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44:聖女さま、お願いがあります
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二階へと続く階段の辺りに、長身で、光り輝くシルバーブロンドの髪が見える。毛皮のついた蒼いマントには、背中に王家の紋章が刺繍されている。
あれは、アルベルト……!
常に背筋が伸び、優雅な雰囲気を醸し出しているはずのアルベルトが、今は騎士に支えられ、階段をのぼっている。
え、具合が悪いの……?
気になるが、ミネルバは見当たらないし、勝手な行動はできない。仕方なくそのまま、まかない部屋に戻った。
「オリビアさま、あれが王太子さまですか?」
食事を再開させたスノーが、私に尋ねる。
「ええ、そうよ。なんだか元気がなかったわね。長旅で疲れたのかしら」
「ゴーストとは違う何かが、王太子さまに憑りついているように見えましたよ」
「!? スノー何か見えたの!?」
するとスノーは、コクリと頷く。
「なんというか、不穏なオーラみたいなものに、全身が包まれそうになっています」
「私には何も見えなかったわ……」
一体、アルベルトの身に何が起きているのだろう?
ゴーストとは違う何かって、何……?
しかも憑りついているって……。
それが具合の悪さの原因なのだろうか?
その時だった。
バタバタと足音がして、私達のいる部屋の扉が、突然開け放たれた。
「聖女さま、お願いがあります」
力強い声と共に部屋に飛び込んできたのは、乙女ゲー『戦う公爵令嬢』に登場する攻略対象の一人、三騎士の中の「槍の騎士」と言われるマルクス・アレマンだ!
三騎士というのは、王太子を守る三人の騎士で、剣の騎士・弓の騎士・槍の騎士がいる。それぞれの武器で国内一の腕前を持つと言われている。
槍の騎士であるマルクス・アレマンは庶民の出であるが、とにかく槍の腕が立つ。100メートル先にいたイノシシを、槍一本でしとめたことが認められ、見習い騎士になった。その後は槍以外の武器でも力を発揮し、王太子の三騎士の一人に抜擢された。
風貌はとにかくワイルド。ウルフヘアの髪はブルグレーで、瞳は金色。健康的な肌色で、全身にくまなく筋肉がつき、贅肉はゼロに等しい。身長も2メートルに届く高さで、体力もある。それなのになかなか肌を見せないので、ファンをヤキモキさせたキャラだ。
今もロイヤルブルーの軍服に、裏地はグレー、表はネイビーカラーのマントを羽織り、足元は茶色の革のロングブーツを履き、きっちり肌が隠されている。
そのマルクスが私の腕を掴み、懸命の表情で「今すぐ、アルベルト王太子を見て欲しい」という。
いきなりアルベルトと対面するという状況に、私は戸惑いながらも、とりあえず席を立ち、スノーを見る。するとマルクスがスノーに気づき、私に尋ねる。
「この子供は?」
「私の従者です。彼女にはゴーストが見える不思議な力があるので、一緒に連れて行きたいのですが」
「……よかろう」
マルクスはそのまま私の手をつかみ、部屋を出ると、一目散に階段をのぼっていく。
な、なんて速さ。
アルベルトがいるであろう部屋についた時、私は息が切れていた。
私の後ろでスノーも、ぜー、ぜー言っている。
「こっちだ」
そのままマルクスに腕をひかれ、向かったのは……。
浴室!?
……!
もう心臓が止まるかと思った。
まず目に飛び込んできたのは、三騎士の一人「剣の騎士」ミゲル・ロペス・フォルネーゼだ。
襟足の長い黄金色の髪、切れ長で澄んだムーングレイの瞳。透明感のある肌に鼻梁の通った鼻。潤いを感じさせる艶のある唇。
均整の取れた体は彫像のような美しさで、特に脚の長さが際立つ。
マルクスと同じ軍服を着ているが、裏地はグレーで表はシルバーホワイトのマントを羽織っている。
公爵家の次男であるが、家督を継ぐ予定がないことから武術を極め、騎士として研鑽を積んできた。特に剣の腕が立つことから、三騎士の花形・剣の騎士に抜擢された。
王道の騎士を行く容姿と性格のため、ファンの間では、「最も薔薇の背景が似合う攻略対象」と言われていた。
あれは、アルベルト……!
