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【続編】

13:大丈夫なわけがない

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レオナルドとキスをしている……!

そう思ったが。
魔力を送られているだけだ……。

そう、プラサナスの時のように。
唇を重ねることはなく、魔力をただ送られていた。

うっすら目を開けてしまったので、レオナルドの端整な顔が、すぐ目の前に見えている。眉毛も睫毛も髪色と同じアイスブルー。閉じられた瞼には、そのアイスブルーのサラサラした前髪がかかっている。肌はきめの細かいシルクのようで、その唇は淡いピンク色。

信じられなかった。
あの『戦う公爵令嬢』の魔術師レオナルドから魔力を送られていることに。

信じられない思いでいたが、魔力の熱の塊が喉を通過し、じわじわと体が熱くなってきている。魔法で抑えられているからこそ、逆鱗は反応していないが……。魔術師レオナルドから魔力を送られていると思うと、さらに鼓動が加速されてしまう。まだ魔力を送られている途中なのに、全身から力が抜けそうになった。

力が抜けそうになったその刹那、素早くレオナルドが私の体を支えた。
アズレークに比べ、優雅に見え、線も細く感じていたが。
私の体を支える腕は、力強い。
その事実にレオナルドを余計に意識してしまい、今度は頭までくらくらしてくる。
するともう片方の手で頬を優しく包まれた。

キスをしているわけではないのに。
レオナルドとキスをしている気分になり、意識が飛びそうになる。

もう、ヤバイ……。

そう思った瞬間、レオナルドの顔が遠ざかる。

「パトリシア。大丈夫かい?」

レオナルドの声と姿で優美に尋ねられているが。
大丈夫なわけがない。
姿はレオナルド、声はアズレークで迫られて。
でも直前で姿も声もレオナルドに戻り、魔力を送られたのだ。

混乱するし、もうどうしていいか分からない。

「僕の魔力は……アズレークの魔力よりマイルドなはずだよ。今回初めて送ったが、定着は早いはずだ」

レオナルドは私を抱き寄せると、静かに背中を撫でる。
そうやって背中を撫でられると、アズレークのことを思い出す。
レオナルドとアズレークはイコールなのだ。
思い出すも何も、本人なのに。

「アズレークに会いたいの? パトリシア」

レオナルドが耳元で囁く。
力はまだはいらないのに。
アズレークの名を聞いただけで、力が少し沸いてきた。
必死に首を縦に振る。
でもそれで力尽き、そのまま胸にもたれた。

するとふわりと風の動きを感じ、目の前の純白の軍服が、黒いシャツに変っている。

「アズレーク!」

不思議だった。
アズレークの姿は、ブラックドラゴンに由来している。そして私がその番|(つがい)であるからか。アズレークの姿を見ると、どうしたって気持ちが溢れる。そして出ないと思った声を、出すこともできていた。
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