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【恋の自覚なんてしたくない】
42.記憶喪失になった王子
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※完結と思ったんですが、何故かお気に入り数が1500を超えたので皆様への御礼に一話書かせて頂きました。
ご訪問、お気に入り登録本当にありがとうございます♪
少しでも皆さんに楽しんで頂けますように(^^)
****************
王子との剣の手合わせはほぼ日課となっていて、俺はその日もいつも通り楽しく打ち合っていた。
だからまさかセドが体調が悪かったなんて思いもしなかったんだ。
ちょっとふらついたのはどうせフェイクだろうと思い込み、思い切り踏み込んだところでハッと気づき、慌てて軌道を反らしたけど剣の柄を頭に当ててしまったのは申し訳なかったと思う。
もっと早く気付いてさえいれば当てずに済んだのにと反省しきりだ。
でもそのせいでまさか記憶喪失になるなんて思ってもみなかったんだ。
「……セドリック殿下?」
医師が恐る恐るセドに話しかけるが、セドは凶悪な殺気を巻き散らしながら機嫌悪そうにその医師を睨みつけている。
嘗てないほどの不機嫌さだなぁと俺は思いながらも、その時は全く気にしていなかった。
けれど医師が腰を抜かし震えながら質問を繰り返したところで判明したのが、ここ一年ほどの記憶の喪失だった。
つまり、セドは俺や姫のことを全く覚えていなかったのだ。
正直「え?」って感じ。
「結婚?俺が?周辺各国で断られ続けて相手はいなかったはずだが?」
「そ、そうなのですが、運良くミラルカ皇国の姫との良縁に恵まれまして……」
「ほぅ?」
「姫はただいまご懐妊中でございます」
「そうか」
そうして何とか納得したものの、今度は俺の方に目を向け言葉を紡いできた。
「それでお前は?」
ここで『お前に手籠めにされた側妃だよ』と言ってやったらどんな顔をするかななんて思ったけど、ここは下手なことを言うよりただの騎士として接した方がいいかと思い、そのままサラッと流してやる。
「アルメリア姫の護衛としてミラルカ皇国からやってきました、筆頭騎士長のアルフレッドです。どうぞお見知りおきを」
記憶喪失は残念だけど、こうなったのは俺のせいだから文句は言えない。
ここは記憶が戻るまでこのスタイルでいこうとにこやかにそう言い切ってやった。
「姫の護衛騎士?そんな相手と手合わせを?」
「はい。ここ最近は日課でしたので」
「……そうか」
「体調も優れない中お相手頂いたにも関わらず怪我をさせてしまい申し訳ありませんでした。どうぞ記憶が戻るまでゆっくり御静養ください。目障りかと思いますので俺はこれで失礼します」
そう言って長居は無用とばかりにさっさとそこから去ろうとしたんだけど、王子の方からビリビリする程の殺気が飛んできて、ついふり返って楽し気に笑ってしまったのがダメだったんだろうか……。
「勝手にどこへ行くつもりだ?」
「騎士の俺に出来ることはここにはありませんので」
「…………そこで腰を抜かしている医師よりは動けるだろう?」
「まあ動けますが…」
「なら、怪我をさせた責任を取って傍に居ろ」
そんなことを言ってくるセドに、もしかして記憶喪失って嘘なんじゃないかとチラッと思ってしまった。
そうでもない限り傍に居ろなんて一騎士には言わないだろうから。
けれどその目にはこれまであった俺に対する愛情のようなものは全く感じられないし、揶揄うような色もない。
「アルフレッド殿、どうかセドリック殿下のお世話をよろしくお願い致しますっ!」
記憶喪失前より明らかに殺気が漏れまくっているセドを前に医師が涙目になって俺にお願いしてきたので、まあできる分はやりますとしか答えられなかった。
「王子。夕食は食べられそうですか?」
侍女や侍従達までセドの殺気に恐れをなして近寄れないようだったので、仕方なく俺が間に入って世話を焼く。
正直面倒臭い。
結婚前ってずっとこんな感じだったんだろうか?
