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第五章 始動

5.12 転移門

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 さて、持ち物チェックをしてみよう。
 そして、その思い出を振り返ってみよう、のコーナー!

 えっとまず、ショルダーバックだ。


『白のフワフワニット』

 これはね、私がよく休日に行ってた、うにくろっていうお店の新商品。お手頃価格。デザインも襟ぐりのV字に沿ってうっすらラインが入ってる。編み方が違うからなんだろうな。
 よく秋口に友達と遊びに行くときに着ていったんだけど、さすがに古くなったから部屋着に降格。
 楽ちんなので、ラムダ・ケイのライブでくつろぐって時には、うってつけだよね。
 今はグラススケイルの瓶を包んでる。割れたら困るしね。


『破れた黒のニーハイソックス』

 これはね、何の変哲も無いハイソ……だと思うでしょ? でも、はき口のところに入っている、さりげないレース模様がオシャレなのです。ただ、こっちに来たときには靴がなかったし、部屋履きで走り回ったしで、今となっては、ダメージジーンズ顔負けの修羅場をくぐったデザインとなっております。

「……優花」

『A3サイズの失敗作の地図』
 これはね、……。

「まて、優花。まさかとは思うが……。これ全部にそのような解説をつけるのか? 誰のために?」

 フニオの痛い視線。
 わかってますよぉ。でもさ、お気に入りだったんだもん。

 はぁい。サクサクいきます。

  ・大きめの黒い瓶
  ・マロンの枯草玉
  ・銀の特別報酬預かり証
  ・蒼いガラス細工の小瓶
  ・短剣

 次に、ローブのポケットに入れているモノ。
  ・金のホルダーケージネックレスとカナタ石
  ・EXタイマー
  ・硬貨が入った革袋

 そして、ショルダーバッグのポケットの中
  ・ジョルド伯領の携帯用の地図
  ・グラススケイル製のジェム数個
  ・どこかのお貴族様の紋章がはいった小さなボタン
  ・スカーレット・リリーの細長い瓶
  ・ウェポンクリスタル2個
  ・キリーグ・ケイラーの名刺

 ショルダーバックを肩にかけるとそこそこ……、てかまあまあ重いよね。が、しょうがない。
 フニオとマロンは影の中に入る。

 持ち物チェックもオッケー。銀のベルでメイドさんを呼んで、スカーレット・リリーの部屋を後にする。

 フロントでは同じ顔のメイドさんから宿の請求書を頂く。
 請求書は封がされた封筒に入れられているため、金額は分からない。

 知らない方が幸せっていうことも、ある。

 マリア所長にちょっぴり申し訳なく思いつつも、私はショルダーバックの中に入れる。こうしてモノが増えていく。

 ヨアナの家に行ってヨアナに会いたいとも思ったけど、私はまっすぐに転移門に向かうことにした。
 またどこかで会える、そんな気がしたから。



 ヨアナと歩いたクルガの街を独りで歩き進める。現在地の商業区は街の西。中心に転移門があると言っていたから、東にすすめば着くだろう。

 来るときに武器屋、防具屋、薬屋、道具屋。色々な店があった。碁盤の目になっているから何となくでも歩きやすい。

 来るときじっくり見られなかった町並み。石畳の美しい道。並ぶ街灯。つぼみの形だったんだオシャレ。これで道に街路樹とか花壇があったら地球と同じかもしれない。

 歩くこと20分。向こうに大きな三角形の建物が見えてきた。一面に透明なガラスがはめ込まれている。まるでピラミッド型の植物園のドームのよう。

 中に入ると、受付がある。
 その受付に人が列を作って並んでいた。

 私もその列に加わり、待つこと10分程――――。

 自分の順番が来る。

「いらっしゃいませ、冒険者の方ですか?」

 白いローブの女性がにこやかに対応してくれる。
 ギルド登録証を持っていないので、ここは「いいえ」と、答える。

「承知いたしました。本日はどちらまで行かれるご予定でしょうか?」
「帝都までお願いします」

「帝都でございますね。それでは使用料として、銅貨六枚ちょうだい致します」

 銅貨を六枚。六千円。新幹線で5400秒……いや、1時間半ほどの距離? 
 これは高いのか安いのか。

 受け取ると女性は小さな杖を持ち「ありがとうございます、それでは左手をお出しください」と続ける。

 左手を私が差し出すと、左手の甲に青の魔方陣が付与される。
 
「あなたの旅に聖竜さまのお導きが有りますように」

 女性はそう告げるとお辞儀する。
 どうやら手続きはこれで終わりなのだろう。

 私が移動すると女性が次の客の対応をし始める。次から次へと大変だなぁと思う。

 受付から外れて中央に行くと、ゲート的なやつがある。駅の改札口柵だね。
 この後どうすればいいのかわからないから、他の人の様子をしばらく伺うと――――。
 
 どうやらそのゲート柵の中央に画面があり、人々はそこにピタッと左手の甲を付ける。
 するとゲート柵が開き、進行方向に行き先に応じた魔方陣が現れるようだ。
 
 出現する魔法陣は、中央、左、右のいずれか。
 中央は、なんだか見た感じお堅い人達が進んでいくことが多い。
 左は……、聖職者さん、かな? 右は、若い子が多いかもしれない。

 きっと、行き先が分かれてるんだろな。

 私も真似をして左手の甲を付けると、進行方向中央に魔方陣が現れる。
 うーん。右がよかった。
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