【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる

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箱庭スローライフ編

第68話 7日目⑨おっさんは石器を作る

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 拠点の中で1時間ぐらい昼寝して外に出ると太陽が崖の向こうに隠れて箱庭の底の方はすでに陰っていた。直射日光がなくなってずいぶん涼しくなっている。
 時間は午後4時半。日没まではまだ3時間ぐらいあるから作業がはかどるな。

「ふあぁ……はー、スッキリしたっすねぇ! お昼寝は正直癖になりそうっす」

 美岬がんんーと両手を突き上げて大きく伸びをする。

「普通の生活では昼寝なんかあまりできないからなー。なんか得した気分だな」

「寝床の質がいいともっといいんすけどねぇ。……うう、髪に砂が」

 美岬が頭を振って髪に混ざった砂を落とす。寝床は砂を盛った上に断熱シートを被せたものだが、今は断熱シートを製塩に使っているので盛り砂の上にそのまま寝ていたから髪にも服にも砂が入っている。

「…………」

 美岬の後ろに立って手櫛てぐしで美岬の髪をすいてパラパラと砂を落としてやる。潮焼けしてちょっと茶色の混ざったショートボブの髪はさっきまで海で泳いでいたのもあってまだ少ししっとりとしている。

「ぼちぼち寝床の改善もやらなきゃなー。干し草を作って並べるだけでもだいぶ違うからな」

「そっすねー。干し草ベッドはアニメの定番だから憧れるっす。…………それより、ガクさん、めっちゃナチュラルに女子の髪を触るっすね?」

「ん? ……あ。ついやってしまった。妹にねだられて髪を乾かすのを手伝うのが普通だったから。不快にさせたらすまん」

「妹さんならいいっすけど、こういうことはあたし以外の女の子にやっちゃ駄目っすよ? 女子の髪に触るとかセクハラ扱いされても文句言えないっすからね。あ、あたしはもちろんウエルカムっすけど。むしろこれからは積極的にお願いするっす」

「お、おう。そりゃもちろん美岬以外にはしないさ」

 気を抜くと美岬にはついついナチュラルにスキンシップしてしまうからちょっと意識して気を付けなきゃいかんな。


 それから、二人で岩場に行って鍬の刃として使えそうな平たい石を探す。この辺りは板状節理ばんじょうせつりによって平たい板状に割れた石が多いから候補を探すのは難しくない。ただ、風化して脆くなっているものも多いから、石同士をぶつけ合って強度を調べて固い石を選び出す。
 最終的に残ったのは、10㌢×20㌢ぐらいの長方形で厚みが3㌢程度の黒くて艶があり、同サイズの石に比べて重いものだった。

 次に林の中に入り、午前中に焼き畑用の落ち葉や小枝を集めるついでに集めておいた、建材や薪に使えそうな枯れ木や枯れ枝をまとめてある場所に行く。

「どうだ? 鍬の柄として使いやすそうな枝はあるか? 石の刃を着ける部分も作らないといけないから、真っ直ぐなやつじゃなくてバールみたいなL字型に枝分かれしてるやつから選んでほしいが」

「ふむふむ」

 美岬がいくつかの枝を手に持って振り回したりして具合を確かめる。

「うーん、これが良さげっすかねぇ。ちょっとこことここを切り落としてもらっていいっすか?」

「おっけ」

 美岬が選んだ3㍍ぐらいの枝分かれのある枯れ木から指定された部分を鋸を使って切り出す。枝分かれの長い方が太さ5㌢ぐらいで長さは約1㍍、短い方が太さ10㌢ぐらいで長さは約20㌢。短い方が元々幹だったので太くなっている。見た目はハンマーっぽい。
 切り出されたそれを美岬に渡せば、何度か振って具合を確かめてからにへらっと笑う。

「へへっ。これはいい感じっすね。木質もしっかり詰まってるみたいで頑丈そうっす」

「よし。じゃあこれで鍬を作っていくか。あとは、松の樹脂を集めて戻ろう」

 林から出て、平原に疎らに生えている松に寄り、幹に付着している固まった松ヤニを集めて拠点に戻る。これで一通り材料は揃ったな。

「じゃあ美岬は、柄の部分の樹皮をナイフで剥いて、自分の使いやすい形に成形していってもらおうか。刃を取り付けるヘッド部分は後で石のサイズに合わせて加工するからそっちは手を付けないで」

「了解っす」

 俺は刃にする為の平たい石の端を別の石で叩いて剥離させながら大雑把な刃の形を成形していく。元々が平たい石だからさほど時間もかからずにそれっぽい形にはなる。といっても30分以上は掛かっているが。

「おお、打製石器だ。実物を見た……というより作ってる人を初めて見たっす」

「ここからいで磨製ませい石器にするけどな」

「いきなり後期石器時代の飛ぶっすか」

「いずれは青銅器時代……いや鉄器時代に進みたいところだな」

 拠点の中から砥石を取ってくる。ちなみにこの砥石は金属板の両面にダイヤモンド粒子を付着させたダイヤモンド砥石で、片面は中砥相当の#1000の荒さで、もう片面は仕上げ砥相当の#3000の荒さになっている。硬いダイヤモンド砥石なら、金属だけでなく大抵の石なら磨げる。
 俺は砥石の#1000側で石の刃部分をザリザリと磨いで草の根程度なら切れる程度に刃付けをしていった。

 それから出来上がった石の刃を前後から挟んで固定できるように鍬のヘッド部分を鋸とナイフで加工していき、石の刃がピッタリ収まるように加工し終わったところで夕方6時半を過ぎ、そろそろ空が夕焼けに染まってきたので一旦作業を中断する。

「これは一旦ここまでにして、あとは晩飯の後だな」

「完成形がだいぶ見えてきたっすね! 使うのが楽しみっす」

「まだ後で作業を続けるからここはこのままにして、これ以外のやりかけの作業を暗くなる前に片付けていこう」

「あいあいっ」

 タコの処理も途中だし、製塩の干し砂も片付けないといけないし、砂抜きの済んだアサリもなんとかしないといけない。明かりが必要になる7時過ぎぐらいまでにはある程度そっちの作業にも目処をつけておきたい。

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