俺と出会ってからって随分丸くなってたんだな~なんて今更ながらに思ってしまう。
そりゃあみんながみんな俺とセドの間を取り持つわけだ。
「アルフレッド。お前が食べさせろ」
「…………はぁ。わかりました」
いつもならふざけるなって怒鳴りつけて逃げるけど、ここでそれをやったらダメなことくらいはわかっている。
今の俺は側妃ではなくただの一騎士。
王子に口答えできる立場ではないのだ。
「はい、どうぞ」
「ん」
セドは何でも食べるけど、実は野菜は肉と一緒に食べないと嫌なんだよななんて思いながら一緒にフォークに突きさして差し出してやると、ちょっと驚いたようにしてから素直に口に入れ、咀嚼して飲み込んでいた。
「スープを」
「はい」
スープは全部の具を食べてからスープを少しずつ味わうのが好きって言うのも実は知っている。
だから先に具の方を食べさせてやる。
「…?何かおかしかった……ですか?」
「いや…」
そんな感じで食べさせていると、何故か段々殺気が落ち着いてきた。
ちょっと残念だ。折角その殺気を楽しんでたのに。
「お前は……」
「はい?」
「いや、何でもない。この後着替える。侍従を呼べ」
「はい」
やっとお役御免だと笑顔で食器を片付け、いそいそと侍従を呼びに行くと、着替えくらい代わってくださいよと泣きつかれたけどしらん!
俺は騎士であって召使いじゃないんだから!
でもその後何故かホッとした顔でその侍従が俺のところに戻ってきて、礼を言ってきた。
「アルフレッド殿のお陰で王子の殺気もかなり落ち着いておりました。ありがとうございます」
「そうか。それは良かった」
良かった良かった。
そう思ったのも束の間。次の言葉に衝撃が走る。
「つきましては、王子が閨を共にしたいとのことです」
「…………医者を呼んでやれ」
(どう考えても頭がおかしいだろう?!)
「医師よりアルフレッド殿をご所望です」
「記憶喪失なんだろ?!なんで俺が!」
「アルフレッド殿は側妃様ではないですか!ここでガッツリ王子を虜にして、元の王子に戻してきてください!」
お願いしますと縋りつかれたけど、どうして記憶のないセドに俺が抱かれないといけないんだと思って俺はそのまま逃亡してやった。
なのに────。
気づけばセドは俺の部屋にやってきて、何故逃げるんだとのしかかってきた。
誰だこんな奴を俺の部屋に引き込んだのは?!絶対に暗部だろ?!
(覚えてろよ?!)
涙目でセドを睨みつけるけど、セドは記憶がないくせに全く躊躇なく俺を襲い始める。
「ちょっ…やめろって…!」
「何故だ?」
「お、俺、男だぞ?!」
「知っている」
「お前、記憶ないんだろ?!」
「ないな」
「じゃあなんで抱くんだよ?!」
「……気に入ったから」
「はぁあっ?!」
そんな軽い感じで抱かれてたまるかと何とか脱出しようとするも、記憶を失う前よりもがっしりと俺の動きを封じ込めにかかっている。
(誰だアドバイスした奴は?!斬り捨ててやるから出てこい!)
しかもそのまま愛撫を開始し始めたからたまらない。
「う…うぅ……」
こんなのレイプと変わらないじゃないかと思いながら身を固くしていると、セドの無遠慮な手がいきなり俺の急所を握りこんできて、思わず叫んでしまった。
「無理!生理的に本当に無理!いつものセドじゃないと絶対嫌だっ!レイプ反対!」
言葉で嬲りながら焦らして焦らしてやっと触れてくるあの手順じゃないと嫌悪感が凄くて、性急な今日のセドはどうしても受け入れ難かった。
けれどその言葉は思いがけずセドの心を抉ってしまったようで────。
「…………アルフレッド?」
「…………」
「俺に抱かれるのが生理的に無理とは…どういう了見だ?」
「……セド?」
「他の誰かに見えるのか?」
「セドっ!」
先程までとは違い、怒りの眼差しの中にも自分を好きだという感情が見え隠れしているセドがいて、安堵からつい抱きついてしまう。
そんな俺にセドの方は困惑しているようだが、そんなことはどうでもいい。
「良かった。記憶が戻って……」
「そんな風に抱き着いてくるくらいなら素直に抱かれておけばよかっただろう?」
記憶があろうとなかろうとどちらも自分だろうにとセドは言ってくるけど全然違ったのだから仕方がない。
「いつものお前じゃないと抱かれたくない」
「ほぅ?何故だ?」
「だって、記憶がないお前はいつもみたいに言葉で嬲ってこないし…」
「…………」
「性急にやろうとしてくるし…」
「…………」
