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200.※花嫁の打診⑥
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ヒューガー侯爵を玩具で犯し、最後まで見終えたアンヌ嬢は興奮した様子で「ロキ陛下…」とこちらを見つめてきたけれど、「お疲れさまでした。ではまた明日」とその場からさっさと撤収してやった。
正直俺に色目を使わないで欲しい。
気持ち悪い。
「兄上ならいくらでも俺に色目を使ってくれていいんですけど」
「あっ、はぁんっ!ロキッ!そこぉっ!」
すっかり興奮しきっていた兄を夫婦の寝室に連れ込んで好きなだけ愛していく。
「あっ!イイッ!気持ちいいっ!ロキぃッ!」
陶酔したようにシーツを握りしめ、快感を追い求めるように俺の名を呼ぶ兄の姿に歓喜が満ちる。
「はぁ…っ、兄上。可愛すぎます」
もっともっと淫らに乱れて俺の目を楽しませてほしい。
それこそが先程までの全く面白くもない時間でささくれだった心を癒してくれるのだから────。
翌朝。モゾモゾと動いて抱き着いてきた兄を抱きしめ返しながら、幸せな気持ちでチュッと髪にキスを落とす。
「ん…ロキ」
「おはようございます兄上。体は大丈夫ですか?」
「…ああ。大丈夫だ」
いつもの朝。
いつもの挨拶。
そしていつものように身支度をして、いつものように朝食を食べる。
何も変わらない朝だった。
なのに仕事に向かおうとしたところで満面の笑みの宰相に捕まってしまう。
「ロキ陛下。昨日は如何でしたか?」
当然だが、聞いているのはヒューガー侯爵とアンヌ嬢の件だ。
「まあ、条件はクリアしていたな」
「そうでしょうとも!ではこのお話は進めさせていただいても?」
嬉々として目を輝かせる宰相。
まあ確かに条件は満たしていたけれど…。
「兄上はどう思いますか?」
ここできちんと兄の意見を聞いておく。
「そう…だな。まあ確かに条件は満たしていたし、悪くはないと思う」
「そうですか」
兄が言うのなら仕方がない。
面倒だしさっさと済ませて終わらせてしまおう。
「ではそのように」
「あ、ありがとうございます!書類はこちらにご用意しておりますので、すぐにでもサインをしていただきたく!」
どれだけ乗り気だったのだろう?
正直言ってうんざりしてしまう。
でもまあ結婚の書類だし、一応きちんと目を通してはおくかとザッと目を通すことに。
「……こことここは削って、条件をいくつか書き足してくれ」
やはり確認をしておいてよかった。
いらない文言が入れられている。
「どちらでしょう?」
「こことここだ。それと『俺との閨に期待しないこと』と、『呼ばれた時以外の兄上との閨には乱入してこないこと』『子ができたら別に設けた屋敷に居を移して好きに過ごすこと』というのも書き足しておいてくれ」
それがちゃんと明記されないならサインはしないと言い置いて仕事に移る。
そんな俺に兄がどこか不安げにしながら何の文言を削らせたのかと訊いてきた。
「何か問題でもあったのか?」
「問題と言えば問題ですね。『夫婦の契りを交わし愛し合うことを誓う』なんてありえません。俺は兄上一筋なんですから兄上以外に愛なんて誓いませんよ。それに契りを交わすのは兄上ですし、そのままサインしたら俺が彼女を抱くことになってしまうでしょう?あんな文言は不要です。もう一つは『一年以内に子ができない場合、子作りに専念する』というところですね。あり得ません。却下です。何が悲しくて兄上との二人の閨を我慢しないといけないんです?そんなもの考えただけでうんざりします」
「そ…そうだな。その二つは確かに削っても仕方がない」
「そうでしょう?あ、兄上も後で一応確認をお願いします。俺が大丈夫でも兄上が気になる文言が入っていたらサインせずに突き返しますから」
「…わかった」
そしてどこか甘えるように寄りかかってくる兄。
やっぱり兄としては気乗りがしないのではないだろうか?
