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2.※騎士のプロローグ Side.メイナード

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俺の恋人であり、王弟殿下でもあるアノス=キラ=デルフィア様は、俺より五つも年下だが、俺にとって理想のご主人様である。

俺ことメイナード=クラウ=ロバーツは国王陛下の近衛騎士だ。
俺は昔から男が好きで、ついでに言うと抱かれる側に憧れていた。
だから騎士になったと言っても過言ではない。
騎士団は男色が多いと聞くし、遠征に出れば男同士まぐわう事も多いと聞く。
だから学園を卒業すると同時に、期待して入ったんだ。
抱かれる側になりたいから昔から少しでもムキムキにならないよう気をつけて、できるだけ細マッチョになれるよう努力してきた。
誰にでも愛想良く振る舞ってきたし、騎士団内の好感度だって決して悪くはない。
ただ…望んでいた展開にならなかったことだけがいただけなかった。

(俺は抱く側じゃなくて、抱かれる側になりたいんだよ!)

何故か俺に抱かれたいという輩が続出してしまったのは誤算以外の何物でもなかった。

(こんなに頑張ってるのに!)

思うような展開にならないのが悔しくて、思い切って俺よりガタイのいい先輩騎士に抱いて欲しいと言ってみたことはある。
でも笑って冗談で流された。

「は?ないない。だってお前、明らかにこっち側だろ?冗談キツイって」

どうやら俺にはそちらの魅力がないらしい。
確かに身長は185を越えてるけど、騎士団には190越えの身長の奴も割といるからギリギリいけると思っていたのに!

(悔しい!)

正直その一言に尽きた。
もう俺は一生誰にも抱いてもらえないのだと、絶望すら感じていた。

そんなある日のこと。
俺は実力と真面目な勤務態度が認められ、今の陛下が王として即位される際に一般騎士から近衛騎士として抜擢された。
とても名誉な事だが、やってる仕事は王の部屋前の警護という地味なものだ。
ただ、これがある種運命の出会いとなったのは間違いない。

たまたま俺の職務中に王弟殿下がやってきて『兄に呼ばれたから中に入れてくれ』と言ってこられた。
当然だが身内とは言え一人で中に入れるわけにはいかない。
王の安全のために俺は同僚に扉前の警護を任せ、室内に同行することに。

近衛騎士として抜擢されたからには責務はきっちり果たすぞと、その時はそれだけだった。
王弟殿下はこの時まだ15才。
俺から見ればただの子供同然で、身長だって当時は170かそこらしかなかったから、理想とは程遠かった。
けれどその日俺はこの王弟殿下に恋をしてしまったのだ。

「ア、アノス…」

陛下は殿下とは年の離れた兄弟なのだが、その陛下が俺に口止めをした上で恥じらいながら殿下に懇願した。

「今日も縛ってほしい」
「いいですよ」

陛下の思いがけない性癖に驚く俺の目の前で殿下はにっこり笑って、全く気負う事なくそれをあっさりと請け負った。
そこには一切の躊躇いがない。
殿下は器用に縄で陛下を縛っていって、縛り終わったところで物凄く晴れやかに笑った。

「兄上。これでどうですか?」
「さ、最高だ…!」

微笑ましい光景ではあったが、同時に嬉しそうな陛下の顔に羨ましいという感情が湧いてくる。
しかも陛下はその次に踏んでくれと言い出した。
流石にそれは無理だろうと俺は思ったが、殿下はこれに対しても全く躊躇うことなく実行に移してしまう。
グッと踏んだ後でジワリジワリと嬲るように体重をかけていくその顔はとても楽しそうだ。

俺はその表情を見た途端、背筋にゾクゾクゾクッと震えが走り、知らず勃起している自分を自覚した。

(俺もあんな風に嬲られたい!)

もしかしたら殿下なら抱いて欲しいという俺の望みを叶えてくれるかもしれない。
それだけではなくどんな変態的要求だって叶えてもらえるかもしれない。
そう思うと同時に殿下に告白していて、なんとその場で快い返事をもらうことができた。
その時の心境はまさに夢心地と言ってよいものだったと思う。

ちなみに殿下は童貞だったが、勤勉な性格だった為『予習はバッチリだ』と言って数日後には俺を優しくも激しく抱いてくれた。

「で、殿下ぁ…!」
「メイナード。覚えるのが早いな。初めてのくせにこんなに美味しそうに貪って…。そんなに俺のモノは美味いか?」
「はぁ…美味しいです…」

何せ欲しくて欲しくてたまらなかったものだ。
それが貰えて嬉しくないはずがない。

「そうか。ならその淫乱な体にもっと俺を刻んでやる。しっかり味わえ」
「ひぁあっ!」

流石王族。言葉責めもとってもナチュラルで素晴らし過ぎる。
しかも見た目は受けっぽいのに自分が上と疑わないし、間違っても俺に抱かれたいとは言ってこない所が尚素敵だった。

「殿下は俺を抱くのに抵抗はなかったんでしょうか?」
「特になかったな。普段と違う可愛いお前が見たかった。それだけだ」

事後に俺は素直に尋ねてみたが、返ってきた答えがそれだった。
そんな所に胸がキュンキュンして、俺が殿下の虜になるのは本当にあっという間だった。

それから12年。
未だに殿下と俺の関係は続いている。

殿下は言えばなんでもやってくれるが、ただ単に言いなりになるわけではないところが凄くいい。
俺の為に年々ドSに染まっていってくれる殿下がたまらなく好きだ。
しかも殿下も俺を好きでいてくれる。
なんて素晴らしいんだろう?

正直背の高い低いなんて関係ないんだと改めて感じた。
きっと側から見れば俺が殿下を抱く側にしか見えないだろう。
俺と殿下の身長差は8センチほど。
でも殿下はそんなものは気にも留めない。
ずっと変わらず抱く側にいてくれる。

(俺の愛しのアノス様)

そんな愛する殿下に今日陛下が思いがけないお願いをしてきた。

息子に教育的指導?
自分でやれ!
何故殿下に頼む?!

(それでカノン王子が殿下に惚れたらどうしてくれる!)

これはもう側で見張る一択だ。
絶対に放置なんてしない。

(愛しい殿下は誰にも渡さない!)

こうして俺は連絡係というポジションを勝ち取り、殿下と共に学園へと潜入することになったのだった。

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