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2-4.大物を希望
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「とにかくだ。こいつはすでに決定事項だからな。格闘技路線に舵を切る一発目に、ワンデートーナメントと実木ジュニアのデビュー戦、この二本柱でなら間違いない」
「トーナメント、ですか」
「ああ。勘違いするなよ。息子は別枠だ。ほら、リザーバーってやつに回る。トーナメントには俺が出る。他にも何人か、うちから出場させてもいい。若手エースの小石川が出たいなら出すし、鶴口や福田辺りは久々に本領発揮したいだろう。出たい奴はみんな出す。あとは相手だ。国内及びアジアの、強い奴、でかい奴でフリーの連中は片っ端から集めてこい」
「アジア限定にするんですか。確かに、まだあまり世界には出ていないから、未知の強豪がいる可能性は比較的高いとは思いますが」
「あ、これも言ってなかったか。一発目はアジア予選トーナメントとして行う。その次は世界と銘打つぞ」
「ええ?」
未定のこととは言え、大風呂敷を次々に広げられて、役員達は目を白黒させ、顔を赤くしたり青くしたりした。その様子を見て、またもや実木が大笑いする。
「社長、笑い事じゃないですよ。アジアのトーナメント、そこはまあいいとしましょう。ギャラも低めで済むだろうから。その先、世界トーナメントを開こうって言うんなら、大変ですよ。アジア予選をやるからには、北米、中南米、欧州、ロシア、アフリカ、中近東ぐらいの区切りで、似た規模の予選トーナメントを開催しなければ、辻褄が合わなくなる。そういう点、日本のファン、マスコミは敏感ですからね」
「いや、そこは拘らなくていいだろ」
実木はあっさり、否定する。
「アジアトーナメントで成功を収めて、大金を引っ張ってくる。とらぬ狸のなんとやらじゃないぞ。当てはあるんだ。その金で大物を一本釣りして行けば、コマは揃うさ」
「い、違約金も払えるような大金が集まると?」
「ああ。ただし、いくつかのスポンサーは条件を出してきている。アジア大会に、ぜひともこいつを出場させよ、それなら気前よく資金援助してやろうってのが」
「だ、誰なんですか」
「まさか、他団体のプロレスラーじゃないですよね。その……長羽さんとか」
「あはははっ! 面白えこと言うな、新妻。そのアイディア、採用したいぜ。念のため、打診してくれるか」
「は、はあ」
永遠のライバルと目される長羽の名を人前で出されると、実木は不機嫌になることが多い。しかし、このときは違ったようだ。
「だが、スポンサーのお偉い面々は、格闘技とプロレス、そして今現在の人気というのを昔よりも分かってらっしゃるぞ。大竹が欲しいんだとよ」
その名前が出て、場にはこれまであとは別のざわつきが広がった。
大竹益明。志貴斗が地盤沈下したあと、立ち技格闘技でブームを巻き起こした神拳館のトップ空手家である。格闘技の世界で重量級においては、日本人選手はなかなか歯が立たない。特に立ち技となると、海外勢と比べるとスピードで劣るため、的になるケースがほとんどだった。しかし大竹はその定説を打ち破り、世界の強豪と互角に渡り合った。KO勝利こそ、外国人ファイターのそれにパーセンテージで劣るが、日本人離れした打撃力を拳のみならず、脚にも秘めている。加えて、ボクシング、キック、拳法など空手以外の道場・ジムに通って培った、様々な捌きやステップを匠に駆使し、相手の強打を紙一重で交わすことにも長ける。現代の日本格闘技界のトップスターの一人に、確実に数えられる存在だ。
「確かに、彼なら私も面識がありますし、神拳館とも親交があります」
新妻が考え考え、少しずつ言葉を紡ぐ。
「しかし、打撃系の重量級第一人者で絶頂にある大竹選手が、ガチンコの総合格闘技に出陣してくれるとは思えません。あちらさんだって興行があり、大エースに傷を付けかねない危険を冒したくはないに決まっています。総合の練習をしているとも聞きませんし。もしや、彼がMMA対応の練習をしているという極秘情報でも?」
