14 / 251
14:嬉しいのやら、恥ずかしいのやら。
しおりを挟む
翌日。
コタルディがもう一着あったので、それに着替えることにした。色は白で、両袖には金色の飾りボタンがついている。腰のリボンは金色で、裾には金糸の刺繍もある。
悪役令嬢パトリシアは、女性らしい体型をしている。だからシンプルなこのコタルディを着ても、様(さま)になっていた。むしろ体のラインがくっきりでるので、どうかなと思ったが……。とりあえずこの姿で朝食をとるために、部屋を出た。
部屋には既にアズレークがいたが、昨日同様の黒シャツに黒ズボンという姿だ。ただ、昨日と違い、シャツのボタンがいくつか開いており、少し髪も乱れている。
どうやら朝から武術の訓練を、行っていたようだ。
「おはよう、パトリシア」
「おはようございます、アズレークさま」
当たり前のように挨拶を交わした時。
アズレークの黒曜石を思わせる瞳に、一瞬熱がこもったような気がしたが……。
そんなわけはないだろう。気のせいだ。
食事が始まるとアズレークは、今日の予定を説明した。午前中は聖女としての座学(聖女について学ぶことになるとは思わなかった……)、午後は実際に魔力を使った魔法の発動を試すことになった。
朝食を終えると、まずは私に魔力を送りこむところからスタートした。昨日と同様で、カウチソファに横になり、口から魔力を送りこまれる。
相変わらず口の中も喉も、そして全身が熱くなった。
ただ、魔力の定着は順調なようで、15分ぐらい休んでいると、熱さによる火照りも収まった。アズレークはその15分の間、前回同様、ヒンヤリとした両手で、私の頬を包み込んでくれる。
この魔力を送りこまれる時間は、本当に私にとって不思議な時間だ。
前世で恋愛経験もなかったから、キスもしたことがない。それに魔力を送りこまれる時、唇を重ねるわけではない。というかそもそもこれは、キスではないのだが……。
心臓はドキドキするし、全身は熱くなるし、特におへその下辺りが痺れるようにジンジンする。私としては、まるでキスをしているかのような気持ちになってしまう。
しかも頬の火照りを冷ますため、魔力を送りこんだ後、両手で頬を包んでくれるのだが……。これもなんだか恋人同士がすることのように思え、頬はヒンヤリしているのに、心臓はさらに高鳴り、血流がよくなっているように感じてしまう。
これがこの屋敷に滞在中、毎日続くのかと思うと……。
嬉しいのやら、恥ずかしいのやら。
そう浮足立っていたが、聖女について学ぶことになると、そんな思いは吹き飛んだ。
修道女として一年を過ごしていたので、主への祈りや言葉など、基本はマスターしていた。でも聖女とは……とか、聖女らしいふるまいとか、聖女独特の祈りの手法があるとか、知らないことが多かった。
何よりそれらをマスターし、教えることができるアズレークに舌を巻いた。魔法も使え、体も鍛え、博学。それでいて私の暗殺を請け負った刺客。
不思議な人物だ。
昼食を終えると、いよいよ聖女らしく、聖なる力を使った(と言いつつ魔力を使うのだけど)魔法の実践となった。
コタルディがもう一着あったので、それに着替えることにした。色は白で、両袖には金色の飾りボタンがついている。腰のリボンは金色で、裾には金糸の刺繍もある。
悪役令嬢パトリシアは、女性らしい体型をしている。だからシンプルなこのコタルディを着ても、様(さま)になっていた。むしろ体のラインがくっきりでるので、どうかなと思ったが……。とりあえずこの姿で朝食をとるために、部屋を出た。
部屋には既にアズレークがいたが、昨日同様の黒シャツに黒ズボンという姿だ。ただ、昨日と違い、シャツのボタンがいくつか開いており、少し髪も乱れている。
どうやら朝から武術の訓練を、行っていたようだ。
「おはよう、パトリシア」
「おはようございます、アズレークさま」
当たり前のように挨拶を交わした時。
アズレークの黒曜石を思わせる瞳に、一瞬熱がこもったような気がしたが……。
そんなわけはないだろう。気のせいだ。
食事が始まるとアズレークは、今日の予定を説明した。午前中は聖女としての座学(聖女について学ぶことになるとは思わなかった……)、午後は実際に魔力を使った魔法の発動を試すことになった。
朝食を終えると、まずは私に魔力を送りこむところからスタートした。昨日と同様で、カウチソファに横になり、口から魔力を送りこまれる。
相変わらず口の中も喉も、そして全身が熱くなった。
ただ、魔力の定着は順調なようで、15分ぐらい休んでいると、熱さによる火照りも収まった。アズレークはその15分の間、前回同様、ヒンヤリとした両手で、私の頬を包み込んでくれる。
この魔力を送りこまれる時間は、本当に私にとって不思議な時間だ。
前世で恋愛経験もなかったから、キスもしたことがない。それに魔力を送りこまれる時、唇を重ねるわけではない。というかそもそもこれは、キスではないのだが……。
心臓はドキドキするし、全身は熱くなるし、特におへその下辺りが痺れるようにジンジンする。私としては、まるでキスをしているかのような気持ちになってしまう。
しかも頬の火照りを冷ますため、魔力を送りこんだ後、両手で頬を包んでくれるのだが……。これもなんだか恋人同士がすることのように思え、頬はヒンヤリしているのに、心臓はさらに高鳴り、血流がよくなっているように感じてしまう。
これがこの屋敷に滞在中、毎日続くのかと思うと……。
嬉しいのやら、恥ずかしいのやら。
そう浮足立っていたが、聖女について学ぶことになると、そんな思いは吹き飛んだ。
修道女として一年を過ごしていたので、主への祈りや言葉など、基本はマスターしていた。でも聖女とは……とか、聖女らしいふるまいとか、聖女独特の祈りの手法があるとか、知らないことが多かった。
何よりそれらをマスターし、教えることができるアズレークに舌を巻いた。魔法も使え、体も鍛え、博学。それでいて私の暗殺を請け負った刺客。
不思議な人物だ。
昼食を終えると、いよいよ聖女らしく、聖なる力を使った(と言いつつ魔力を使うのだけど)魔法の実践となった。
応援ありがとうございます!
5
お気に入りに追加
2,198
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる