾を撫でる。
「ほんと最初この尻尾を見た時は、夢見てるのかと思ったよ」
 撫でられてパタパタと揺れるロイの尻尾を見て笑う。
 オスカーが眉間に皺を寄せて考えこむ。
 当たり前に目にしてきて、友人にも多種多様な種族がいるオスカーにとって、その自分の周囲の人たちが空想上の生き物と言われたんだから、当然の反応だと思った。

「ショーヘイさんは勘違いしなかったんですね」
「俺はそこまでその物語や遊びにのめり込んでないからな」
 そう言って笑う。
「元の世界とこっちと、常識も認識も違うところもあるけど、共通点もかなり多いよ。
 特に、親が子を思う気持ちや、人を思いやる気持ちとか、善悪の判断、そういう根本的なものはほぼ一緒だよ」

 ハヤトは元の世界でも現実から逃げて引きこもっていたんだろう。
 だからこっちの世界に来て、区別が出来なくなった。
 もしそう言ったゲームや物語の世界にのめり込んでいたとしても、世間という現実をもっと見て、知っていれば、空想の世界と違うとわかったはずだ。
 こちらの世界でも、元の世界と同じように生活を営み生きている人がたくさんいる。
 その人たちをきちんと見ることが出来たなら、きっとハヤトも…。
 
 そう考えて少し悲しい気持ちになる。
 ハヤトも好きで引きこもったわけではないだろう。何か理由があったはずだ。

 何とも言えないやりきれなさが心の中に小さな渦を作った。

「まぁ、そのハヤトみたいな人は元の世界でも少数で滅多にいないよ。
 俺みたいなのが普通」
「お前が普通ねぇ…」
 オスカーの顔が笑う。
「ショーヘー、お前、こっちの世界じゃ普通じゃないんだからな。自覚しろよ」
 ロイがそう言いながら、尻尾をバシバシと俺にぶつけてくる。
「ああ、なるべく自重する」
 笑いながら答え、5年前のジュノーの話は終わった。




 オスカーが立ち上がると大きく伸びをする。
「もう寝るわ。久しぶりにロイと模擬戦したら結構疲れた。
 俺も年だなー」
 コキコキと首を鳴らしながら肩を回す。
「おー、ジジイは寝ろ寝ろ」
 そんなオスカーをロイが茶化し、足で蹴られる。
「あ、その前に大事なことを。
 明日、例の件の話し合いをします。
 ギル様とアランがこっちに来ますので」
 ディーが遊びに来た理由がこの伝言だったとわかった。
「おー、わかった」
 オスカーが答え、じゃぁおやすみーと間のびした挨拶をして部屋を出て行った。
「俺も寝よっかな…」
 欠伸をして大きく伸びをする。
「そうですね、明日も早いですし」
 キースがティーカップを片付けながら答える。
 だが、ロイとディーが何も言わず、かつ動かない。
「ロイ、ディー、おやすみ」
 わざと2人に微笑みながら言うと一瞬で顰めっ面になった。
「帰れって言うんですか?」
「部屋に戻れって言うのか」
 同時に言われ、そうだよ、と答える。
「俺は寝るの。キースも片付け終わったら寝るし、今日はもうお開き」
 2人が明らかにむぅと不機嫌になる。
「なんか最近冷たいですよね」
「確かに。王都に来てから冷たい」
「仕方ないだろ。俺たちの関係は秘密なんだから」
 苦笑しながら答えるが、2人は納得いかないような表情をする。
「だからこうして会える時に」
「会える時になんだよ」
「SEXしよう」
「結局それかよ!」
 クワッと怒りの表情を2人に向ける。
「お前ら、ただ俺とHしたいだけじゃないのか!?性欲を発散させたいだけだろ!」
 ガーッと怒ると2人が口を尖らせて膨れた。
「ディーゼル様、ロイ様、そういう言い方はショーヘイ様も怒りますよ」
 キースが苦笑しながら2人を嗜め、俺を宥める。
「だって…。ショーヘー見てたらムラムラするし…」
「そうですよ。好きだから触れたいと思うのは自然の摂理でしょ?」
 ブツブツと文句を言う2人に呆れる。
「ムードもへったくれもないな…」
 そういう雰囲気になるならいざ知らず、いいチャンスです、しましょう、と言われてもしようとは思えない。
「もう帰れ!俺は眠いの!」
 言いながら2人を立たせ、グイグイとドアの方へ背中を押す。
「ショーヘー」
「ショーヘイさん」
 情けない声で俺の名を呼びながら抵抗するのを、キースが笑う。
「諦めろ。俺はそういう気分じゃない」
「えー…」
「その気にさせてあげるから~」
「か、え、れ」
 グイグイと部屋から追い出しながら、はっきり伝えて、ドアをバタンと閉めた。
 そのドアの向こうから、2人の俺を呼ぶ声がして苦笑する。
「いいんですか?もし私の事を気にしているなら…」
「いいんだよ。本当にそういう気分じゃないんだ」
 言いながら、キースの後片付けを手伝う。
「キースはいいのか?
 アラン様、待ってるんじゃないの?」
「私も今日は気分じゃないので」
 キースも同じように答え、顔を見合わせて笑った。
「そういう気分の時ってあるよな」
「ありますね」
「なんで男ってああなんだろ」
「我々も男ですけどねw」
 する側とされる側で、こんなにも心情が違うものなのか、と同じ男でもその違いに2人で笑った。
「でも、ショーヘイさん。
 あんまりあの2人を我慢させると後が怖いかもしれませんよ」
 キースが怖いことを言う。
「あー…そうかも…」
 爆発されて抱き潰されるのは勘弁してほしい。
「まぁ、俺もその気になったらな…」
「そうですね。あんまりグイグイ来られてもね…」
 キースが洗ったティーカップを拭きながら言い、俺もその言葉に激しく同意する。
「キースゥ…こんな話今まで出来る奴がいなくてさー…。マジで嬉しいわ。
 わかってくれる人がいるって幸せだぁ」
 今まで抱かれる側の男が身近にいなくて、話も出来なければ、俺の気持ちをわかってくれる人がいなかった。
 それが今やキースがいる。
「ほんとキースが執事になってくれて良かった…。ありがとうなー」
「そんな大袈裟な」
 笑いながらキースが答える。
「今日も一緒に寝る?」
 冗談を言うと、キースが声に出して笑った。
「また今度パジャマトークしましょうね」
「ああ。お互いの彼氏の愚痴をぶちまけよう」
 そう言うと、またキースが楽しそうに笑った。



 片付けが終わって、おやすみなさい、とキースが出て行く。
 手を振って見送り、俺もそのまま寝る準備をして布団に入った。


 明日、夜会で俺に声をかけ、誘ってきた者達の振分をする。
 誰が、どんな言葉で誘ってきたのかを思い出しながら、目を閉じた。



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