(う~ん……)
「兄上」
「なんだ?」
「気乗りしないならやめてもいいんですよ?」
「いや…。これを逃すと後がないかもしれないだろう?」
「でも…」
「いいんだ」
そうは言っても兄の表情は晴れることはない。
(仕方がないな)
俺は一つ溜息を吐くと『宰相に言い忘れたことがあるので、先に仕事にとりかかっていてください』と言って踵を返した。
***
「それで条件を足されたわけですか」
「ああ」
無事に宰相に条件を伝えに行き、午前の仕事を片付けて鍛錬の時間にリヒターにそれとなく話すと、良かったのではないかと言ってもらうことができた。
足した内容というのは、『本契約のサインをした日から半年の猶予期間をおいて、特に問題が生じなければ正式に側妃として認めるものとする』というものだ。
つまりお試し期間を定めたという次第だ。
その間彼女は王宮で暮らし実際の妃生活を送ることはできるが、本決定ではないため仮の花嫁という位置づけになる。
半年が過ぎれば晴れて側妃になるのだが、さてどうなることか。
「彼女を抱くのは兄上だし、不安はなるべく払拭してあげないと」
「ロキ陛下らしいですね」
リヒターはそんな俺にふわりと優しく笑ってくれる。
「ちなみにロキ陛下から見た彼女は如何でしたか?」
「え?」
「お気に召しましたか?」
「ん~別にどうでもいいかな。兄上が気に入ったっぽいからそれで十分と思ったくらいか?」
「そうですか」
「そもそもの話、リヒターがお勧めしない時点で俺は興味がない」
「…え?」
「エメラルダ夫人はリヒターが気に入っているのが一目でわかったし、俺も好意的に見れたけど、今回のアンヌ?嬢は違ったみたいだから」
「そうでしたか。なんだか先入観を与えてしまったようで申し訳ありません」
リヒターは本当に申し訳なさそうにそう言うけど、別に気にしなくてもいいのに。
「それよりもリヒターとカークの結婚式の方が楽しみだな」
「そうですか?」
「ああ。もちろんレオの結婚式も参列するからにはお祝いはするつもりだけど、リヒターとカークは俺の大事な側仕えだからもっと楽しみなんだ」
「陛下……」
「リクエストがあればできるだけ応えるから、欲しいものがあれば何でも言って欲しい」
「ありがとうございます」
大事な二人だから幸せになってほしい。
そんな気持ちで口にしたらどこか眩しそうにしながらリヒターがポツリと言った。
「もし叶うなら、礼服に陛下の色味を入れさせていただいても構いませんか?」
「色味?」
「はい。髪色でも瞳の色でも構わないのですが」
リヒターはそういうけれど、特別珍しい色ではない。
髪色はダークブロンドだからざっくり言って茶色だし、瞳の色もありきたりな薄茶色。
我ながら地味で平凡な色味だと思う。
でもまあ入れたいなら差し色にポケットチーフに加えたらどうだと言ってみた。
すると嬉しそうにしながら礼を言われた。
式の時の礼服なんてどうせすぐ脱ぐのに。
思わずそう言ったら、自分とカークにとっては特別な意味があるのでとも言われてしまう。
「陛下に祝福された婚姻は我々にとっては特別な意味合いになります。永遠の揺るがぬ忠誠を捧げる感じですね」
なんだかそこまで思ってもらえると凄く面映ゆく感じて、つい目を逸らしてしまった。
「陛下。この先陛下が退位なさっても、カークと二人、終生お側に置いてください」
「リヒター…」
まだ結婚してないのにそんな泣きそうなことを言わないでほしい。
カークもいつの間にか側に来て一緒になって優しい目で頷いてくれているし。
正直胸がいっぱいで、俺は二人に頷くのがやっとだった。
なんだろう?もしかしたら違うかもしれないけど、一般的に家族というものはこんな感じなのかなと思えて仕方がなかった。
この二人は俺が王だから側にいるんじゃなくて、そういうのは関係なく側にいてくれるのだというのがヒシヒシと伝わってきたからそう思ったのかもしれない。
辛かった時もいつだって寄り添ってくれた二人。
俺の中で兄は唯一無二の大事な存在だけど、それとは別にこの二人もまた特別なのだとストンと胸に落ちた。