「お前はいっつもこれでもかと焦らしてくるか、言葉で虐めてからしてくるだろ?違ったから、すっごく嫌だった」
「つまりは手順が違って怖かったということか?」
「そう!それ以外に何があるんだ?」
「なるほど?」
それでかと何やら胸を押さえているけど俺としては本気で嫌だったんだから今後はやめてほしいものだ。
「アルフレッド。じゃあ、いつも通りなら抱いてもいいな?」
「え?」
「望み通り焦らして嬲って恥ずかしい体位で虐めてやるからな」
「は?ちょ、そんなこと言ってないっ!言ってないから!」
そうして俺はいつも以上に王子に虐められ、懇願させられながら犯されたのだった。
***
翌朝ソファで攻防戦を繰り広げていたら侍従がやってきて、二人の様子から記憶が戻ったのではと表情を明るくしてすぐさま医師を呼びに行ってくれた。
そしてやってきた医師が「無事に記憶は戻ったようです」と太鼓判を押してくれたので安心できたものの、記憶が戻ったなら戻ったで俺は一言物申したかった。
「そもそもは俺が悪かったけど、記憶喪失の時にまで寝込みを襲うなって俺は言いたい!」
「そう言うな。お前が俺の好みを把握していたから不思議に思って侍従に確認したら側妃だと聞いてな、それなら夜に抱くのもおかしなことではないだろうと思ったんだ」
「…………」
「まあ…実際は逃げられて、心をこれでもかと抉られたがな」
「あれはセドが悪い」
「そうだな。まあ…お前が俺以外に抱かれる心配がなくなったとでも思ってそれは水に流そう」
「……?」
「わからないならそれでいい」
そう言ってセドはちゅっちゅっと俺にキスを降らせてきた。
やめろ。俺は男だ。そんなことされても喜ばないぞ。
「今日は念のためちゃんと休んでろよ?」
「わかっている」
「おかしいと思ったらちゃんと医者に診てもらえよ?」
「わかっている」
「絶対だぞ?」
俺は俺の責任からそう言ってるのに、どうして言えば言う程セドは嬉しそうにするのか。俺にはさっぱりわからない。
「アル。そんなに心配なら今日は一日俺の傍に居ろ」
「え?いや、俺は姫の護衛に行きたいから…」
「姫には話を通しておいてやるから何も心配するな」
そして素早く動いて段取りをつけるセドの姿に俺はホッと安堵の息を吐く。
(良かった。いつものセドだ)
今度からはもう少し体調も気をつけて見ていてやらないとな…なんて思いながら、俺はちょっとだけ自分の剣バカっぷりを反省したのだった。
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王子との剣の手合わせはほぼ日課となっていて、俺はその日もいつも通り楽しく打ち合っていた。
だからまさかセドが体調が悪かったなんて思いもしなかったんだ。
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もっと早く気付いてさえいれば当てずに済んだのにと反省しきりだ。
でもそのせいでまさか記憶喪失になるなんて思ってもみなかったんだ。
「……セドリック殿下?」
医師が恐る恐るセドに話しかけるが、セドは凶悪な殺気を巻き散らしながら機嫌悪そうにその医師を睨みつけている。
嘗てないほどの不機嫌さだなぁと俺は思いながらも、その時は全く気にしていなかった。
けれど医師が腰を抜かし震えながら質問を繰り返したところで判明したのが、ここ一年ほどの記憶の喪失だった。
つまり、セドは俺や姫のことを全く覚えていなかったのだ。
正直「え?」って感じ。
「結婚?俺が?周辺各国で断られ続けて相手はいなかったはずだが?」
「そ、そうなのですが、運良くミラルカ皇国の姫との良縁に恵まれまして……」
「ほぅ?」
「姫はただいまご懐妊中でございます」
「そうか」
そうして何とか納得したものの、今度は俺の方に目を向け言葉を紡いできた。
「それでお前は?」
ここで『お前に手籠めにされた側妃だよ』と言ってやったらどんな顔をするかななんて思ったけど、ここは下手なことを言うよりただの騎士として接した方がいいかと思い、そのままサラッと流してやる。
「アルメリア姫の護衛としてミラルカ皇国からやってきました、筆頭騎士長のアルフレッドです。どうぞお見知りおきを」
記憶喪失は残念だけど、こうなったのは俺のせいだから文句は言えない。
ここは記憶が戻るまでこのスタイルでいこうとにこやかにそう言い切ってやった。
「姫の護衛騎士?そんな相手と手合わせを?」
「はい。ここ最近は日課でしたので」
「……そうか」
