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92.ブルーグレイ再訪③
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ディグに教えてもらったこの国の裏稼業の事情を頭に街を進む。
この国の裏稼業グループは大きく分けて5つあり、ディグ達はそのうちの一つと懇意にしているらしい。
なので今日は挨拶と情報交換をと思ったのだ。
「ここか」
それは大きな商店の脇にある路地を入った先にある立派な建物。
傍から見るとまず裏稼業の者のアジトには見えないだろう。
「ロキ、ここは?」
「知り合いが懇意にしているお店です」
「……ほぉ」
セドリック王子はそれだけで察してくれたようだけど、アルフレッドは全くわかっていないからか「こっちに知り合いが居たんだ」と普通に聞き流していた。
「いらっしゃいませ。本日は何をお求めでしょう?」
「ディグの紹介で来ました。今日はハウルさんはいらっしゃいますか?」
「……ディグの紹介。ではロンギスをご存じで?」
「ええ、お世話になってます」
「ロンギスさんもそろそろいい年だし引退した方がいいんじゃないですかね?」
「ロンギスはまだ若いですし殺しても死にそうにないくらい元気なのでまだまだ現役でいてくれると思いますよ?」
「そうですか。それならよかった。そうそう、最近風の噂でレギドがやらかしたと聞いたのですが…」
「レギドは数年前ちょっと仕事で失敗して亡くなってしまったそうです。親しくしていただけに残念です」
「…………」
「面会は可能ですか?」
「少々お待ちを」
色々真偽を確認する質問に答えると目指す相手に紹介してもらえる独特のシステム。
紹介相手を元に繰り出される質問の数々でさっきの彼が凄く有能な人物だと言うことはすぐにわかった。
彼のお眼鏡に適わなければここでふるい落とされ適当なものを買わされて笑顔で追い出されるので、割と侮れないシステムだと思う。
「どうぞこちらへ」
「はい。あ、セドリック王子達は店の中を見てますか?」
「いや。面白そうだしついていこうと思うが?」
「そうですか。ではご一緒に」
そう言って案内されながら奥へと向かうと一つの部屋へと通された。
中にいたのは清潔感溢れる衣服に身を包んだ店の主人に相応しい壮年の男だ。
「はじめまして。ディグの紹介だとか」
「はい。ガヴァムのロキです。今回こちらに旅行に来たのでご挨拶をと思って」
「ほぉ?私の記憶違いでなければその名は国王の名ではなかったでしょうか?」
「ええ。仕方なくついたので腰掛け同然ですが」
「はははっ!ご謙遜を。まあ…後ろにそれを裏付けるようなお相手をお連れのようですし、アジトを壊滅しに来たのでなければ歓待いたしますよ」
「ありがとうございます」
そして勧められるがままにソファへと座らせてもらう。
「この国では5つほどのグループに分かれていると聞きましたが、他に挨拶に行った方がいいところはありますか?」
「そうですね。うちと仲良くしているところはラムダとオミクロンですが…友好関係にあるだけでそれぞれ独立しているので特に必要はないかと」
「後の二つとは敵対でも?」
「エプシロンとシグマは…そうですね、あちらとは犬猿の仲と言えるかもしれません」
違法薬物とかを扱ったり、拉致強姦なんかをするから気に入らないのだとハウルは言う。
「この国は大国なだけあって色々な文化もあって豊かです。孤児でも学を学べるよう差配されていて、本来不当に扱われるような立場の者でも他国に比べてずっと安全だ。それをわざわざ壊しにかかる連中はうちとしてはどうにも腹立たしく思えてね」
「なるほど」
「ま、うちも暗殺者くらいは普通にいるので、真っ白かというとそうでもありませんけど」
「そんなことを言い出したらガヴァムは真っ黒ですけどね」
「いやいや。色々聞こえてきますよ?あちらは随分闇市場がにぎわっていると。貴方も利用されているんでしょう?」
「まあ最近やっとトーシャス達に許してもらえたと言う感じですけど」
「トーシャスは貴方を随分可愛がっていると聞きますからね。前に弟分だと言っていたとも聞きました」
「小さい頃から出入りしていたせいか、皆兄貴分だと先輩風を吹かせてくるんです」