「ありがとう」
これからもよろしく────。
俺は二人に泣き笑いのような顔で小さくそう告げた。
****************
※リヒターはロキに余計な事は言いませんが、内心ロキがアンヌを気に入らなくて良かったと思ってます。
逆にカークとの結婚を喜んでくれているのは純粋に自分の幸せを願ってくれているのを感じて、幸せという感じ。
愛しくて仕方がなくて、ずっと側に居たいと改めて実感中。
正直俺に色目を使わないで欲しい。
気持ち悪い。
「兄上ならいくらでも俺に色目を使ってくれていいんですけど」
「あっ、はぁんっ!ロキッ!そこぉっ!」
すっかり興奮しきっていた兄を夫婦の寝室に連れ込んで好きなだけ愛していく。
「あっ!イイッ!気持ちいいっ!ロキぃッ!」
陶酔したようにシーツを握りしめ、快感を追い求めるように俺の名を呼ぶ兄の姿に歓喜が満ちる。
「はぁ…っ、兄上。可愛すぎます」
もっともっと淫らに乱れて俺の目を楽しませてほしい。
それこそが先程までの全く面白くもない時間でささくれだった心を癒してくれるのだから────。
翌朝。モゾモゾと動いて抱き着いてきた兄を抱きしめ返しながら、幸せな気持ちでチュッと髪にキスを落とす。
「ん…ロキ」
「おはようございます兄上。体は大丈夫ですか?」
「…ああ。大丈夫だ」
いつもの朝。
いつもの挨拶。
そしていつものように身支度をして、いつものように朝食を食べる。
何も変わらない朝だった。
なのに仕事に向かおうとしたところで満面の笑みの宰相に捕まってしまう。
「ロキ陛下。昨日は如何でしたか?」
当然だが、聞いているのはヒューガー侯爵とアンヌ嬢の件だ。
「まあ、条件はクリアしていたな」
「そうでしょうとも!ではこのお話は進めさせていただいても?」
嬉々として目を輝かせる宰相。
まあ確かに条件は満たしていたけれど…。
「兄上はどう思いますか?」
ここできちんと兄の意見を聞いておく。
「そう…だな。まあ確かに条件は満たしていたし、悪くはないと思う」
「そうですか」
兄が言うのなら仕方がない。
面倒だしさっさと済ませて終わらせてしまおう。
「ではそのように」
「あ、ありがとうございます!書類はこちらにご用意しておりますので、すぐにでもサインをしていただきたく!」
どれだけ乗り気だったのだろう?
正直言ってうんざりしてしまう。
でもまあ結婚の書類だし、一応きちんと目を通してはおくかとザッと目を通すことに。
「……こことここは削って、条件をいくつか書き足してくれ」
やはり確認をしておいてよかった。
いらない文言が入れられている。
「どちらでしょう?」
「こことここだ。それと『俺との閨に期待しないこと』と、『呼ばれた時以外の兄上との閨には乱入してこないこと』『子ができたら別に設けた屋敷に居を移して好きに過ごすこと』というのも書き足しておいてくれ」
それがちゃんと明記されないならサインはしないと言い置いて仕事に移る。
そんな俺に兄がどこか不安げにしながら何の文言を削らせたのかと訊いてきた。
「何か問題でもあったのか?」
「問題と言えば問題ですね。『夫婦の契りを交わし愛し合うことを誓う』なんてありえません。俺は兄上一筋なんですから兄上以外に愛なんて誓いませんよ。それに契りを交わすのは兄上ですし、そのままサインしたら俺が彼女を抱くことになってしまうでしょう?あんな文言は不要です。もう一つは『一年以内に子ができない場合、子作りに専念する』というところですね。あり得ません。却下です。何が悲しくて兄上との二人の閨を我慢しないといけないんです?そんなもの考えただけでうんざりします」
「そ…そうだな。その二つは確かに削っても仕方がない」
「そうでしょう?あ、兄上も後で一応確認をお願いします。俺が大丈夫でも兄上が気になる文言が入っていたらサインせずに突き返しますから」
「…わかった」
そしてどこか甘えるように寄りかかってくる兄。
やっぱり兄としては気乗りがしないのではないだろうか?
