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【続編】

14:自分を褒めてあげたい

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レオナルドからアズレークに姿を変えると。
アズレークは、困ったけれど、仕方ないな、という感じで独り言のように呟く。

「まったく。私とレオナルドは同一なのに」
「でも姿も言動も全然違うわ」
「それはそうだろう。でも一緒のところも沢山ある」
「そう……なのですか?」
「すぐに分かる」

そう言って黒曜石のような瞳を細め、微笑むと。

「今日も来てくれてありがとう、パトリシア。君に会えて、触れることができる。それだけで溜まった疲れが一瞬で吹き飛ぶ。特にこうすると、この後の仕事がとてもスムーズに進む」

アズレークの手が滑るように後頭部に回される。
「アズレーク……」とその名を呼び、顔をあげると――。

静かに唇が重ねられた。



アーモンドの花が咲き誇る庭園に向かうと。
もうビックリしてしまう。
そこにはスノーと共に、王太子であるアルベルトと彼の三騎士が勢揃いしていたのだ。

「パトリシア、久しぶりだね。元気にしていましたか」

清々しい笑顔でアルベルトが私を見ていた。
陽射しを受け、煌めくシルバーブロンドの髪。
大海を思わせる碧い瞳には力強さが宿っている。
白シャツに濃紺のベスト、セレストブルーの上衣、同色のズボン。
爽やかでアルベルトらしい装いだ。

ドルレアン一族と決別したことで、彼本来の力強さが完全に戻っていた。その凛とした姿には、王太子のオーラさえ感じられる。

「はい。おかげさまで元気にやっています。王太子さまもお元気そうで何よりです」

「今日はパトリシアの手料理を食べられると聞いて、三騎士まで引き連れて来てしまったが、大丈夫かな?」

「ええ、沢山用意してありますから、皆で食べましょう」

私の言葉にアルベルトの後ろに控える軍服姿の三騎士――ミゲル、ルイス、マルクスも笑顔になる。

三騎士の花形・剣の騎士であるミゲルは、相変わらず薔薇の背景が似合う美しい姿をしていた。弓の騎士・ルイスは、エルフのような人智を超えた美貌を今日も披露している。槍の騎士・マルクスは……いつも通りだ。

「では魔術師レオナルド、お邪魔させていただきます」
「お邪魔などではありません。私の婚約者であるパトリシアの手料理を、王太子さまが楽しみにしていたなんて。光栄です」

レオナルドが優雅に挨拶をすると。
たまたまそばを通りがかってしまった貴婦人二人組が、彼の優雅な姿を見てしまい、倒れそうになっている。それに気づいた役人らしき男性が、慌てて二人を支えていた。

本当に、乙女ゲーム『戦う公爵令嬢』の設定通りだ。
魔術師レオナルドの優美さに卒倒する貴婦人が、本当にいるのね……。
そう考えると、さっきレオナルドに魔力を送られ、意識喪失しなかった自分を褒めてあげたい。

そんなことを思ってしまう。
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