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43:実戦経験を積む
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そういう事情があるのか。
アズレークが沢山のゴーストを魔法で出してくれたので、練習は重ねていた。でも本物のゴーストを退治した経験は、まだない。ならば城でいきなり本物のゴーストの相手をするのではなく、ここで実戦経験を積むのは、いいことかもしれない。
「分かりました。お困りのようですし、私で力になれるなら、協力しましょう」
「ぜひ、お願いします!」
店の中に入り、持っていたトランクを預け、スノーと二人で店内の様子を探ることにする。
王族が利用するだけあり、店内は重厚な作りになっている。フロアに敷かれている真紅の絨毯はフカフカで、歩き心地がとてもいい。天井に飾られているシャンデリアも、城のホールを照らすような、豪華なものだ。テーブルに飾られている薔薇の花も美しく、椅子も立派で、格式が感じられる。
その時だった。
「オリビアさま、何かがいます!」
スノーが指さす方を見ると、一瞬、黒い影のようなものが見え、それが白いクロスの敷かれたテーブルの下に、隠れるように消えるのが見えた。
スノーと二人でそのテーブルに近づき、クロスを持ち上げると……。
テーブルの下の暗がりに、沢山の目があった。
ギョロギョロした目が一斉にこちらを見る。
い、いる、ただのゴーストではない。
モンスターゴーストだ。
私はすぐさま叫ぶ。
「聖杯よ、顕現せよ」
おへその下の紋章に魔力が集中し、熱を帯びている。
聖杯は無事、顕現した。
離れた場所にいるミネルバが、驚いてこちらを凝視している。
聖杯を手にすると、杖をスノーに預け、さらに魔法を唱える。
「聖杯に聖なる水を。遥かなるオケアノスよ、その水を杯に満たせ」
瞬時に聖杯に聖水……塩水が満たされる。
次の瞬間、クロスが風に揺れたようにはためくと……。
沢山の目を持つモンスターゴーストが、姿を現した。
テーブルの下に収まっていたのに、出てきたら、巨大!
こうなったら、聖杯ごと投げつけよう。
ということで、沢山の目を持つモンスターゴーストに向け、聖杯を投げつけると……。
効果覿面(こうかてきめん)だった。
まるで蒸発するように、その姿は瞬時に店内から消えた。
スノーが聖杯を素早く拾い、私に戻してくれた。
「聖女さま、今のは!? 何か巨大な靄のようなものが、うっすら見えたのですが」
ミネルバが顔を青ざめさせながら、私を見る。
「はい。モンスターゴーストでした。沢山の目を持つ、不気味な姿をしていました。でも今、退治しました。これで安心して王太子の一行を、迎えることができると思いますよ」
「そ、そうなのですね。聖女さま、ありがとうございます!」
喜んだミネルバは、御礼に御馳走したいと申し出てくれる。ありがたくその申し出受け入れ、昼食をいただくことにした。でも今日は、王太子の一行が貸し切りにしている。だから従業員がまかないを食べる部屋に、スノーと私を案内してくれた。案内されるとすぐに、料理がテーブルへと並べられる。
「オリビアさま、ゴースト退治をすると、美味しいものを食べられるのですね。スノーは今後、モンスター退治を、オリビアさまと生業にしたいです」
スノーはキッシュを頬張りながら、嬉しそうな顔をする。
「そうね。そんな風にできたらいいかもしれない」
でもそうなるには……アズレークに魔力を送ってもらわなければならない。
だがそれは無理な話で……。
修道院で主への祈りを深めたら、聖女になれたりするのだろうか?
そんなことを思いながら食事を続けていると、厨房の方がにわかに騒がしくなった。驚いて様子を見に行ってみると……。
アズレークが沢山のゴーストを魔法で出してくれたので、練習は重ねていた。でも本物のゴーストを退治した経験は、まだない。ならば城でいきなり本物のゴーストの相手をするのではなく、ここで実戦経験を積むのは、いいことかもしれない。
「分かりました。お困りのようですし、私で力になれるなら、協力しましょう」
「ぜひ、お願いします!」
店の中に入り、持っていたトランクを預け、スノーと二人で店内の様子を探ることにする。
王族が利用するだけあり、店内は重厚な作りになっている。フロアに敷かれている真紅の絨毯はフカフカで、歩き心地がとてもいい。天井に飾られているシャンデリアも、城のホールを照らすような、豪華なものだ。テーブルに飾られている薔薇の花も美しく、椅子も立派で、格式が感じられる。
その時だった。
「オリビアさま、何かがいます!」
スノーが指さす方を見ると、一瞬、黒い影のようなものが見え、それが白いクロスの敷かれたテーブルの下に、隠れるように消えるのが見えた。
スノーと二人でそのテーブルに近づき、クロスを持ち上げると……。
テーブルの下の暗がりに、沢山の目があった。
ギョロギョロした目が一斉にこちらを見る。
い、いる、ただのゴーストではない。
モンスターゴーストだ。
私はすぐさま叫ぶ。
「聖杯よ、顕現せよ」
おへその下の紋章に魔力が集中し、熱を帯びている。
聖杯は無事、顕現した。
離れた場所にいるミネルバが、驚いてこちらを凝視している。
聖杯を手にすると、杖をスノーに預け、さらに魔法を唱える。
「聖杯に聖なる水を。遥かなるオケアノスよ、その水を杯に満たせ」
瞬時に聖杯に聖水……塩水が満たされる。
次の瞬間、クロスが風に揺れたようにはためくと……。
沢山の目を持つモンスターゴーストが、姿を現した。
テーブルの下に収まっていたのに、出てきたら、巨大!
こうなったら、聖杯ごと投げつけよう。
ということで、沢山の目を持つモンスターゴーストに向け、聖杯を投げつけると……。
効果覿面(こうかてきめん)だった。
まるで蒸発するように、その姿は瞬時に店内から消えた。
スノーが聖杯を素早く拾い、私に戻してくれた。
「聖女さま、今のは!? 何か巨大な靄のようなものが、うっすら見えたのですが」
ミネルバが顔を青ざめさせながら、私を見る。
「はい。モンスターゴーストでした。沢山の目を持つ、不気味な姿をしていました。でも今、退治しました。これで安心して王太子の一行を、迎えることができると思いますよ」
「そ、そうなのですね。聖女さま、ありがとうございます!」
喜んだミネルバは、御礼に御馳走したいと申し出てくれる。ありがたくその申し出受け入れ、昼食をいただくことにした。でも今日は、王太子の一行が貸し切りにしている。だから従業員がまかないを食べる部屋に、スノーと私を案内してくれた。案内されるとすぐに、料理がテーブルへと並べられる。
「オリビアさま、ゴースト退治をすると、美味しいものを食べられるのですね。スノーは今後、モンスター退治を、オリビアさまと生業にしたいです」
スノーはキッシュを頬張りながら、嬉しそうな顔をする。
「そうね。そんな風にできたらいいかもしれない」
でもそうなるには……アズレークに魔力を送ってもらわなければならない。
だがそれは無理な話で……。
修道院で主への祈りを深めたら、聖女になれたりするのだろうか?
そんなことを思いながら食事を続けていると、厨房の方がにわかに騒がしくなった。驚いて様子を見に行ってみると……。
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