「体調も優れない中お相手頂いたにも関わらず怪我をさせてしまい申し訳ありませんでした。どうぞ記憶が戻るまでゆっくり御静養ください。目障りかと思いますので俺はこれで失礼します」
そう言って長居は無用とばかりにさっさとそこから去ろうとしたんだけど、王子の方からビリビリする程の殺気が飛んできて、ついふり返って楽し気に笑ってしまったのがダメだったんだろうか……。
「勝手にどこへ行くつもりだ?」
「騎士の俺に出来ることはここにはありませんので」
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「まあ動けますが…」
「なら、怪我をさせた責任を取って傍に居ろ」
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そうでもない限り傍に居ろなんて一騎士には言わないだろうから。
けれどその目にはこれまであった俺に対する愛情のようなものは全く感じられないし、揶揄うような色もない。
「アルフレッド殿、どうかセドリック殿下のお世話をよろしくお願い致しますっ!」
記憶喪失前より明らかに殺気が漏れまくっているセドを前に医師が涙目になって俺にお願いしてきたので、まあできる分はやりますとしか答えられなかった。
「王子。夕食は食べられそうですか?」
侍女や侍従達までセドの殺気に恐れをなして近寄れないようだったので、仕方なく俺が間に入って世話を焼く。
正直面倒臭い。
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そりゃあみんながみんな俺とセドの間を取り持つわけだ。
「アルフレッド。お前が食べさせろ」
「…………はぁ。わかりました」
いつもならふざけるなって怒鳴りつけて逃げるけど、ここでそれをやったらダメなことくらいはわかっている。
今の俺は側妃ではなくただの一騎士。
王子に口答えできる立場ではないのだ。
「はい、どうぞ」
「ん」
セドは何でも食べるけど、実は野菜は肉と一緒に食べないと嫌なんだよななんて思いながら一緒にフォークに突きさして差し出してやると、ちょっと驚いたようにしてから素直に口に入れ、咀嚼して飲み込んでいた。
「スープを」
「はい」
スープは全部の具を食べてからスープを少しずつ味わうのが好きって言うのも実は知っている。
だから先に具の方を食べさせてやる。
「…?何かおかしかった……ですか?」
「いや…」
そんな感じで食べさせていると、何故か段々殺気が落ち着いてきた。
ちょっと残念だ。折角その殺気を楽しんでたのに。
「お前は……」
「はい?」
「いや、何でもない。この後着替える。侍従を呼べ」
「はい」
やっとお役御免だと笑顔で食器を片付け、いそいそと侍従を呼びに行くと、着替えくらい代わってくださいよと泣きつかれたけどしらん!
俺は騎士であって召使いじゃないんだから!
でもその後何故かホッとした顔でその侍従が俺のところに戻ってきて、礼を言ってきた。
「アルフレッド殿のお陰で王子の殺気もかなり落ち着いておりました。ありがとうございます」
「そうか。それは良かった」
良かった良かった。
そう思ったのも束の間。次の言葉に衝撃が走る。
「つきましては、王子が閨を共にしたいとのことです」
「…………医者を呼んでやれ」
(どう考えても頭がおかしいだろう?!)
「医師よりアルフレッド殿をご所望です」
「記憶喪失なんだろ?!なんで俺が!」
「アルフレッド殿は側妃様ではないですか!ここでガッツリ王子を虜にして、元の王子に戻してきてください!」
お願いしますと縋りつかれたけど、どうして記憶のないセドに俺が抱かれないといけないんだと思って俺はそのまま逃亡してやった。
なのに────。
気づけばセドは俺の部屋にやってきて、何故逃げるんだとのしかかってきた。
誰だこんな奴を俺の部屋に引き込んだのは?!絶対に暗部だろ?!
(覚えてろよ?!)
涙目でセドを睨みつけるけど、セドは記憶がないくせに全く躊躇なく俺を襲い始める。
「ちょっ…やめろって…!」
「何故だ?」
「お、俺、男だぞ?!」
「知っている」
「お前、記憶ないんだろ?!」
「ないな」
「じゃあなんで抱くんだよ?!」
「……気に入ったから」
「はぁあっ?!」
そんな軽い感じで抱かれてたまるかと何とか脱出しようとするも、記憶を失う前よりもがっしりと俺の動きを封じ込めにかかっている。
(誰だアドバイスした奴は?!斬り捨ててやるから出てこい!)
