黒衣の魔道士

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第一部 アストラス編~王の落胤~

156.※エピローグ~初夜はなかなか終わらない~

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「ほら!お祝いなんだから二人共飲め飲め!」

式を終えその後始まった宴会の席で、来賓や王侯貴族との挨拶が終わったところで、駆けつけてくれたファルがいつもの如く豪胆な態度で酒を勧めてくれる。

「ファル…」
「いいだろう?お前達は酒に強いんだからこれくらい大丈夫だ」

もっとゆっくり話したいが、後ろには列ができるほど酌待ちがいる為そこは断念したらしい。

「本当に久し振りに見たな~。懐かしいぞ」

クレイの紫の瞳にも動じず、ファルの態度は一切変わらなかった。
豪快に笑いながらご機嫌に酒を注いでくれる姿はいつも通りだ。
クレイ的にはそれが一番嬉しかったらしい。

「ファル……」
「暫く忙しいだろうが、また今度ゆっくり飲もう!今度は街でな」
「ああ。その時はいい仕事も回してくれ」

そうしてハハッと笑ってファルが席へと戻って行く。
その後も王宮魔道士達が次々と祝い酒を注いでくれた。


***


「うぅ…流石に酔いが回っている……」

ほぼ強制と言ってもいいほどのあの酌の数だ。
クレイは一度スコンと寝てしまったがそこを回復魔法で起こされ、また飲んで…を繰り返してすっかり酔いは定着してしまっている。
自分も飲みすぎないようにというのは流石に無理だと早々に諦め、用足しの時に適度に吐き戻し回復魔法を掛けできるだけ気をつけはしたものの、量が量だけに二人揃って宴会が終わる頃には酔いが完全に回ってしまっていた。

本来ならこのまま大人しく寝るに限るのだろうが、今日は初夜同然の日。
二人の初めての日がレイプに近いものだっただけに、今日は仕切り直しもしたいなと密かに思っていたのだ。
できれば幸せな気持ちで二人で抱き合いたいし、これ以上ないほどクレイを気持ち良く溺れさせてやりたい。

だからサッサと酔いに特化した呪文を唱えて自分の中のアルコールを抜いてしまった。
これでなんの問題もない。

「クレイ。お前も…」

けれどそう声を掛けたところで思わず目を瞠ってしまう。

「う~…熱い……」

そう言いながら赤い顔で気怠げにゆっくりと服を脱いでいく様が妙に艶かしくて、目が釘付けになってしまった。

「はぁ…早く抱いてほしいのに…上手く脱げない…。ロックウェル…手伝って…」

シャツのボタンが外せないと訴えているだけなのに、どうしてクレイはこれほど欲を煽ってくるのだろう?

「ロックウェル…お願い…。早く抱いて…?」

酔いのせいで潤む瞳に見つめられ、ぐらりと理性が揺らされてしまう。
その紫の瞳に囚われて、いつになく抗い難い衝動に襲われてしまった。
こんな風に誘われて押し倒さずにいられるわけがない。

「クレイ!」
「あっ……」

そのまま流れるような動きで服を全て剥ぎ取り、あっという間にクレイを一糸まとわぬ姿にしてやると、昨夜残した所有印へと次々舌を這わせていく。

「ひゃっ…!はぁん…!」

酒のせいか、その唇からこぼれ落ちる声はいつも以上に甘い。
その姿はまるで媚薬でも煽ったかのように淫らに映る。

「あぁッ!気持ちいい…」

そんなクレイをまるで焦らすかのような柔らかな愛撫で愛で、緩々と快感を引き出していく。

「あっあっあっ…!」

そうして身体中が敏感になったところで、
クレイが全身を赤く染めながら懇願してきた。

「ロックウェル…早くッ。触って……」

未だ触られていない男根はふるふると打ち震え、とろりと美味しそうな先走りを滲ませている。
そんな姿に思わずゴクリと喉が鳴る。

「先にこっちを入れてやろうな」

そこにあるのは雄に差し込むオモチャのセット。
最近ではこちらの扱いも随分手慣れてきた。

「ひゃっ!ひゃあんッ!」

まずは初めに使った物よりずっと短めの物を選び、ちゅぷんと鈴口へと差し込んでやる。
そして両足を持ち上げ舌で蕾を舐めながら指で後ろをほぐしつつ、ゆっくりと前も可愛がってやった。

