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第十話 無音の世界①
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目を覚ますと知らない真っ白な天井があった。周囲の音は何も聞こえず、少し体を動かすと激痛が走った。
「……な、なにが」
自分の言葉が頭の中で響いた。
遥は深呼吸をすると、ゆっくりと目を閉じた。
いつものように新宮と別れたあとコマンドが聞こえた。授業で習い知識としては知っていたが本当に受けるとのは初めであった。意思とは別に体が動き恐怖を感じた。
「うぅ……」
その後の事を思い出すと、胸が苦しくなり呼吸ができなくなった。『もうダメだ』と思った瞬間、何かに包まれた。それは暖かくて心地良かった。
ゆっくりと目を開けると、遥斗の顔があった。
「……兄」
彼の顔を見ると気持ちが落ち着いた。それと同時に気まずくなり、彼の胸に額をあて顔を隠した。
「……ごめん」
小さな声で謝り、目だけを動かして彼の顔を見た。
遥斗が何かを言ったような気がしたが、なんだか分からなかった。彼の言葉が理解できないのではなく、声が聞こえないのだ。
そこで自分の鼓膜を破った事を思い出した。あの時は必死であったから後先考えなかった。この方法しか思いつかなったけど、遥斗の声を聴くことができない現実に目の前が真っ暗になった。
遥斗が困った顔で遥を見ていた。
全ての自分のミスであることは十分に理解している。
涙があふれた。泣いても取り返しがつかないことは分かっているが涙が止まらなかった。
このまま泣いて、泣いて、溶けてなくなりたかった。
「――ッ」
遥斗に手を取られて彼は手のひらに口をつけた。突然の出来事に驚いていると、手に触れた遥斗の唇が動いた。
『大丈夫』
遥斗の言葉が聞こえた。耳からは何も音が入って来ないが、はっきりと遥斗の言葉を知る事ができた。すると、また目からたくさんの涙が出てきた。
「あに、兄、ごめん。ごめんなさい」何度も謝った。「Subって……知って動揺して兄に当たって。このザマで」
『大丈夫』
また、手のひらで遥斗の口が動いた。そして、強く抱きしめられた。それが気持ちよくて眠くなった。
しばらくして、目を覚ますと視界に遥斗が居なくなり、不安に襲われた。
「あ、あに」
痛む身体を無理やり起こした。やっとの思いでベッドの上に座ったが、足が震えて上手く立てなかった。点滴スタンドを掴み立とうとしたが上手く行かずベッドに座ってしまった。
動けない足に腹が立った。
弱い自分に腹が立った。
こんなでは遥斗が自分の前から居なくなってしまっても仕方ないことだと思った。そもそも、Subである自分を心配してくれた遥斗を拒否した自分が全て悪い。
ため息をついて地面を見ていると突然、肩を触られた。驚いて振り返る、怪訝そうな顔した看護師がいた。彼女は口を動かしたが遥の耳には届かなかった。彼女の口の動きはどんどん早くなりそれが怖く感じた。
動けずにいると彼女は息を吐き、遥の腕をつかんだ。
「え……」
驚いた遥は慌てて抵抗した。すると、彼女は更に早口で何を言い先ほどよりも強い力で手を引っ張られた。
「なにする」
全力で暴れると手が彼女の頬にあたりメガネが飛んでいった。
「あ……」
流石にまずいと思い謝罪しようとすると、彼女はメガネを拾い大きく口を開いて叫んだ。それだけは口の動きで分かった。
『待っていなさい』
そう言うと彼女は出て行った。
何かをされる言葉だと遥は思い恐怖を感じた。
何とかして逃げ出す方法を考えている時、扉が開いた。看護師が何か連れてきたと警戒した。
しかし、そこにいたのは遥斗であった。
「……兄」と安堵して声を掛けると遥斗の口が動いたが何を言っているのか分からなかった。
それが悲しくて気持ちが沈んだ。
それを察したように優しく微笑んだ遥斗に手を取られ彼の口が手のひらに触れた。
『名前を呼んだ。僕の口を見て』
遥斗は手を離すと、自分の口を指さしてゆっくりと動かした。
「は・る・か」
口の動きで言っていることが分かった。
「……兄」
言葉が分かると嬉しくて仕方がなかった。
遥斗に頭をなぜられると彼の匂いがしてそれに包まれ心が暖かくなった。
彼に腕を触られ、二の腕を持ち上げられた。遥は嬉しくなりすぐに手のひらを向けて遥斗に差し出した。
「僕の言いたいこと分かったんだね。偉いね」と遥斗は遥の手のひらで口を動かした。
彼に褒められるのが、嬉しくて心地よく良かった。
『Come(おいで)』
突然のコマンドに驚いたが自然と身体動き、目の前に立っている遥斗に頭をつけた。
「これが本来のコマンド。Subを無理に使役するものではないんだよ」
右手から感じる遥斗の優しい言葉と背中に回された手に幸福感で満たされた。