「ははぁ。なるほど。まあわかる気はしますよ」
そしてこの国で困ったことがあればいつでも頼ってほしいと言ってもらえた。
「セドリック王子。何かご質問は?」
しかもセドリック王子にまでハウルは笑顔でそう問い掛けた。
多分そう簡単に会えない相手だからだろう。
「随分興味深いやり取りだったな。是非俺もこれからは暗部の情報網に取り入れておきたいものだ」
「またまたご冗談を。殿下の暗部が優秀だと、我々が知らないとでも?」
「それこそ買い被りすぎだな。まあ…そうだな。持ちつ持たれつ良い関係を築けるよう俺も手を尽くそう」
『特にこのデルタグループとは』とセドリック王子は笑みを浮かべた。
「では念のためこちらに合言葉を」
「……何か規則は?」
「特には。ただ、悪用されてもいけませんので、暗部にしかわからない内容などの方が良いかと」
「そうか」
そしてセドリック王子はいくつかのキーワードを紙に書いてハウルへと渡す。
「確かにお預かりしました」
そうして恭しく受け取ったハウルの前に、俺は金貨の入った袋をそっと置く。
「ちなみにここではカリーというスパイスは扱ってないですか?」
「ああ、もしや屋台でお召し上がりに?」
「ええ。ただそれが売っている場所がわからなくて」
「ございますよ。ご案内しますね」
ついでに他にも欲しいものがあれば何でも取り寄せてくれるらしいので、また何かあったら頼むと言っておいた。
「無事に手に入って良かったですね」
「ああ。これで兄上にも食べさせてあげられる」
挨拶ついでに手に入れられて良かったと俺はホクホクしながらリヒターと歩き、セドリック王子もよい繋がりができて良かったとご満悦だ。
アルフレッドだけちょっと複雑そうな顔をしてたけど、ロキ陛下だし仕方ないとかなんとか言っていた。
不思議だ。
「さて、そろそろ帰るとするか」
セドリック王子の言葉にそう言えば結構な時間が経っていたんだなと空を見上げて驚いた。
いつの間にやら既に夕暮れが広がっている。
「夕餉は城で食べよう。父がきっとロキの話を聞きたがっているに違いない」
「そうでしょうか?」
「ああ」
別にそんな真新しい話なんて特にないのにと思いながら、俺はそっと溜息を吐いた。
この国の裏稼業グループは大きく分けて5つあり、ディグ達はそのうちの一つと懇意にしているらしい。
なので今日は挨拶と情報交換をと思ったのだ。
「ここか」
それは大きな商店の脇にある路地を入った先にある立派な建物。
傍から見るとまず裏稼業の者のアジトには見えないだろう。
「ロキ、ここは?」
「知り合いが懇意にしているお店です」
「……ほぉ」
セドリック王子はそれだけで察してくれたようだけど、アルフレッドは全くわかっていないからか「こっちに知り合いが居たんだ」と普通に聞き流していた。
「いらっしゃいませ。本日は何をお求めでしょう?」
「ディグの紹介で来ました。今日はハウルさんはいらっしゃいますか?」
「……ディグの紹介。ではロンギスをご存じで?」
「ええ、お世話になってます」
「ロンギスさんもそろそろいい年だし引退した方がいいんじゃないですかね?」
「ロンギスはまだ若いですし殺しても死にそうにないくらい元気なのでまだまだ現役でいてくれると思いますよ?」
「そうですか。それならよかった。そうそう、最近風の噂でレギドがやらかしたと聞いたのですが…」
「レギドは数年前ちょっと仕事で失敗して亡くなってしまったそうです。親しくしていただけに残念です」
「…………」
「面会は可能ですか?」
「少々お待ちを」
色々真偽を確認する質問に答えると目指す相手に紹介してもらえる独特のシステム。
紹介相手を元に繰り出される質問の数々でさっきの彼が凄く有能な人物だと言うことはすぐにわかった。
彼のお眼鏡に適わなければここでふるい落とされ適当なものを買わされて笑顔で追い出されるので、割と侮れないシステムだと思う。
「どうぞこちらへ」
「はい。あ、セドリック王子達は店の中を見てますか?」
「いや。面白そうだしついていこうと思うが?」
「そうですか。ではご一緒に」
そう言って案内されながら奥へと向かうと一つの部屋へと通された。
中にいたのは清潔感溢れる衣服に身を包んだ店の主人に相応しい壮年の男だ。