「あっ…!ひゃぅ!んんっ、んんっ!舐められるの気持ちいいっ!」

グチュグチュと唾液を送り込むように解していくと、待ちきれないとばかりにクレイが言葉を紡ぎ出す。

「あっあっ…焦らしちゃヤダぁ!早く来てッ!今すぐ奥までグチャグチャにしてッ!」
「お前は…本当にどこまでMなんだ…っ!」

酔っているとは言え、いつも以上に性急だ。
けれどそれほど求めてもらえて嬉しい気持ちが込み上げてしまう。

「あ────ッ!」

後ろをほぐし終え、割り開くように蕾を広げ一気に奥まで挿入してやると、ギュッと激しく締め上げながら背をそらしクレイは勝手に高みへと駆け上がってしまった。

「……ッ!あッ…あぅ…」

恍惚とした表情でドライでイッてしまったクレイに、思わずSな笑みを浮かべてしまう自分を止められない。

「クレイ?勝手にイッたらダメだろう?そんな奴にはお仕置きをしないとな?」
「あっ…あぁああぁあッ!」

パンパンと腰を穿つように打ちつけ、そのままクレイを追い詰めていく。

「本当に…お前はイッてる最中に激しくされるのが大好きだな。良い顔だ」

その表情は完全に蕩け切っていて、最早なされるがままと言っていい。
中が収斂、蠕動しながら自身を包み込み、キュッと入口を締めつけてくる心地良さに思わず酔いそうになってしまう。

「あっあっあっ…!」
「こんなに嬉しそうに淫らに乱れて…キツく締めつけてくるんだから…はぁッ…!たまらないっ!」
「やぁっ!もっと奥のいいところまで深く挿れてッ!」
「違うだろう?こっちもしての間違いじゃないのか?」

そしてツプツプと先端に入れてやったオモチャを動かしてやると、後ろを締め付けながら腰を突き出してくる。

「や…やはぁ…ッ!気持ちいいッ!出したい!出したいぃ!」
「ちゃんとイかせてやるから安心しろ」
「あぁッ!早くぅ…!」
「今日は強請るのも上手いな…」

一度腰を止め、クレイを扱いてやりながら先端をクチュクチュと出し入れさせてやると自ら強請るように激しく腰を振ってくる。

「んっ…んふぅ…ッ!」

真っ赤な顔でふるふると快感に打ち震える姿が可愛くてこのまま激しく突き上げてやりたい衝動に襲われるが、なんとか耐えて荒い息で尋ねてみる。

「ほら。どうして欲しいかちゃんと言わないとわからないぞ?」
「はっ…はぁっ…ロックウェルの意地悪……」
「お仕置きも兼ねていると言っただろう?焦らされ続けるのと、激しくイカされ続けるのと…どっちがいいんだ?」
「あ…前のを抜いて、もっと長いので奥をかき混ぜながら後ろもいっぱい犯して欲し…」
「どんな体位で?」

すっかり蕩けた涙目をこちらへ向けてくるクレイの姿に、ゾクゾクとした快感が湧き起こる。
酔ったクレイはいつも以上に蠱惑的だ。

「ん…うつ伏せ気味で少し横から入れる体位がいい……」
「そうか。じゃあこっちは抜いてやろうな?」

そう言って抜く前に再度クプクプと数度上下させながらまた腰を揺らして前立腺を擦り上げてやる。

「あぁッ!ダメッ!そんなにされたらイっちゃう────ッ!」

クレイがドライでイッて身を反らせるのと同時に奥へと思い切りドプッと注ぎ、前に差し込んでいたオモチャを抜いてやると、びゅくびゅくとクレイも白濁を吐き出した。

「ドライとウェット、両方楽しめて幸せだな、クレイ?」
「ひぅ…あ…あ…ッ!」

放心状態でイキっぱなしになっているクレイを満足気に見遣り、少し落ち着いたところで今度は長い方の棒をゆっくりと差し挿れてやる。

「あっあああぁあッ!」

ズズッと差し込んでやると、幾度目かで慣れたそれをあっさりと受け入れて苦しそうに荒く息を吐きながらもどこか期待に満ちた目をこちらへと向けてきた。

「ロックウェル……」
「わかっている」

そして一度自身を抜いてからクレイが望む体位へと変えてやる。

「早くきて…」

恥ずかしい体位で、待てないと色っぽく訴えてくるクレイは本当に美味しそうで、思わずゴクリと喉を鳴らしてしまう。
正直下手に酔い覚ましの魔法をかけなくて良かった。
今日は積極的に犯して欲しいと強請ってくるからいつも以上に高揚してしまうのを止められない。