しかもそのまま愛撫を開始し始めたからたまらない。
「う…うぅ……」
こんなのレイプと変わらないじゃないかと思いながら身を固くしていると、セドの無遠慮な手がいきなり俺の急所を握りこんできて、思わず叫んでしまった。
「無理!生理的に本当に無理!いつものセドじゃないと絶対嫌だっ!レイプ反対!」
言葉で嬲りながら焦らして焦らしてやっと触れてくるあの手順じゃないと嫌悪感が凄くて、性急な今日のセドはどうしても受け入れ難かった。
けれどその言葉は思いがけずセドの心を抉ってしまったようで────。
「…………アルフレッド?」
「…………」
「俺に抱かれるのが生理的に無理とは…どういう了見だ?」
「……セド?」
「他の誰かに見えるのか?」
「セドっ!」
先程までとは違い、怒りの眼差しの中にも自分を好きだという感情が見え隠れしているセドがいて、安堵からつい抱きついてしまう。
そんな俺にセドの方は困惑しているようだが、そんなことはどうでもいい。
「良かった。記憶が戻って……」
「そんな風に抱き着いてくるくらいなら素直に抱かれておけばよかっただろう?」
記憶があろうとなかろうとどちらも自分だろうにとセドは言ってくるけど全然違ったのだから仕方がない。
「いつものお前じゃないと抱かれたくない」
「ほぅ?何故だ?」
「だって、記憶がないお前はいつもみたいに言葉で嬲ってこないし…」
「…………」
「性急にやろうとしてくるし…」
「…………」
「お前はいっつもこれでもかと焦らしてくるか、言葉で虐めてからしてくるだろ?違ったから、すっごく嫌だった」
「つまりは手順が違って怖かったということか?」
「そう!それ以外に何があるんだ?」
「なるほど?」
それでかと何やら胸を押さえているけど俺としては本気で嫌だったんだから今後はやめてほしいものだ。
「アルフレッド。じゃあ、いつも通りなら抱いてもいいな?」
「え?」
「望み通り焦らして嬲って恥ずかしい体位で虐めてやるからな」
「は?ちょ、そんなこと言ってないっ!言ってないから!」
そうして俺はいつも以上に王子に虐められ、懇願させられながら犯されたのだった。
***
翌朝ソファで攻防戦を繰り広げていたら侍従がやってきて、二人の様子から記憶が戻ったのではと表情を明るくしてすぐさま医師を呼びに行ってくれた。
そしてやってきた医師が「無事に記憶は戻ったようです」と太鼓判を押してくれたので安心できたものの、記憶が戻ったなら戻ったで俺は一言物申したかった。
「そもそもは俺が悪かったけど、記憶喪失の時にまで寝込みを襲うなって俺は言いたい!」
「そう言うな。お前が俺の好みを把握していたから不思議に思って侍従に確認したら側妃だと聞いてな、それなら夜に抱くのもおかしなことではないだろうと思ったんだ」
「…………」
「まあ…実際は逃げられて、心をこれでもかと抉られたがな」
「あれはセドが悪い」
「そうだな。まあ…お前が俺以外に抱かれる心配がなくなったとでも思ってそれは水に流そう」
「……?」
「わからないならそれでいい」
そう言ってセドはちゅっちゅっと俺にキスを降らせてきた。
やめろ。俺は男だ。そんなことされても喜ばないぞ。
「今日は念のためちゃんと休んでろよ?」
「わかっている」
「おかしいと思ったらちゃんと医者に診てもらえよ?」
「わかっている」
「絶対だぞ?」
俺は俺の責任からそう言ってるのに、どうして言えば言う程セドは嬉しそうにするのか。俺にはさっぱりわからない。
「アル。そんなに心配なら今日は一日俺の傍に居ろ」
「え?いや、俺は姫の護衛に行きたいから…」
「姫には話を通しておいてやるから何も心配するな」
そして素早く動いて段取りをつけるセドの姿に俺はホッと安堵の息を吐く。
(良かった。いつものセドだ)
今度からはもう少し体調も気をつけて見ていてやらないとな…なんて思いながら、俺はちょっとだけ自分の剣バカっぷりを反省したのだった。
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