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【続編】

55:何をするというの……?

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魔力を無数の蝶へと変え、目くらましにした。
ロレンソが驚いている間に部屋を飛び出し、どこかで服を調達し、この建物から逃げよう。

そう思ったのだが。

「氷結」
「えっ」

沢山の蝶が瞬時に凍り付いた。

「霧散」

冷たい風が吹いたと思ったら、凍り付いた蝶は跡形もなく消えていた。
この場所にいとも簡単に移動し、部屋だって瞬きする間に変えることができたのだ。ロレンソは魔力が強い。相当強い。それは考えればすぐ分かったのに。

私は……ただ、ベッドを降りたに過ぎなかった。
その間に沢山の蝶はあっという間に氷つき、姿を消されていた。
呆気にとられ、固まってしまう。

「パトリシア様。魔法を使うのは無駄と言いましたよね?」

それでも身一つで逃げようと駆け出そうとした。
この部屋から出れば、なんとかなるかもしれない。
どうしても諦めきれなくて。
でも。
あっさりロレンソの胸の中に抱きしめられ、身動きがとれなくなっていた。
しかも魔法を使おうとした瞬間。

ロレンソの顔が私の顔に迫った。
キスをされると思い、顔の向きを変えたが、手で顎を押さえられ……。

「封印」

ロレンソの息を唇で感じ、心臓が飛び出しそうになったが。
……キスはされなかった。
でも、今、封印って言っていた……。
まさか……。

ロレンソ……!

その名を叫んだつもりだった。
でも声が出ていない。
封印……つまり、声を出すことを封じられてしまった!
これでは……魔法を使えない。
衝撃と驚愕で愕然とする。

「パトリシア様。3日ですから。それで決着がつきます。魔法を使おうとせず、大人しくしてください。そうすれば声は出せるようにします。それでも魔法を使うおうとするなら。あなたから魔力を奪います」

魔力を奪う!?
そんなことができるのかと驚愕していると。

「魔力というのは、普通にしていても、体から少しずつ失われていくのです。でもそれはほんのわずか。ただ、呼吸を乱した時。その時は大量の魔力が失われます。あなたから魔力を奪う。つまりパトリシア様。それはわたしがあなたに対し、呼吸がひどく乱れることをすることになります。そんなことをされるのは、あなたも本意ではないのでは?」

呼吸が乱れること?
何をするというの……?

「分かっていないようですね」とため息をついたロレンソが、おへその下の逆鱗に触れた。心臓がドクンと大きく反応したところで、突然首筋にキスをされた。「やめて」と口を動かすが声は出ず、心臓がバクバクし、一気に全身が熱くなった。
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