常に背筋が伸び、優雅な雰囲気を醸し出しているはずのアルベルトが、今は騎士に支えられ、階段をのぼっている。
え、具合が悪いの……?
気になるが、ミネルバは見当たらないし、勝手な行動はできない。仕方なくそのまま、まかない部屋に戻った。
「オリビアさま、あれが王太子さまですか?」
食事を再開させたスノーが、私に尋ねる。
「ええ、そうよ。なんだか元気がなかったわね。長旅で疲れたのかしら」
「ゴーストとは違う何かが、王太子さまに憑りついているように見えましたよ」
「!? スノー何か見えたの!?」
するとスノーは、コクリと頷く。
「なんというか、不穏なオーラみたいなものに、全身が包まれそうになっています」
「私には何も見えなかったわ……」
一体、アルベルトの身に何が起きているのだろう?
ゴーストとは違う何かって、何……?
しかも憑りついているって……。
それが具合の悪さの原因なのだろうか?
その時だった。
バタバタと足音がして、私達のいる部屋の扉が、突然開け放たれた。
「聖女さま、お願いがあります」
力強い声と共に部屋に飛び込んできたのは、乙女ゲー『戦う公爵令嬢』に登場する攻略対象の一人、三騎士の中の「槍の騎士」と言われるマルクス・アレマンだ!
三騎士というのは、王太子を守る三人の騎士で、剣の騎士・弓の騎士・槍の騎士がいる。それぞれの武器で国内一の腕前を持つと言われている。
槍の騎士であるマルクス・アレマンは庶民の出であるが、とにかく槍の腕が立つ。100メートル先にいたイノシシを、槍一本でしとめたことが認められ、見習い騎士になった。その後は槍以外の武器でも力を発揮し、王太子の三騎士の一人に抜擢された。
風貌はとにかくワイルド。ウルフヘアの髪はブルグレーで、瞳は金色。健康的な肌色で、全身にくまなく筋肉がつき、贅肉はゼロに等しい。身長も2メートルに届く高さで、体力もある。それなのになかなか肌を見せないので、ファンをヤキモキさせたキャラだ。
今もロイヤルブルーの軍服に、裏地はグレー、表はネイビーカラーのマントを羽織り、足元は茶色の革のロングブーツを履き、きっちり肌が隠されている。
そのマルクスが私の腕を掴み、懸命の表情で「今すぐ、アルベルト王太子を見て欲しい」という。
いきなりアルベルトと対面するという状況に、私は戸惑いながらも、とりあえず席を立ち、スノーを見る。するとマルクスがスノーに気づき、私に尋ねる。
「この子供は?」
「私の従者です。彼女にはゴーストが見える不思議な力があるので、一緒に連れて行きたいのですが」
「……よかろう」
マルクスはそのまま私の手をつかみ、部屋を出ると、一目散に階段をのぼっていく。
な、なんて速さ。
アルベルトがいるであろう部屋についた時、私は息が切れていた。
私の後ろでスノーも、ぜー、ぜー言っている。
「こっちだ」
そのままマルクスに腕をひかれ、向かったのは……。
浴室!?
……!
もう心臓が止まるかと思った。
まず目に飛び込んできたのは、三騎士の一人「剣の騎士」ミゲル・ロペス・フォルネーゼだ。
襟足の長い黄金色の髪、切れ長で澄んだムーングレイの瞳。透明感のある肌に鼻梁の通った鼻。潤いを感じさせる艶のある唇。
均整の取れた体は彫像のような美しさで、特に脚の長さが際立つ。
マルクスと同じ軍服を着ているが、裏地はグレーで表はシルバーホワイトのマントを羽織っている。
公爵家の次男であるが、家督を継ぐ予定がないことから武術を極め、騎士として研鑽を積んできた。特に剣の腕が立つことから、三騎士の花形・剣の騎士に抜擢された。
王道の騎士を行く容姿と性格のため、ファンの間では、「最も薔薇の背景が似合う攻略対象」と言われていた。
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