「クレイ…お前は本当にどこまでも私を溺れさせる悪い奴だな…」
「え?あっ!はぁあああッ!」

グッと腰を押し付けるとそのまま一気に奥まで突き進む。

「ほら。ここはこんなに美味しそうに私の物を咥えこんで離そうとしない」
「ふ…ふあぁああ…ッ」
「気持ちいいな、クレイ?」
「あっああっ!ロックウェル!」
「ほら、こっちも掻き混ぜて欲しかったんだろう?」
「ひっ!ンアぁああッ!」
「ああ…すっかりこんな変態に育って……」
「違ッ!ロックウェル…にっ、される事がッたまらなく好き、なだけッ!」
「可愛いことを言うな。もっと滅茶苦茶に可愛がりたくなるだろう?」
「あっ…もっともっと可愛がって……」
「それは本音か?」

そうやって尋ねてやると、クレイが本当に幸せそうに微笑みながら、そっと口を開いた。

「はっ…あ…。だって…今日からロックウェルは俺だけの旦那様…なんだろう?好きな事…いっぱいして?」
「ちょっと待てクレイ。もう一度言ってみろ」

旦那様…。
旦那様?
まさかクレイの口からそんな言葉が飛び出すとは思ってもみなかった。

「ん…旦那様……。好きに…食べて?」

ただでさえ酔ったクレイに夢中になりそうだったのに、その言葉が理性を奪う。
取り敢えずクレイにその言葉を吹き込んだ相手はこの際横に置いておいて(恐らくヒュースあたりだろう)、もう全力で朝まで貪り尽くしてやると決め、そのまま襲いかかった。

「やっ…!何?!ひあぁあああッ!」
「愛しいお前のために、最高に気持ちいい、忘れられない初夜にしてやるからな」

こうして愛しのクレイを文字通り夜通し愛で倒した。


***


「うっうっ…酷い…」

何度も回復魔法をかけながら揺り動かし朝まで抱いていると、流石に酔いが抜けてクレイが正気に返ってきた。

「酷くはないだろう?何度も回復してやってるし、お前が好きな気持ちいいことしかしてないぞ?」
「あっ…!あんんッ!もっ、勘弁してくれ……」
「ダメだ。まだ離したくない」
「うっ…最近はここまでしてこなかったくせに……」

最初の頃は悋気も手伝ってよくあったが、ここ最近はほとんどなかっただろう?とクレイは訴えてくる。
確かにそれはそうだが、それは単にクレイに合わせていただけだ。
自分的には長々愛でるのも好きだから、別にクレイが付き合ってくれるのなら何日でも限界まで抱き続けていいくらいなのだが…。

「気持ち良いのにも限度があるんだ!」
「仕方がないだろう?可愛すぎていくら愛でても足りないくらいなんだから」
「うぅ…。俺が女ならこの結婚初夜で孕んでる……」
「そうだな。お前なら孕ませてみたい気もするが……男で良かったな?」
「ロックウェル!」
「そう怒るな。前もたっぷり開発できたし、後ろの具合も最高だし、他にも試したい事があれば何でも付き合ってやるぞ?黒魔道士の配偶者を満足させてやるのも『旦那様』の務めだからな」

そうやって笑ってやると、たちまちクレイがそっと頬を染めた。
嬉しかったのだろうか?

「お前はズルい……」
「ズルくはないつもりだが?」
「~~~っ!男前でカッコイイのがズルい!俺は昨日からお前に魅了されすぎておかしくなりそうだ!」

どうやら素面でもクレイは自分に夢中になってくれるようだ。

「…もう終わりにして一緒に眠りたい…」

そう言いながらも魔力交流を試みてくるところが快楽に忠実なクレイらしいなと思った。
封印を解いた状態だから、いつもよりも濃厚な魔力が身を満たし、それと同時に気持ち良さが全身へと広がっていく。

「ロックウェル…」
「クレイ…」

そしてゆっくりと二人で身を揺らしながら後少しだけと愛し合う。
快楽に溺れた先での穏やかな交わりはとても心地良いものだった────。

けれど……。

「じゃあ最後にもう一回だけ注いでおしまいにしてやるからな」
「ん…も、中…注がれすぎてぐちゃぐちゃだから、一回全部掻き出してから出して欲しい…」

夜通し注がれて中はもういっぱいだとクレイが訴えてくる。
だから言いたいこともわからないでもないのだが、それでも少し寂しい気持ちが込み上げてしまった。
沢山注いで欲しいと言う割には掻き出して欲しいとは…。