「朝は強く言い過ぎた。遥の事を守りたくて口五月蠅かったね。手は大丈夫?」
「……」
「……な、なにが」
自分の言葉が頭の中で響いた。
遥は深呼吸をすると、ゆっくりと目を閉じた。
いつものように新宮と別れたあとコマンドが聞こえた。授業で習い知識としては知っていたが本当に受けるとのは初めであった。意思とは別に体が動き恐怖を感じた。
「うぅ……」
その後の事を思い出すと、胸が苦しくなり呼吸ができなくなった。『もうダメだ』と思った瞬間、何かに包まれた。それは暖かくて心地良かった。
ゆっくりと目を開けると、遥斗の顔があった。
「……兄」
彼の顔を見ると気持ちが落ち着いた。それと同時に気まずくなり、彼の胸に額をあて顔を隠した。
「……ごめん」
小さな声で謝り、目だけを動かして彼の顔を見た。
遥斗が何かを言ったような気がしたが、なんだか分からなかった。彼の言葉が理解できないのではなく、声が聞こえないのだ。
そこで自分の鼓膜を破った事を思い出した。あの時は必死であったから後先考えなかった。この方法しか思いつかなったけど、遥斗の声を聴くことができない現実に目の前が真っ暗になった。
遥斗が困った顔で遥を見ていた。
全ての自分のミスであることは十分に理解している。
涙があふれた。泣いても取り返しがつかないことは分かっているが涙が止まらなかった。
このまま泣いて、泣いて、溶けてなくなりたかった。
「――ッ」
遥斗に手を取られて彼は手のひらに口をつけた。突然の出来事に驚いていると、手に触れた遥斗の唇が動いた。
『大丈夫』
遥斗の言葉が聞こえた。耳からは何も音が入って来ないが、はっきりと遥斗の言葉を知る事ができた。すると、また目からたくさんの涙が出てきた。
「あに、兄、ごめん。ごめんなさい」何度も謝った。「Subって……知って動揺して兄に当たって。このザマで」
『大丈夫』
また、手のひらで遥斗の口が動いた。そして、強く抱きしめられた。それが気持ちよくて眠くなった。
しばらくして、目を覚ますと視界に遥斗が居なくなり、不安に襲われた。
「あ、あに」
痛む身体を無理やり起こした。やっとの思いでベッドの上に座ったが、足が震えて上手く立てなかった。点滴スタンドを掴み立とうとしたが上手く行かずベッドに座ってしまった。
動けない足に腹が立った。
弱い自分に腹が立った。
こんなでは遥斗が自分の前から居なくなってしまっても仕方ないことだと思った。そもそも、Subである自分を心配してくれた遥斗を拒否した自分が全て悪い。
ため息をついて地面を見ていると突然、肩を触られた。驚いて振り返る、怪訝そうな顔した看護師がいた。彼女は口を動かしたが遥の耳には届かなかった。彼女の口の動きはどんどん早くなりそれが怖く感じた。
動けずにいると彼女は息を吐き、遥の腕をつかんだ。
「え……」
驚いた遥は慌てて抵抗した。すると、彼女は更に早口で何を言い先ほどよりも強い力で手を引っ張られた。
「なにする」
全力で暴れると手が彼女の頬にあたりメガネが飛んでいった。
「あ……」
流石にまずいと思い謝罪しようとすると、彼女はメガネを拾い大きく口を開いて叫んだ。それだけは口の動きで分かった。
『待っていなさい』
そう言うと彼女は出て行った。
何かをされる言葉だと遥は思い恐怖を感じた。
何とかして逃げ出す方法を考えている時、扉が開いた。看護師が何か連れてきたと警戒した。
しかし、そこにいたのは遥斗であった。
「……兄」と安堵して声を掛けると遥斗の口が動いたが何を言っているのか分からなかった。
それが悲しくて気持ちが沈んだ。
それを察したように優しく微笑んだ遥斗に手を取られ彼の口が手のひらに触れた。
『名前を呼んだ。僕の口を見て』
遥斗は手を離すと、自分の口を指さしてゆっくりと動かした。
「は・る・か」
口の動きで言っていることが分かった。
「……兄」
言葉が分かると嬉しくて仕方がなかった。
遥斗に頭をなぜられると彼の匂いがしてそれに包まれ心が暖かくなった。
彼に腕を触られ、二の腕を持ち上げられた。遥は嬉しくなりすぐに手のひらを向けて遥斗に差し出した。
「僕の言いたいこと分かったんだね。偉いね」と遥斗は遥の手のひらで口を動かした。
彼に褒められるのが、嬉しくて心地よく良かった。
『Come(おいで)』
突然のコマンドに驚いたが自然と身体動き、目の前に立っている遥斗に頭をつけた。
「これが本来のコマンド。Subを無理に使役するものではないんだよ」
右手から感じる遥斗の優しい言葉と背中に回された手に幸福感で満たされた。
「朝は強く言い過ぎた。遥の事を守りたくて口五月蠅かったね。手は大丈夫?」
「……」
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