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【続編】

49:何を言っているの?

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王太子であるアルベルトのことを、ロレンソは「優しい」と評した。
それに対し、レオナルドは優雅に微笑む。

「王太子さまは臣下を大切にし、ご指摘の通り、お優しく、人格者ですから。それにパトリシアを過去に断罪したのは自分であるとの自覚もありましたので」

「……でも、やがては国の頂点に立つ男。欲しいと思うものはなんとしても手に入れる。戦いを挑み、そこで負ければ譲ることがあっても、勝負せずして諦めるとは……」

コーヒーを口に運びながら、驚いてしまう。
ロレンソは穏やかなタイプだと思ったのに。
アルベルトとアズレークが平和的に解決した私達の件に、勝負の概念をぶつけてくるなんて。相当ワインが回っているのだろうか?

「王太子さまも僕も争いは好みませんから。話し合いで解決ならそれでよいかと」

「平和ボケですか。……あなたのその血はもっと好戦的なものだったはずだ」

え、ロレンソは何を言っているの?と思った次の瞬間。
景色が変わっていた。
何が起きたのか分からず、微動だにできない。

さっきまで、マルティネス家の屋敷の一室にいたはずだ。
そこは暖炉がともり、柔らかい間接照明に照らされ、夜にふさわしい部屋だった。

でもここは……。

とにかく部屋全体が真っ白で眩しいぐらいだ。
壁紙は白く、そこに銀色のオーナメント柄が描かれている。
ソファは壁紙と同じ模様、ローテーブルも白。
絨毯も毛足の長い真っ白。
他の調度品も白で、カーテンも純白。

そして私は。
左手にソーサーを持ち、右手にコーヒーの入ったカップを持ったまま、ソファに座っている。

魔法で瞬時に部屋を模様替えでもしたの……?
いるはずのレオナルド……アズレークの方を見ると、そこに彼の姿はない。

え、どういうこと……?
パルマ修道院の裏手の森でアズレークに連れ去られ、ベッドで目覚めた時以上の衝撃を受けていると。
後ろからふわりと抱きしめられた。

「アズレーク?」

そう思い、振り返ると……。
ロレンソ!?

さっきまでのロレンソとは違う。
片眼鏡をかけていない。そして片眼鏡をはずしたその瞳の色は……白銀色だ。
白銀色と白金色の瞳。
オッドアイ――だ。
しかも今着ている服は全身真っ白。
シャツもベストもズボンも上衣も。
すべてが白い。
まるでアズレークの逆。白騎士だ。
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