「わがままだな」

けれどクレイはいつも予想の斜め上へと行って自分を意図せず喜ばせるのだ。

「だって…お前の熱いのをいっぱい奥で感じたいし、奥を満たしてもらったら、お前のものって感じがして嬉しいんだ」

そんな言葉にムラムラしてしまう。
これが計算ではないからタチが悪い。
しかも蕾に指を突っ込みトロトロと中に吐き出していた白濁を掻き出してやると、クレイが甘い声で嬉しそうに言葉を紡いできた。

「あ…ロックウェルの凄い…出てくる。はっ…あんんッ…いっぱいで嬉しい…!」

その言葉で理性の糸が切れた。
すぐさま自分に回復魔法をかけて、クレイの片足を持ち上げ、そっと太腿に舌を這わせる。

「ひゃっ…!」

何事だと叫びを上げてくるが、今のは煽ってきたクレイが悪い。

「さあ。今日は初めての耐久セックスでも楽しむとするか……」
「え?」
「気力体力魔力全てを充実させるお前相手だと、私はどこまででも犯せそうだ」
「ちょっと待て!さっき最後だって…!」
「今のはお前が悪いだろう?」

にっこりと微笑む自分にクレイが蒼白になりながらふるふると身を震わせる。

「嘘つき────ッ!あぁんッ!」
「さあクレイ。たっぷり出して、何度でも掻き出してやるからな?好きなだけ強請れよ?」
「やっ…!し、死ぬッ!絶対死ぬから!」
「そう簡単には死なないと何度も言っているだろう?私は白魔道士だぞ?」
「白魔道士なんて大嫌いだ!この絶倫!」
「悲しいな。お前に嫌われないよう頑張ってるだけなのに…」
「あっあっあっ!も、お願いだから許して…!」
「お前が素直になってくれるまで、全力で相手をしてやるからな?」
「ひっ…!んやぁああッ!」


***


「も…後ろが溶けちゃう…。前も奥も全部好き…。ロックウェルの魔力も大好き…。ひ…あぁ…ッ」
「フルコースは満足できたようだな、クレイ?」

時折食事と仮眠を挟みながら回復魔法を駆使して三日三晩抱き続け、もう嫌だと泣くクレイを拘束して更に可愛がってやると、流石に観念したらしくすっかり素直になった。

「あ…も…いらないなんて言わないから…許して…ッ!ロックウェルだけが欲しい…。も、助けて…ぇ…」
「そんなに泣くな。もう虐めない」
「うっ…奥にロックウェルが欲しい…」
「本当に?」

そう尋ねるとコクリと素直に頷いてくる。
正直やり過ぎだったとは言え、もういらない挿れられたくないと続けざまに言われたのはショックだったのだ。

「はぁ…悪かった……」

そう言って涙ながらに謝る姿に溜飲が下がる。

「ちゃんと謝れて偉いな。そう言うことならそろそろ終わりにしてやる。たっぷり褒美を受け取れ」

前に入れていた長い棒と後ろに入れていた魔力で動かしていた張り型をずるりと抜いてやり、そのまま一番好きな体位で串刺しにしてやった。

「ひッ!ヒャぁあああ…ッ!」
「ああ…奥が随分敏感になってるな」

ビクビクと身体を跳ねさせ気を失ったクレイに締め付けられながら、何度か腰を激しく打ち付けてやる。
意識がないにもかかわらず、まるで搾り取ろうとするかのようにきゅうきゅうと収縮してくる様に満足げな笑みを浮かべてしまう。

「本当に名器だな」

それほどまでに種付けされたいなら好きなだけ注いでやろうと、自分に回復魔法をかけてたっぷりと堪能させてもらった。
そして最後に奥へと思い切り放つと、ロックウェルはそのまま満足げに笑ってクレイと共に眠りについた。

「はぁ…忘れられない最高の初夜だった…」

────そう呟きながら。


***


「ロックウェルの馬鹿馬鹿!鬼畜ドS!最低絶倫色情魔!」

翌朝気が付いたクレイに思い切り枕を投げつけられて、さすがにやり過ぎたかとほんの少しだけ反省したが、後悔はしていない。

「でも…気持ち良かっただろう?」
「そういう問題じゃない!」

どうやらクレイの怒りは相当のようだ。
とは言え、仕事もお互い休みだったし別に抱き潰しても構わなかったのではないかと敢えて口にしようとしたところで、クレイから思い切り怒鳴られてしまった。

