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75:え、え、ちょっと待ってください

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結果オーライに思えたものの、新たな不安の種がないわけではない。その疑問を、アルベルトに尋ねる。

「『呪い』を解けたことは良かったと思いますが、『呪い』を解いたとカロリーナが気づけば、また新たに『呪い』をかけられるのでは? もしくは余計なことをしたと、何か悪いことが起きそうで心配ですが……」

するとパンくずをはらいながら、アルベルトは首を振った。

「今頃、王都ではドルレアン公爵は逮捕されている」

「えっ!?」

「先に王都へ戻った魔術師レオナルドが、動いてくれている。彼がすべてを白日にさらし、今頃、ドルレアン公爵もカロリーナも牢獄の中だろう。彼の魔力と魔法の前では、成す術もないはずだ。父上も――国王も、事態を把握し、ドルレアン公爵家を処罰することを決めている」

そんな事態になっていると思わず、鴨肉のローストを食べる手を、止めてしまう。

カロリーナはヒロインなのに。親子共々牢に入れられるなんて……。
本当にとんでもない闇落ちルートだ。

「さて。パトリシア、そろそろ君も分かったのではないだろうか?」

「え?」

驚く私を見て、アルベルトはクスリと笑う。
優しい笑顔に、思わず胸がキュンとする。

「魔術師レオナルドに協力し、わたしにかけられた『呪い』を解いてくれた女性、それが誰であるかを」

!!!!!!
全然、想像がついていなかった。
それに誰であるかわかるだろうと、聞かれることすら想定していない。

「パトリシア……。君は本当に……。昔から君はそうだ。カロリーナといつも喧嘩して競っているのに、どこか抜けていて。カロリーナが本気で困ったり、泣きそうになると手加減をして。君は根がとても優しい。だから悪人になりきれない。そんなパトリシアを子供の頃から見てきたから、わたしは君を好きになった」

結構ド直球で告白されたと思う。
そう、あの、王太子アルベルトに、こ、告白された。
しかもゲームではなく、現実で!!!!!!

心臓がバクバクする一方で、どこかで冷静な自分がいる。
アルベルトは推しメンであるに違いない。
でも彼が好きになったパトリシアは、私であって私ではない。

私が覚醒する前のパトリシアであって……。
そして覚醒後のパトリシア……というか聖女オリビアになるために過ごした私の心に住みついてしまったのは……。

「パトリシア。極秘裏にすすめた計画の中で、魔術師レオナルドは、君とわたしとは相思相愛であると教えてくれた。わたしを心から愛し、婚約者になりたいと願っていたと。だからこの作戦は成功する。わたしにかけられたカロリーナの『呪い』は解くことができると」

「え、え、ちょっと待ってください。え、え、え?」

戸惑う私を見て、アルベルトは楽しそうに笑う。
そしてなぜか私の手を取り、持ち上げると、恭しく手の甲にキスをした。
顔をあげ、私を真っ直ぐに見て微笑んだアルベルトは……。

「ありがとう、パトリシア。君のおかげでわたしにかけられていた『呪い』は解けた」

「えぇぇーーーーーーー」
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