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53:この扉が寝室ね
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プラサナス城滞在二日目の朝を迎えた。
ベッドから起きると、身支度を整える。
今日は紺色のワンピースに白のベールだ。
朝食の席は、またも私のゴースト退治の話でもちきりだった。
昨晩、厨房で何があったか語るミゲルは、まさに吟遊詩人。たいした退治劇ではないはずなのに、ミゲルが語ると、とてもドラマティックなものに思えてくるから不思議だ。
その場にいた全員がその話に聞き惚れ、当然領主は沢山のお皿が割れたことに対し、文句を言わない。逆に厨房に散乱したカトラリーを片付けたことを、称賛してくれた。
朝食の後、アルベルトは領主ヘラルドと共に視察に行くことになっている。同行するか聞かれたが、それは辞退した。
ゴースト退治をとっと終えたかったし、あまりアルベルトと距離が近くなると、いざ計画を実行する際、躊躇いが出てしまうと思ったのだ。
アルベルトは、視察に同行しないことを、残念そうに感じているようだった。でも代わりにこんな申し出をしてくれた。
「そうですか。ゴースト退治をされたいと。それこそ聖女オリビアの本領発揮。邪魔立てするわけにはいきませんね。ルイスは今、仮眠をとっています。早朝まで警備の任についていたので。ゴースト退治には、ぜひルイスを警護として連れて行ってください。彼は魔力があり、多少の魔法を使えますから。きっとお役に立つでしょう」
ありがたい申し出だったので、快諾する。
その後は視察でどこへ行く予定かなどを話していたが、その話も終わり、部屋に戻ろうとすると。
「念のためで、アルベルト王太子の様子を見てもらえるか、聖女さま」
マルクスに声をかけられ、私はスノーを連れ、そのままアルベルトの部屋に向かった。
アルベルトの部屋は、この城の中で最高級の部屋のようだ。とにかく広く、眺望もよく、明るく、調度品も豪華。しかも部屋もいくつもあるようで、扉がいくつもあり、驚いてしまう。
そこで気が付く。
廃太子計画は寝室で実行となる。
でもこれだけ扉が多いと、どれが寝室か分からない。
だから。
「なるほど。これから視察に出るので、不調が出ないよう、現在の様子を確認してほしいと。そして不調の兆しがあれば、それを抑えるようにしてほしいということですね」
応接セットのソファに座り、改めてアルベルトの話を聞いた私は、用件の確認をした。
「はい。今日は馬車ではなく、馬で行くつもりなので、落馬は避けたいと思いまして」
「承知いたしました。それでは王太子さまがお使いの寝室に案内いただけますか? 聖なる力を使った際に、王太子さまが、意識を失う可能性もありますので」
アルベルトは快諾し、自身の三騎士を連れ、スノーと私と共に、寝室へと向かう。
この扉が寝室ね。
周囲にある調度品の位置、左から何番目、右から何番目の扉なのか、その位置を確認する。寝室に入ってからはベッドの位置、ベッドまで何歩の距離かも確認した。
すっかり計画遂行者モードだと、我ながら呆れる。
「では、ベッドに座ってください」
アルベルトをベッドに座らせ、スノーに確認する。
「どう、スノー? 不穏なオーラの状態は?」
「そうですね。昨日は左肩にしか不穏なオーラがなかったのですが、今は右肩にも広がってきています」
やはりゴーストではないので、聖女の言葉と光だけでは、一時的に退避させることしかできないのだろう。だが、昨日は全身を覆っていたが、今は両肩に広がっているぐらい。昨日と同じ要領でやることで、完全に消すことはできないだろうか……?
「王太子さま、それでは聖なる力を使います。眩しいと思うので、目を閉じていてくださいね」
十字架のついた杖を使い、聖女の祈りの言葉を口にした。
ベッドから起きると、身支度を整える。
今日は紺色のワンピースに白のベールだ。
朝食の席は、またも私のゴースト退治の話でもちきりだった。
昨晩、厨房で何があったか語るミゲルは、まさに吟遊詩人。たいした退治劇ではないはずなのに、ミゲルが語ると、とてもドラマティックなものに思えてくるから不思議だ。
その場にいた全員がその話に聞き惚れ、当然領主は沢山のお皿が割れたことに対し、文句を言わない。逆に厨房に散乱したカトラリーを片付けたことを、称賛してくれた。
朝食の後、アルベルトは領主ヘラルドと共に視察に行くことになっている。同行するか聞かれたが、それは辞退した。
ゴースト退治をとっと終えたかったし、あまりアルベルトと距離が近くなると、いざ計画を実行する際、躊躇いが出てしまうと思ったのだ。
アルベルトは、視察に同行しないことを、残念そうに感じているようだった。でも代わりにこんな申し出をしてくれた。
「そうですか。ゴースト退治をされたいと。それこそ聖女オリビアの本領発揮。邪魔立てするわけにはいきませんね。ルイスは今、仮眠をとっています。早朝まで警備の任についていたので。ゴースト退治には、ぜひルイスを警護として連れて行ってください。彼は魔力があり、多少の魔法を使えますから。きっとお役に立つでしょう」
ありがたい申し出だったので、快諾する。
その後は視察でどこへ行く予定かなどを話していたが、その話も終わり、部屋に戻ろうとすると。
「念のためで、アルベルト王太子の様子を見てもらえるか、聖女さま」
マルクスに声をかけられ、私はスノーを連れ、そのままアルベルトの部屋に向かった。
アルベルトの部屋は、この城の中で最高級の部屋のようだ。とにかく広く、眺望もよく、明るく、調度品も豪華。しかも部屋もいくつもあるようで、扉がいくつもあり、驚いてしまう。
そこで気が付く。
廃太子計画は寝室で実行となる。
でもこれだけ扉が多いと、どれが寝室か分からない。
だから。
「なるほど。これから視察に出るので、不調が出ないよう、現在の様子を確認してほしいと。そして不調の兆しがあれば、それを抑えるようにしてほしいということですね」
応接セットのソファに座り、改めてアルベルトの話を聞いた私は、用件の確認をした。
「はい。今日は馬車ではなく、馬で行くつもりなので、落馬は避けたいと思いまして」
「承知いたしました。それでは王太子さまがお使いの寝室に案内いただけますか? 聖なる力を使った際に、王太子さまが、意識を失う可能性もありますので」
アルベルトは快諾し、自身の三騎士を連れ、スノーと私と共に、寝室へと向かう。
この扉が寝室ね。
周囲にある調度品の位置、左から何番目、右から何番目の扉なのか、その位置を確認する。寝室に入ってからはベッドの位置、ベッドまで何歩の距離かも確認した。
すっかり計画遂行者モードだと、我ながら呆れる。
「では、ベッドに座ってください」
アルベルトをベッドに座らせ、スノーに確認する。
「どう、スノー? 不穏なオーラの状態は?」
「そうですね。昨日は左肩にしか不穏なオーラがなかったのですが、今は右肩にも広がってきています」
やはりゴーストではないので、聖女の言葉と光だけでは、一時的に退避させることしかできないのだろう。だが、昨日は全身を覆っていたが、今は両肩に広がっているぐらい。昨日と同じ要領でやることで、完全に消すことはできないだろうか……?
「王太子さま、それでは聖なる力を使います。眩しいと思うので、目を閉じていてくださいね」
十字架のついた杖を使い、聖女の祈りの言葉を口にした。
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