「お前はわかってない!俺は別に抱かれたことに対してこんなに怒ってるんじゃないんだ!」
「……?」

意味がさっぱり分からない。
それに対して怒っているのでないなら一体どういうことなのだろう?
オモチャで虐めるのは別に今に始まった事ではない。
回復魔法を駆使して体への負担は最低限にしたつもりだし、途中でシャワーだって何度も浴びたし、洗いついでに犯しはしたがそれなりに気は遣っていた。
トイレくらいは行かせてやったし、今回は外でも別にやってはいない。
もしかして食べさせながら犯したことがまずかったのだろうか?
他にもあれだろうかこれだろうかと色々考えてはみたものの、どれもしっくりこなくてここはやっぱり本人に直接確かめることにした。

「抱きすぎたのは確かに悪かったとは思うが…」

そうして何が悪かったのか教えてくれと尋ねたのだが、クレイの返答はとんでもなく明後日な方向だった。

「うぅ…ずっと裸で…三日近く黒衣を着てない…こんな…こんな目に合わされるなんて…!」
「は……?」

思わず聞き間違いかと思って思わず声を上げたところでギッと思い切り睨み付けられてしまった。

「お前とは暫く寝ないから!!」

どうやら嘗てないほどの激怒っぷりらしい。
けれど『抱き潰されたこと』よりも『黒衣が着れなかったこと』への怒りが全く理解できない。
とは言えよくはわからないものの寝ないというのは本気のようで、これは流石にまずそうだということだけはよくわかった。
そこをすかさずヒュースがフォローに回って、黒衣を持ってきてくれる。

【ロックウェル様…クレイ様は黒衣さえ着させてもらえていたら別に三日三晩抱かれても水に流したのにとお怒りなだけですので…】

こっそりそうやって囁かれて『本当か?』と首を傾げながら思わず疑いたくなったが、ここはヒュースを信じて思い切ってその言葉を紡いでみる。

「…クレイ。悪かった。ほら、黒衣を着させてやるからそう怒るな」

そう言ってやるとそっとこちらへと視線を向けてくる。
そう言えばいつだったかも途中で中断して食べる際、裸は嫌だと言ってマントを羽織っていた時があったし、黒衣がないと落ち着かないと言っていたこともあった気がする。
いつだったかは黒衣を白濁でグチャグチャにしてしまって激怒していたこともあった。
全部軽く流していたが、もしかしてクレイ的に黒衣はとても大事なこだわりポイントだったのだろうか?

「その…今度は食事の時とかは黒衣を着させてやるし、許してもらえないか?」
「………」

けれどクレイからの返答はない。
これはやはりもう三日三晩襲ったりしないからと言って謝った方が正解だったのではないだろうかと内心思いながら様子を窺っていると、そっとクレイの手が動いて黒衣を受け取りキュッとそれを強く握った。

「…本当か?」

(……ん?)

「本当に……食事の時は黒衣を着させてくれるか?」

まるで懇願するかのように上目遣いでこちらを見てこられて、理性が揺らぐ。
どうしてこんなにクレイはずれまくっていて可愛いのだろう?
どうやらヒュースの言葉は本当にその通りだったようだとホッと息を吐く。
嫌われなくて本当に良かった。
自分の好みも大概だなと思いながら、そっとそのままクレイを抱きしめる。

「もちろんだ。だからもう寝ないなんて言わないでくれ」
「……悪かった」

そしてわかってもらえて嬉しいと嬉しそうに笑った姿に魅了されて、後一度だけ襲ってしまったのはご愛嬌。
どうやら黒衣さえ着させておけば割と何をしても許してもらえるらしい。
ただし以前汚した時は物凄く怒られたから、やはりそこだけはこれからも気をつけたいところだ。

まだまだ始まったばかりの結婚生活。
少しずつクレイの事を理解していけたらいいなと思いながらそっとクレイの手を取り、そこにはまった指輪へと口づけを落とした。

永遠とわにお前だけに愛を……」

神への誓いの言葉を口にして、そっと自分だけの愛しい者へと愛を誓う。
光降り注ぐ新生活の幕開けに、自分だけの黒衣の魔道士は艶やかに笑ったのだった。




第一部 完

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