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【続編】

71:息を飲む

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ドンッというとんでもない音と共に。

地震!?

三人の召使いも、私も、床の上を転がった。
立っていられないほどの、思わず倒れてしまうような大きな揺れ。

何が、何が起きているの!?

必死に上半身を起こすと、召使いが駆け寄り、私のことを起こし、ソファへと座らせてくれた。

「さっきのあの音は? それに地震……? グレイシャー帝国は地震がよくあるのですか?」
「地震……とは先程の大きな揺れのことですか?」

今の言葉で理解する。
地震はこの国ではないのだろう。
となると、雷が何かに落ち、それが倒れた衝撃……とか?
そこでさらに異変に気づく。
窓に打ち付ける雨の音が聞こえない。
雷鳴も聞こえなくなった。

私が立ち上がろうとすると、全力で制止された。

「また大きな揺れがくると危険です」
「カーテンを開けたいのですが」
「カーテン、ですか?」

驚いた顔をしたが、召使いの一人が窓に向かい、カーテンを開けた瞬間。

急に差し込んだ光に目が眩み、瞼を閉じる。
しばらくは目を開けることができない。
カーテンを開ける音に再び目を開けると。
部屋の窓の半分のカーテンが開いており、そこからは青空が見え、部屋には陽射しが差し込んでいる。

「嵐が去ったのね……」

ゆっくり立ち上がる私を召使いが止めることはない。
そのまま窓辺に向かい、息を飲む。

一面銀世界だったはずなのに。

先程の豪雨で針葉樹林に被さっていた雪はすっかり落とされていた。
地面にはまだ雪が残っているが、その量はかなり減っており、そして深緑色の森が一面に広がっている。遠くに見える湖は青空を映し、澄んだ青色になっていた。

あまりの変わりように呆然としてしまう。
だがハッとして召使いに尋ねる。

「あの、ロレンソ先生の様子を確認しに行きませんか?」

すると。

午前中に着たドレスと似たドレスを持ってきてくれた。そのドレスは白銀色で、スカートの裾を飾る毛が真っ白だった。フード付きのケープも白銀色で、白い毛が飾られている。手早く着替え、白いロングブーツをはくと、エントランスに連れて行ってもらえた。

エントランスに向かうまで、とても時間がかかった。やはりとても広い屋敷だ。

そして外に出ると――。

景色が一辺している。

元々屋敷の周辺は、雪掻きがされていた。その上で先程の豪雨。雪は完全に溶け、地面には薄く水が広がり、まるで屋敷の周辺が湖みたいだ。そしてそこには青空が映り込み……。

とても美しい。

そして森へとつながる一本道に、こちらへと向かってくる人影が見えた。
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