「トーナメント、ですか」
「ああ。勘違いするなよ。息子は別枠だ。ほら、リザーバーってやつに回る。トーナメントには俺が出る。他にも何人か、うちから出場させてもいい。若手エースの小石川が出たいなら出すし、鶴口や福田辺りは久々に本領発揮したいだろう。出たい奴はみんな出す。あとは相手だ。国内及びアジアの、強い奴、でかい奴でフリーの連中は片っ端から集めてこい」
「アジア限定にするんですか。確かに、まだあまり世界には出ていないから、未知の強豪がいる可能性は比較的高いとは思いますが」
「あ、これも言ってなかったか。一発目はアジア予選トーナメントとして行う。その次は世界と銘打つぞ」
「ええ?」
未定のこととは言え、大風呂敷を次々に広げられて、役員達は目を白黒させ、顔を赤くしたり青くしたりした。その様子を見て、またもや実木が大笑いする。
「社長、笑い事じゃないですよ。アジアのトーナメント、そこはまあいいとしましょう。ギャラも低めで済むだろうから。その先、世界トーナメントを開こうって言うんなら、大変ですよ。アジア予選をやるからには、北米、中南米、欧州、ロシア、アフリカ、中近東ぐらいの区切りで、似た規模の予選トーナメントを開催しなければ、辻褄が合わなくなる。そういう点、日本のファン、マスコミは敏感ですからね」
「いや、そこは拘らなくていいだろ」
実木はあっさり、否定する。
「アジアトーナメントで成功を収めて、大金を引っ張ってくる。とらぬ狸のなんとやらじゃないぞ。当てはあるんだ。その金で大物を一本釣りして行けば、コマは揃うさ」
「い、違約金も払えるような大金が集まると?」
「ああ。ただし、いくつかのスポンサーは条件を出してきている。アジア大会に、ぜひともこいつを出場させよ、それなら気前よく資金援助してやろうってのが」
「だ、誰なんですか」
「まさか、他団体のプロレスラーじゃないですよね。その……長羽さんとか」
「あはははっ! 面白えこと言うな、新妻。そのアイディア、採用したいぜ。念のため、打診してくれるか」
「は、はあ」
永遠のライバルと目される長羽の名を人前で出されると、実木は不機嫌になることが多い。しかし、このときは違ったようだ。
「だが、スポンサーのお偉い面々は、格闘技とプロレス、そして今現在の人気というのを昔よりも分かってらっしゃるぞ。大竹が欲しいんだとよ」
その名前が出て、場にはこれまであとは別のざわつきが広がった。
大竹益明。志貴斗が地盤沈下したあと、立ち技格闘技でブームを巻き起こした神拳館のトップ空手家である。格闘技の世界で重量級においては、日本人選手はなかなか歯が立たない。特に立ち技となると、海外勢と比べるとスピードで劣るため、的になるケースがほとんどだった。しかし大竹はその定説を打ち破り、世界の強豪と互角に渡り合った。KO勝利こそ、外国人ファイターのそれにパーセンテージで劣るが、日本人離れした打撃力を拳のみならず、脚にも秘めている。加えて、ボクシング、キック、拳法など空手以外の道場・ジムに通って培った、様々な捌きやステップを匠に駆使し、相手の強打を紙一重で交わすことにも長ける。現代の日本格闘技界のトップスターの一人に、確実に数えられる存在だ。
「確かに、彼なら私も面識がありますし、神拳館とも親交があります」
新妻が考え考え、少しずつ言葉を紡ぐ。
「しかし、打撃系の重量級第一人者で絶頂にある大竹選手が、ガチンコの総合格闘技に出陣してくれるとは思えません。あちらさんだって興行があり、大エースに傷を付けかねない危険を冒したくはないに決まっています。総合の練習をしているとも聞きませんし。もしや、彼がMMA対応の練習をしているという極秘情報でも?」
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