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【続編】
31:完全にすれ違い
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「パトリシアさま、アズレークさまは昨晩、お屋敷に戻っていたのですか!?」
「そうね。でもスノーが夕食の時にはまだ戻っていなくて、スノーが入浴をしている時に帰ってきたみたいなの。そして夕食を一人でとって、スノーが入浴を終えた頃、アズレークはお風呂に入っていた。そしてアズレークが入浴を終えた時、スノーは寝ていたのね。だから会うことができなかったのよ」
「えー、完全にすれ違いじゃないですか。それで朝一番で王宮へまた行ってしまったのですか?」
「そう。もう屋敷にはいないわ」
結局アズレークが昨晩珍しく早い時間に屋敷へ戻っていたのは。
私を心配してのことだと思う。
もちろん王宮にいても。
アズレークは私の状態を確認できる。
それは私が彼の番(つがい)だからだ。
私の身に危機が迫り、助けを強く求めると、それはアズレークに伝わる。とても不思議だが、それは番(つがい)ゆえの絆なのだ。
プラサナスから王都へ戻る途中。
私はドルレアン公爵が放った刺客にさらわれることになった。
その時アズレークは。
もう夜遅い時間ではあったが、執務そっちのけで私を助けるため王都を飛び出すことになった。
あれは緊急事態だったとはいえ、突然、アズレークが王宮から消えたので、宮殿ではちょっとした騒動になっていたという。
きっとアズレークはそれを踏まえたのだと私は考えている。
つまり、私はロレンソと夕食をとることになっていた。事前にロレンソについて調べ、問題がない人物と分かっていた。それに護衛もつける。それでも何が起きるか分からない。なにせ貴族の夕食会や晩餐会に招かれたわけではないのだから。
もし何か起き、またも執務を放り出して王宮から駆け付けることになるのは、避けたかったのだろう。だから本来、屋敷には帰って来れない状態ではあったが。無理矢理切り上げ帰ってきたのだと思う。
だからこそ今朝も……早朝に起きると、アズレークは王宮へと戻っていた。そしてスノーはアズレークに会うことはできず、不満そうにしていたが。
私は昨晩、これまでで一番アズレークと長い時間、一緒に過ごすことができたと思う。
最初はソファに座り、ロレンソとの夕食がどんな感じであったかを話していた。話し始めた瞬間に、熱烈なキスをされ、会話は中断されたが。それが落ち着くと、ロレンソがなぜあの場所で医者をやっているのか、どうもいずれかの国の身分ある生まれ者なのではないか、そんなことを話したと聞かせることになった。
「なるほど。志の高さからして只者ではないと思ったが……。そのロレンソであれば、きっとあの界隈を平和にすることができるだろう。明日にでもまとまった額の寄付を、匿名で彼の診療所に届けておこう」
そう落ち着いた声で話すアズレークは。
その直前まで、とても情熱的なキスを私にしていたとは思えなかった。でもその後、馬車を止めた場所に向かうまでの間にひったくりにあったことを話すと……。
「……私が同行すればよかった。どこにも怪我はなかったか、パトリシア?」
心底心配した顔で尋ねられた。
手に持っていた巾着袋は盗まれたが、ひったくった少年は護衛の騎士が捕えたこと。つまり巾着袋はちゃんと取り戻せたこと。転倒しそうになったが、ロレンソが咄嗟に抱きとめてくれたので、問題なかったと伝えると……。
「そうね。でもスノーが夕食の時にはまだ戻っていなくて、スノーが入浴をしている時に帰ってきたみたいなの。そして夕食を一人でとって、スノーが入浴を終えた頃、アズレークはお風呂に入っていた。そしてアズレークが入浴を終えた時、スノーは寝ていたのね。だから会うことができなかったのよ」
「えー、完全にすれ違いじゃないですか。それで朝一番で王宮へまた行ってしまったのですか?」
「そう。もう屋敷にはいないわ」
結局アズレークが昨晩珍しく早い時間に屋敷へ戻っていたのは。
私を心配してのことだと思う。
もちろん王宮にいても。
アズレークは私の状態を確認できる。
それは私が彼の番(つがい)だからだ。
私の身に危機が迫り、助けを強く求めると、それはアズレークに伝わる。とても不思議だが、それは番(つがい)ゆえの絆なのだ。
プラサナスから王都へ戻る途中。
私はドルレアン公爵が放った刺客にさらわれることになった。
その時アズレークは。
もう夜遅い時間ではあったが、執務そっちのけで私を助けるため王都を飛び出すことになった。
あれは緊急事態だったとはいえ、突然、アズレークが王宮から消えたので、宮殿ではちょっとした騒動になっていたという。
きっとアズレークはそれを踏まえたのだと私は考えている。
つまり、私はロレンソと夕食をとることになっていた。事前にロレンソについて調べ、問題がない人物と分かっていた。それに護衛もつける。それでも何が起きるか分からない。なにせ貴族の夕食会や晩餐会に招かれたわけではないのだから。
もし何か起き、またも執務を放り出して王宮から駆け付けることになるのは、避けたかったのだろう。だから本来、屋敷には帰って来れない状態ではあったが。無理矢理切り上げ帰ってきたのだと思う。
だからこそ今朝も……早朝に起きると、アズレークは王宮へと戻っていた。そしてスノーはアズレークに会うことはできず、不満そうにしていたが。
私は昨晩、これまでで一番アズレークと長い時間、一緒に過ごすことができたと思う。
最初はソファに座り、ロレンソとの夕食がどんな感じであったかを話していた。話し始めた瞬間に、熱烈なキスをされ、会話は中断されたが。それが落ち着くと、ロレンソがなぜあの場所で医者をやっているのか、どうもいずれかの国の身分ある生まれ者なのではないか、そんなことを話したと聞かせることになった。
「なるほど。志の高さからして只者ではないと思ったが……。そのロレンソであれば、きっとあの界隈を平和にすることができるだろう。明日にでもまとまった額の寄付を、匿名で彼の診療所に届けておこう」
そう落ち着いた声で話すアズレークは。
その直前まで、とても情熱的なキスを私にしていたとは思えなかった。でもその後、馬車を止めた場所に向かうまでの間にひったくりにあったことを話すと……。
「……私が同行すればよかった。どこにも怪我はなかったか、パトリシア?」
心底心配した顔で尋ねられた。
手に持っていた巾着袋は盗まれたが、ひったくった少年は護衛の騎士が捕えたこと。つまり巾着袋はちゃんと取り戻せたこと。転倒しそうになったが、ロレンソが咄嗟に抱きとめてくれたので、問題なかったと伝えると……。
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