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ナディアは人気のない廊下までくると、さすがに息が切れてしまった。
そして、ふらついたと思った時には、同時にスカートの裾を踏んでしまっていて。
体勢を立て直す間もなく、無様に転んでしまったのだった。
「痛い……」
自分の意思とは関係なく、視界が揺らいでくる。
こんなところで泣くなんて子どもみたいだと恥ずかしくなったが、なんだかもう心がグチャグチャだった。
そこへすぐに追いついてきたレナードが
「大丈夫ですか?」
と言いながら、手を差し出してくれた。
その以外にごつごつとした男らしい指をぼんやりと見つめながら、ナディアは彼の言葉の意味するところを考えていた。
転んでしまったことか。
それとも、ハロルドとシャルロッテが抱き合っているのを見てしまったことか。
はたまた、その両方なのか。
ナディアは余計な考えを振り払うように、軽く頭を振ってから、素早く涙を拭った。
そして、とりあえず
「……はい」
と呟いてレナードの手を取ると、ゆっくり体を起こしたのだったが。
グラリと頭が揺れたかと思うと、体重を支え切れずにふらついてしまった。
「危ない!」
素早くレナードの手が伸びてくる。
しかしナディアは彼に頼ることなく、なんとか自力で体勢を立て直すと、一歩後ずさった。
「先程も助けて頂いたばかりなのに、またフラフラするなんて……情けないですわね」
乾いた笑い声を上げながら、先程のことを思い出していた。
バランスを崩して引っくり返りそうになったところを、レナードが抱きしめるようにして受け止めてくれたのである。
そう、まさに『抱きしめるようにして』。
ナディアは思い出しながら、つい頬を赤らめた。
が、その時に目にした、ハロルドとシャルロッテが抱き合っている光景を思い出すと、今度は一転して青ざめてしまった。
あれは……なんだったのだろう。
ハテナマークがグルグルと頭の中を駆け巡る。
しかしなんだか疲れてしまっているせいで、今はもう、何も考えたくなくて。
ナディアはわざと大きく笑って見せた。
「もっとしっかりしないといけませんね!
このままではハロルドどころか、レナード様にまで呆れられてしまいそうですもの」
しかし、こちらを見るレナードは笑ってはいなかった。
見たこともないほど真面目な顔をして、まっすぐにナディアを見つめていたのである。
「私は呆れたりしませんよ。
それに、咄嗟に助けたからとは言え……ナディア様を抱きしめられて、本当は嬉しかったのです」
「え……?」
ナディアは薄く口を開いたまま固まってしまった。
突然レナードが外国語を話し始めたのかと思うほどに、何を言われているのか理解し切れなくなってしまったのである。
そして、ふらついたと思った時には、同時にスカートの裾を踏んでしまっていて。
体勢を立て直す間もなく、無様に転んでしまったのだった。
「痛い……」
自分の意思とは関係なく、視界が揺らいでくる。
こんなところで泣くなんて子どもみたいだと恥ずかしくなったが、なんだかもう心がグチャグチャだった。
そこへすぐに追いついてきたレナードが
「大丈夫ですか?」
と言いながら、手を差し出してくれた。
その以外にごつごつとした男らしい指をぼんやりと見つめながら、ナディアは彼の言葉の意味するところを考えていた。
転んでしまったことか。
それとも、ハロルドとシャルロッテが抱き合っているのを見てしまったことか。
はたまた、その両方なのか。
ナディアは余計な考えを振り払うように、軽く頭を振ってから、素早く涙を拭った。
そして、とりあえず
「……はい」
と呟いてレナードの手を取ると、ゆっくり体を起こしたのだったが。
グラリと頭が揺れたかと思うと、体重を支え切れずにふらついてしまった。
「危ない!」
素早くレナードの手が伸びてくる。
しかしナディアは彼に頼ることなく、なんとか自力で体勢を立て直すと、一歩後ずさった。
「先程も助けて頂いたばかりなのに、またフラフラするなんて……情けないですわね」
乾いた笑い声を上げながら、先程のことを思い出していた。
バランスを崩して引っくり返りそうになったところを、レナードが抱きしめるようにして受け止めてくれたのである。
そう、まさに『抱きしめるようにして』。
ナディアは思い出しながら、つい頬を赤らめた。
が、その時に目にした、ハロルドとシャルロッテが抱き合っている光景を思い出すと、今度は一転して青ざめてしまった。
あれは……なんだったのだろう。
ハテナマークがグルグルと頭の中を駆け巡る。
しかしなんだか疲れてしまっているせいで、今はもう、何も考えたくなくて。
ナディアはわざと大きく笑って見せた。
「もっとしっかりしないといけませんね!
このままではハロルドどころか、レナード様にまで呆れられてしまいそうですもの」
しかし、こちらを見るレナードは笑ってはいなかった。
見たこともないほど真面目な顔をして、まっすぐにナディアを見つめていたのである。
「私は呆れたりしませんよ。
それに、咄嗟に助けたからとは言え……ナディア様を抱きしめられて、本当は嬉しかったのです」
「え……?」
ナディアは薄く口を開いたまま固まってしまった。
突然レナードが外国語を話し始めたのかと思うほどに、何を言われているのか理解し切れなくなってしまったのである。
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