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17.誤解なのに Side.クレイグ

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どうしてこんなことになったんだろう?

あの新任教師の授業でスライムを召喚して使役することになった。
スライムなんて自領で散々見てきた。
剣で突き刺せば即倒せるような、言ってみれば雑魚だ。
だからわざわざ結界なんて張らなくても力づくで使役なんてできると思った。
こんな簡単なことを教えずにどこまでも安全に配慮している弱っちい教師の言うことなんて聞く気がしなくて、俺は結界を張ることなく召喚を試みた。
それなのにスライムは教室を飛び回るし、怒った新任教師に結界内にスライムと一緒に閉じ込められて、挙句一撃で倒せず犯される羽目になってしまった。
最悪だ。

結果から言えば状態異常はすぐに解除されたし、スライムも倒してもらえたけど、俺のプライドはズタズタだった。
でも問題はそんなことじゃない。
いや。それも問題だったけど、それよりももっと問題だったことがあるんだ。

その日の夜、俺はスライムに与えられたあの快楽を思い出して、疼く身体を持て余してしまった。
自分で自分が信じられない。
あんな目に合ったのにあの刺激を求めてしまうなんて…。
でも怖くて自分の尻穴に自分の指を挿れることはできなかった。
俺は一体どうしたらいいんだろう?
仕方なく前を扱いて自慰にふけるけど、そこもスライムに犯されていた時の刺激を思い出して、『これじゃないんだ!』と泣きたくなった。

そしてどんよりとした気分で学園へと向かったものの、その日はため息ばかりで、授業も全然頭に入らなかった。
このままじゃダメだと思うのに、どうしたらいいのかわからない。

そうして悩んでいるところで愛しのユナが俺のところへとやってきた。
どうやら昨日あの新任教師の授業中に酷い目にあったというのを聞いて、心配してきてくれたようだ。
本当になんて優しいんだろう?
だから素直に俺は言葉を紡いだ。

「ユナは優しいな」
「そんなことありませんわ。でもクレイグ様がお辛いなら私が支えてあげたいと思ってます」

はにかみながらそんな可愛いことを言ってくれるユナ。
ユナはきっと本心からその言葉を言ってくれているんだろう。
だからそこに希望を持ってしまったとしても仕方がないと思う。

「本当に?」
「ええ!」
「俺を慰めてくれるか?」
「ええ」

優しい優しいユナ。
もしかしたらユナならお願いを聞いてくれるんじゃないだろうか?

「悩みにも乗ってもらえるか?」
「もちろんです!」
「手伝って…くれるか?」
「はい!」

(これなら…いけるか?)

もしかしたら聞いてもらえるかもしれない。
そんな期待を込めて頼みがあると口にしたら、ユナはあっさり頷いてくれた。
それがどれだけ嬉しかったか。

そして俺は事が事だけに人が来なさそうな空き教室へとユナを連れて行き、思い切って望みを口にした。

「優しいユナにしか頼めないんだ!頼む!俺の尻に指を挿れてほしい!」

でもそう言った途端、『この、変態!!!!』と叫ばれ、バシィッ!!と強烈な平手打ちをくらってしまった。
そのまま泣きながら駆け去っていくユナ。
残された俺は呆然となった。
そしてちょっと冷静になった頭で考えたのだが────。

(しまった…。事情を一切話さずに望みを口にしたらそりゃあ変態って言われるよな)

今更ながらそんな簡単なことに気が付いて、これは早々に弁明しなければと蒼白になった。
ユナならちゃんと説明したらわかってくれるだろう。
そう思い、俺は休み時間が長い昼休みにユナのところに行こうと思った。

でも────。

「ユナ…。まさかそんな。君がそんな女だったなんて……」

そこで見たのはルイと二人でイチャつく姿だった。
正直ショックなんてものじゃなかった。

「ユナならちゃんと事情を話せば俺を助けてくれると思っていたのに…!まさか俺を弄んでいたなんて思いもしなかった!」
「えっ…?!」

カノン王子とちょっと怪しいなと思いつつも、二人きりの時は俺だけだとばかりに甘えてくれていたユナが、まさかルイとデキてるなんて思いもしなかった。
これは明らかな裏切り行為だ。

「もうユナになんか俺の尻は託せない!やけくそだ!ウォーレンかワーナーに頼んでくる!」
「はいぃぃ?!」

ユナに頼ろうと思った俺が間違っていた。
女なんかもう信じられない!
こうなったら友情に頼るほかない!
きっとあの二人なら俺の尻穴に指くらい入れてくれる!

(ユナの馬鹿野郎!)

そうして泣きながらその場を去る俺の背にユナの叫びが聞こえてきた。

「ちょっ!クレイグ様?!人聞きの悪いことを仰らないで?!私は貴方を弄んでなんかいませんし、お尻に指なんて突っ込んでいませんからねぇぇ?!」


***


それからどれくらい走っただろう?
息せき切って走っていると、廊下を歩いている二人の姿が目に飛び込んできた。
ユナの本性にショックを受けていただけに、余計二人の姿がキラキラと輝いて見える。

「二人とも!やっと見つけた!」
「クレイグ?どうした?そんなに急いで…」
「頼みがある!ユナの、ユナの代わりに…っ」
「ユナの代わりに?」
「俺の尻を犯してくれ!!」
「「…………」」

正直頭が回っていなかったとは思う。
でも、二人で顔を見合せたと思ったらクルッと踵を返して、一目散に逃げ出すことはないだろう?!
事情くらい聴いてくれよ!
そう思ったから俺は必死に二人の後を追いかけた。
流石にこの二人にまで誤解されたくはない。

だから先に追いついた方のワーナーの肩をガシッと掴んで、逃がすものかと近くの教室に連れ込んだ。
言っておくけど、俺は事情を説明しようと思っただけであって、即尻に指を突っ込んでもらおうなんて思ってなかったからな?!

なのに────。

「クレイグ!頼むから見逃してくれ!僕、僕は、お前には絶対勃たないと思うんだ!許してくれ!」

そんな風に泣かなくてもいいだろう?
しかもどう誤解を解こうかとオロオロしているうちにガラッと教室の扉が開かれて、あの新任教師がやってくるなんて誰が思っただろう?

「クレイグ。こんなところにワーナーを連れ込んで、何をする気だ?」
「アノス先生!助けてください!クレイグがっ、クレイグがっ…無理矢理僕を…!」

ワーナーが新任教師に助けを求めたせいで、俺は完全に悪者になってしまった。
そして……。

「クレイグ。取り敢えず騒ぎを起こした責任を取ってもらおうか」

どこか嗜虐的な笑みを浮かべた新任教師にゾクゾクッと背筋を震わせ、俺は奇しくも望んでいた快楽を与えられることになったのだった。


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