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95:真意
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「王太子さま」
ついにレオナルドが声を挙げた。
ドキッとして、思わず視線を足元へ落としてしまう。
「なんだろうか、魔術師レオナルド」
「確かにパトリシアさまは、私の番(つがい)です」
初めてレオナルドが、自分の口で私を番だと認めた……!
「認めるのだね。パトリシアが自分の番であると」
レオナルドが頷くと、アルベルトは畳みかけるように尋ねる。
「いつ、気づいたのですか? 自分の番であると」
「パトリシアさまは、これまでも王宮に足を運んでいたと聞いています。でもその時には、まったく気づきませんでした。カロリーナさまがかけた『呪い』を解くために、パトリシアさまが必要となり、探しているうちに……。まず、自分の番(つがい)がこの世界に存在していると、気付きました。そしてパトリシアさまの居場所を追うと、番の気配を感じました。そこでようやく、パトリシアさまが自分の番なのではと、理解しました」
するとアルベルトは、不思議そうに首を傾げる。
「王宮にあれだけ足を運んでいたのに。そこで気づかないこともあるのですね」
「そうですね。一つ可能性があるならば、番(つがい)はその体が成熟した時にこそ、その存在を強くアピールするようになると言われていますので……。王宮にパトリシアさまが足を運んでいた時は、まだ学生と聞いています。だから気が付かなかったのかもしれませんが」
そこで言葉を切ると、レオナルドは紺碧の輝くような瞳で、アルベルトをじっと見た。
「パトリシアさまと王太子さまが、相思相愛であると思ったのは、事実です。ただ、それは過去の話で、現在は気持ちが違っていると、昨晩ようやく理解しました。騙すつもりはありませんでしたが、結果として騙すことになり、それは申し訳なく思っています。その上で、パトリシアさまが私の番(つがい)であることを認めさせた王太子さまのその真意は、どこにあるのでしょうか?」
アルベルトは、楽しそうにクスクスと笑う。
レオナルド同様、意図が分からないので私も困惑していた。
「真意などと、堅苦しいものではないですよ。わたしはただ、王宮付きの魔術師として、身を粉にしているあなたに、幸せになっていただきたいだけです。自身にとっての唯一無二の存在を、いくらわたしが王太子であるからといって、譲ろうなどと思わないでいいということです。お互いに好きなのですから、結ばれて欲しいだけですよ。魔術師レオナルドとパトリシアに」
思いがけない言葉に、アルベルトをただ見つめることしかできない。
アルベルトは私を見て、悲しいけれど嬉しいという、複雑な笑みを見せる。
「パトリシア、あなたと再会し、以前以上に気持ちが強まったのは事実です。ただ、あなたには心からの笑顔でいて欲しいと思います。それはあなたを愛するからこそ、です。私の隣にいるあなたは、心から笑えないはず。レオナルドを探し、求める気持ちは、その心から消えないでしょう。だから本当の幸せを掴んでください」
「……王太子さま……!」
アルベルトは涙ぐむ私の頭を優しく撫で、手をぎゅっと握った。
プロポーズされたらどうしたらいいのか。
そんな風に悩んでいたことが、バカバカしく思える。
すると。
レオナルドがコホンと咳払いをした。
「王太子さま。今の言葉に、二言はありませんか?」
「もちろんです」
「……王太子さまにこんなことを申し上げるのは、失礼であると承知した上で、言わせていただきます」
とても真面目な顔をしているのに、レオナルドの頬はうっすらと赤くなっている。
アルベルトと私は、思わず不思議な面持ちで、その顔を見てしまう。
「そのパトリシアには……不必要に触れないでいただきたいのです」
「えっ」
アルベルトと私の声が重なり、レオナルドは耳まで真っ赤になった。
ついにレオナルドが声を挙げた。
ドキッとして、思わず視線を足元へ落としてしまう。
「なんだろうか、魔術師レオナルド」
「確かにパトリシアさまは、私の番(つがい)です」
初めてレオナルドが、自分の口で私を番だと認めた……!
「認めるのだね。パトリシアが自分の番であると」
レオナルドが頷くと、アルベルトは畳みかけるように尋ねる。
「いつ、気づいたのですか? 自分の番であると」
「パトリシアさまは、これまでも王宮に足を運んでいたと聞いています。でもその時には、まったく気づきませんでした。カロリーナさまがかけた『呪い』を解くために、パトリシアさまが必要となり、探しているうちに……。まず、自分の番(つがい)がこの世界に存在していると、気付きました。そしてパトリシアさまの居場所を追うと、番の気配を感じました。そこでようやく、パトリシアさまが自分の番なのではと、理解しました」
するとアルベルトは、不思議そうに首を傾げる。
「王宮にあれだけ足を運んでいたのに。そこで気づかないこともあるのですね」
「そうですね。一つ可能性があるならば、番(つがい)はその体が成熟した時にこそ、その存在を強くアピールするようになると言われていますので……。王宮にパトリシアさまが足を運んでいた時は、まだ学生と聞いています。だから気が付かなかったのかもしれませんが」
そこで言葉を切ると、レオナルドは紺碧の輝くような瞳で、アルベルトをじっと見た。
「パトリシアさまと王太子さまが、相思相愛であると思ったのは、事実です。ただ、それは過去の話で、現在は気持ちが違っていると、昨晩ようやく理解しました。騙すつもりはありませんでしたが、結果として騙すことになり、それは申し訳なく思っています。その上で、パトリシアさまが私の番(つがい)であることを認めさせた王太子さまのその真意は、どこにあるのでしょうか?」
アルベルトは、楽しそうにクスクスと笑う。
レオナルド同様、意図が分からないので私も困惑していた。
「真意などと、堅苦しいものではないですよ。わたしはただ、王宮付きの魔術師として、身を粉にしているあなたに、幸せになっていただきたいだけです。自身にとっての唯一無二の存在を、いくらわたしが王太子であるからといって、譲ろうなどと思わないでいいということです。お互いに好きなのですから、結ばれて欲しいだけですよ。魔術師レオナルドとパトリシアに」
思いがけない言葉に、アルベルトをただ見つめることしかできない。
アルベルトは私を見て、悲しいけれど嬉しいという、複雑な笑みを見せる。
「パトリシア、あなたと再会し、以前以上に気持ちが強まったのは事実です。ただ、あなたには心からの笑顔でいて欲しいと思います。それはあなたを愛するからこそ、です。私の隣にいるあなたは、心から笑えないはず。レオナルドを探し、求める気持ちは、その心から消えないでしょう。だから本当の幸せを掴んでください」
「……王太子さま……!」
アルベルトは涙ぐむ私の頭を優しく撫で、手をぎゅっと握った。
プロポーズされたらどうしたらいいのか。
そんな風に悩んでいたことが、バカバカしく思える。
すると。
レオナルドがコホンと咳払いをした。
「王太子さま。今の言葉に、二言はありませんか?」
「もちろんです」
「……王太子さまにこんなことを申し上げるのは、失礼であると承知した上で、言わせていただきます」
とても真面目な顔をしているのに、レオナルドの頬はうっすらと赤くなっている。
アルベルトと私は、思わず不思議な面持ちで、その顔を見てしまう。
「そのパトリシアには……不必要に触れないでいただきたいのです」
「えっ」
アルベルトと私の声が重なり、レオナルドは耳まで真っ赤になった。
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