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しおりを挟む私は伯父様と伯母様の話を聞いて、顔から血の気が引いていくのが分かった
余程酷い顔をしていたのか、向かいに座っていた伯母様が私の隣に座って、私を力いっぱい抱きしめてくれた
「エミリー大丈夫だから!!もしも私達が予想した通りになっても、エミリーは何も悪くないわ。行動したパトリシアが悪いのよ。もしもそれでも罪悪感があるなら、実際にそうなった時に、ターゲットになった子を私達が助けてあげれば良いのよ」
「でも!!私の時は私がどんなに無実を訴えても結果は変わらなかった。伯父様達が助けようとしてくれたけど、周りはパトリシアの話を信じたわ。今回もそうなるのかもしれない!!私のせいで他の子が苦しむかもしれないなんて」
私の脳裏には、死刑が執行した日の光景が頭から離れない。
私が国を裏切ったと信じて、罵倒してくる沢山の人達、犯罪者相手なら何をしても良いと考えて、石や物を投げてくる沢山の人達
そして私の首を目掛けて落ちてくる刃
苦しい………
呼吸が上手く出来ない
息を吸っても吸っても空気がうまく吸えない
苦しさで目に涙か滲む
「過呼吸!?エミリー落ち着いて、どうしよう袋も何もないわ」
「ミレイユが落ち着け、エミリー、私の声が聞こえるか?聞こえたら私の手を握りなさい」
伯父様の指示に従い手を握るけど、手に力が上手く入らず弱弱しく握ることしか出来なかった
「意識はハッキリしてるみたいだな。座ったまま前屈みになってゆっくり息を吐きなさい。吐き終わったら数秒息を止めてから、今度はゆっくり息を吸うんだ。それを数回繰り返してみなさい」
伯父様の言う通りにやってみると、息苦しさがだんだんと無くなっていった
「伯父様、伯母様ありがとうございます。もう苦しくありませんわ」
「良かったわ。ミカエルはよく対処法が分かったわね。私は過呼吸ってものは知ってたけど対処法はよく知らなかったわ。唯一知ってるのは紙袋で口を覆えば良いって事ぐらいかしら?」
「紙袋で口を覆うのは、昔はそれで良いって言われてたけど、今はあまりいい方法ではないって言われてるぞ。私が過呼吸の対処法をしてったのは、私の亡くなった祖母が過呼吸になりやすい方だったからだよ」
短い間だったけど、過呼吸のせいかかなり疲れてしまい、ボーッとしながら2人の話を聞く
伯父様の祖母ってことは、私にとっての曾祖母ってことよね?
流石にあったことは1度もないけど、確かお父様が小さい頃に亡くなったのよね?
「過呼吸になりやすいって病気か何か?でも病気で過呼吸に成るなんて聞いたことないわね?」
「祖母は病気とかではなかったよ。祖母は温室育ちの人だったんだ。だから我が家に嫁ぐまで魔物なんて見たこと無かった」
「私も嫁ぐまで魔物を見たことなんて殆ど無かったわね。今も進んで退治に行ったりしないから見ることは少ないけど」
私も王都から出ることがなかったから1度もないな
「王都に住んでる人とかは見ることないだろうな。祖母も王都に住んでいた人だった、祖父が嫁探しに王都のパーティーに参加した時に、祖父に一目惚れして、絶対に結婚するって領地まで乗り込んだみたいだ」
「伯父様、周りは曾祖母のことを止めなかったんですか?ある程度、自由にさせて貰ってる私でも、伯父様の養子になるって言ったら必死に止められました。家族から大切に育てられた曾祖母が簡単に結婚できたとは思えません」
「あぁ、かなり反対されたみたいだな。だけど祖母は反対するなら、家出して冒険者になるって言ったみたいだ。そんな無謀をされるぐらいなら、居場所が分かって伴侶として強さが保証されてる祖父の所に、嫁にやる方がいいってなったみたいだな 」
えっと………
そこに曽祖父の意見は含められてるのかしら?
曾祖母の一目惚れなのはわかったけど、曽祖父は曾祖母の事を好きだったの?
「曽祖父は曾祖母の事を好きだったの?もしも違ったならかなり可哀想な気がするけど?当事者なのに蚊帳の外だよね」
「祖母は公爵家の人間だったから、例え嫌でも断れなかっただろうな。でも祖母はかなり美人だったから、祖父も満更でもなかったんじゃないか?2人はとても仲良かったしな」
なら良かったのかな?
曽祖父に他に好きな人がいたら、悲惨な結果になってただろうけど、仲良く過ごしていたんならその心配も無いわよね。
「ミカエル、その話とお祖母様の過呼吸の話はどう繋がるの?」
「祖母が結婚してすぐに領地で、スタンピードが起きたんだ。その時に祖父が大怪我をしたみたいで、大量の血に染まった祖父を見て祖母は恐怖したんだろうな。祖父は助かったけど、祖母はその時の事が余程ショックだったみたいで、怪我人を見たり、魔物が襲って来たって聞いただけで、過呼吸を起こすようになった」
「それは仕方ないかもしれないわね。王都に住んでたお祖母様は、お祖父様みたいに大怪我を負った人何て見たこと無かったでしょうし、初めて見た相手が好きな人だったなら、亡くなるかもしれない恐怖と、危険な場所に来たんだって初めて実感したんじゃないのかしら?」
ミレイユ伯母様の言う通りかもしれないわね。
王都では重病人や重症患者が運ばれる治療院は住宅地から離れているから、態々見に行かないと出会うことは無い
王都は人口が多いからか、治療院から住宅地までかなり離れてるのよね。
何かあった時に遠いのは不便だけど、重病人が運ばれて感染病だった時の為に、人口が多い王都で広がらないように、わざと遠くに作っている
だから治療院は敷地が大きくて、周りに他の建物が建ってない
「曾祖母はスタンピードが終わった後も、変わらずに領地で過ごしていたの?曽祖父と離縁して実家に帰る選択もあったよね?過呼吸になるほど精神的に追い詰められていたなら、誰も止められないでしょ?」
「祖父はそう言う提案もしていたみたいだな。だけど祖母は最後まで領地に残ったんだ。それほど祖父が好きだったんだろうな。だけど祖母は35歳って若さで病気を拗らせて亡くなった」
「そんな若さで亡くなったのね。お祖母様は幸せだったのかしら?」
「幸せだったと思うぞ。父から聞いた祖母の口癖が『好きな人と結婚出来て、好きな人の子供を産めた自分は幸せ者だ。これ以上我儘を言ったらバチが当たる』って毎日のように言っていたらしい」
曾祖母の時代は結婚相手を自分で選ぶ事が出来ない時代だったから、曾祖母みたいに好きな人と結婚出来たことは、幸せな事だったのかもしれないわね。
それが例え恐怖と戦う生活だったとしても、恐怖より曽祖父の存在の方が大きかったなら、曾祖母にとって幸せな人生だったのかもしれない
応援ありがとうございます!
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