「はじめまして。ディグの紹介だとか」
「はい。ガヴァムのロキです。今回こちらに旅行に来たのでご挨拶をと思って」
「ほぉ?私の記憶違いでなければその名は国王の名ではなかったでしょうか?」
「ええ。仕方なくついたので腰掛け同然ですが」
「はははっ!ご謙遜を。まあ…後ろにそれを裏付けるようなお相手をお連れのようですし、アジトを壊滅しに来たのでなければ歓待いたしますよ」
「ありがとうございます」
そして勧められるがままにソファへと座らせてもらう。
「この国では5つほどのグループに分かれていると聞きましたが、他に挨拶に行った方がいいところはありますか?」
「そうですね。うちと仲良くしているところはラムダとオミクロンですが…友好関係にあるだけでそれぞれ独立しているので特に必要はないかと」
「後の二つとは敵対でも?」
「エプシロンとシグマは…そうですね、あちらとは犬猿の仲と言えるかもしれません」
違法薬物とかを扱ったり、拉致強姦なんかをするから気に入らないのだとハウルは言う。
「この国は大国なだけあって色々な文化もあって豊かです。孤児でも学を学べるよう差配されていて、本来不当に扱われるような立場の者でも他国に比べてずっと安全だ。それをわざわざ壊しにかかる連中はうちとしてはどうにも腹立たしく思えてね」
「なるほど」
「ま、うちも暗殺者くらいは普通にいるので、真っ白かというとそうでもありませんけど」
「そんなことを言い出したらガヴァムは真っ黒ですけどね」
「いやいや。色々聞こえてきますよ?あちらは随分闇市場がにぎわっていると。貴方も利用されているんでしょう?」
「まあ最近やっとトーシャス達に許してもらえたと言う感じですけど」
「トーシャスは貴方を随分可愛がっていると聞きますからね。前に弟分だと言っていたとも聞きました」
「小さい頃から出入りしていたせいか、皆兄貴分だと先輩風を吹かせてくるんです」
「ははぁ。なるほど。まあわかる気はしますよ」
そしてこの国で困ったことがあればいつでも頼ってほしいと言ってもらえた。
「セドリック王子。何かご質問は?」
しかもセドリック王子にまでハウルは笑顔でそう問い掛けた。
多分そう簡単に会えない相手だからだろう。
「随分興味深いやり取りだったな。是非俺もこれからは暗部の情報網に取り入れておきたいものだ」
「またまたご冗談を。殿下の暗部が優秀だと、我々が知らないとでも?」
「それこそ買い被りすぎだな。まあ…そうだな。持ちつ持たれつ良い関係を築けるよう俺も手を尽くそう」
『特にこのデルタグループとは』とセドリック王子は笑みを浮かべた。
「では念のためこちらに合言葉を」
「……何か規則は?」
「特には。ただ、悪用されてもいけませんので、暗部にしかわからない内容などの方が良いかと」
「そうか」
そしてセドリック王子はいくつかのキーワードを紙に書いてハウルへと渡す。
「確かにお預かりしました」
そうして恭しく受け取ったハウルの前に、俺は金貨の入った袋をそっと置く。
「ちなみにここではカリーというスパイスは扱ってないですか?」
「ああ、もしや屋台でお召し上がりに?」
「ええ。ただそれが売っている場所がわからなくて」
「ございますよ。ご案内しますね」
ついでに他にも欲しいものがあれば何でも取り寄せてくれるらしいので、また何かあったら頼むと言っておいた。
「無事に手に入って良かったですね」
「ああ。これで兄上にも食べさせてあげられる」
挨拶ついでに手に入れられて良かったと俺はホクホクしながらリヒターと歩き、セドリック王子もよい繋がりができて良かったとご満悦だ。
アルフレッドだけちょっと複雑そうな顔をしてたけど、ロキ陛下だし仕方ないとかなんとか言っていた。
不思議だ。
「さて、そろそろ帰るとするか」
セドリック王子の言葉にそう言えば結構な時間が経っていたんだなと空を見上げて驚いた。
いつの間にやら既に夕暮れが広がっている。
「夕餉は城で食べよう。父がきっとロキの話を聞きたがっているに違いない」
「そうでしょうか?」
「ああ」
別にそんな真新しい話なんて特にないのにと思いながら、俺はそっと溜息を吐いた。
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