(う~ん……)
「兄上」
「なんだ?」
「気乗りしないならやめてもいいんですよ?」
「いや…。これを逃すと後がないかもしれないだろう?」
「でも…」
「いいんだ」
そうは言っても兄の表情は晴れることはない。
(仕方がないな)
俺は一つ溜息を吐くと『宰相に言い忘れたことがあるので、先に仕事にとりかかっていてください』と言って踵を返した。
***
「それで条件を足されたわけですか」
「ああ」
無事に宰相に条件を伝えに行き、午前の仕事を片付けて鍛錬の時間にリヒターにそれとなく話すと、良かったのではないかと言ってもらうことができた。
足した内容というのは、『本契約のサインをした日から半年の猶予期間をおいて、特に問題が生じなければ正式に側妃として認めるものとする』というものだ。
つまりお試し期間を定めたという次第だ。
その間彼女は王宮で暮らし実際の妃生活を送ることはできるが、本決定ではないため仮の花嫁という位置づけになる。
半年が過ぎれば晴れて側妃になるのだが、さてどうなることか。
「彼女を抱くのは兄上だし、不安はなるべく払拭してあげないと」
「ロキ陛下らしいですね」
リヒターはそんな俺にふわりと優しく笑ってくれる。
「ちなみにロキ陛下から見た彼女は如何でしたか?」
「え?」
「お気に召しましたか?」
「ん~別にどうでもいいかな。兄上が気に入ったっぽいからそれで十分と思ったくらいか?」
「そうですか」
「そもそもの話、リヒターがお勧めしない時点で俺は興味がない」
「…え?」
「エメラルダ夫人はリヒターが気に入っているのが一目でわかったし、俺も好意的に見れたけど、今回のアンヌ?嬢は違ったみたいだから」
「そうでしたか。なんだか先入観を与えてしまったようで申し訳ありません」
リヒターは本当に申し訳なさそうにそう言うけど、別に気にしなくてもいいのに。
「それよりもリヒターとカークの結婚式の方が楽しみだな」
「そうですか?」
「ああ。もちろんレオの結婚式も参列するからにはお祝いはするつもりだけど、リヒターとカークは俺の大事な側仕えだからもっと楽しみなんだ」
「陛下……」
「リクエストがあればできるだけ応えるから、欲しいものがあれば何でも言って欲しい」
「ありがとうございます」
大事な二人だから幸せになってほしい。
そんな気持ちで口にしたらどこか眩しそうにしながらリヒターがポツリと言った。
「もし叶うなら、礼服に陛下の色味を入れさせていただいても構いませんか?」
「色味?」
「はい。髪色でも瞳の色でも構わないのですが」
リヒターはそういうけれど、特別珍しい色ではない。
髪色はダークブロンドだからざっくり言って茶色だし、瞳の色もありきたりな薄茶色。
我ながら地味で平凡な色味だと思う。
でもまあ入れたいなら差し色にポケットチーフに加えたらどうだと言ってみた。
すると嬉しそうにしながら礼を言われた。
式の時の礼服なんてどうせすぐ脱ぐのに。
思わずそう言ったら、自分とカークにとっては特別な意味があるのでとも言われてしまう。
「陛下に祝福された婚姻は我々にとっては特別な意味合いになります。永遠の揺るがぬ忠誠を捧げる感じですね」
なんだかそこまで思ってもらえると凄く面映ゆく感じて、つい目を逸らしてしまった。
「陛下。この先陛下が退位なさっても、カークと二人、終生お側に置いてください」
「リヒター…」
まだ結婚してないのにそんな泣きそうなことを言わないでほしい。
カークもいつの間にか側に来て一緒になって優しい目で頷いてくれているし。
正直胸がいっぱいで、俺は二人に頷くのがやっとだった。
なんだろう?もしかしたら違うかもしれないけど、一般的に家族というものはこんな感じなのかなと思えて仕方がなかった。
この二人は俺が王だから側にいるんじゃなくて、そういうのは関係なく側にいてくれるのだというのがヒシヒシと伝わってきたからそう思ったのかもしれない。
辛かった時もいつだって寄り添ってくれた二人。
俺の中で兄は唯一無二の大事な存在だけど、それとは別にこの二人もまた特別なのだとストンと胸に落ちた。
「ありがとう」
これからもよろしく────。
俺は二人に泣き笑いのような顔で小さくそう告げた。
****************
※リヒターはロキに余計な事は言いませんが、内心ロキがアンヌを気に入らなくて良かったと思ってます。
逆にカークとの結婚を喜んでくれているのは純粋に自分の幸せを願ってくれているのを感じて、幸せという感じ。
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