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身代わりの罠
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「おい! こいつはブライトナーの嫁じゃねえぞ!」
「なにッ!? 貴様、何者だ!」
「クソッ、やられたか……。こいつは替え玉だ」
男たちは焦れたが、こうなってしまった以上仕方がない。
「クラウス・ブライトナーの件は諦めるしかねえな。おちおちしていれば追手が来る!」
「畜生! とんだ煮湯を飲まされたもんだ!」
「だが、代わりと言っちゃなんだが、この女が残った。せめて楽しませてもらおうじゃねえか」
ニヤニヤと下卑た笑いを見せると、男たちはメビィを車に押し込めんと担ぎ上げた。
「偽物だがなかなかにイイ女だ。こいつぁいい思いができそうだ」
「俺たちで可愛がってやるからよ!」
『嫌ぁー! 離してッ!』
叫べども猿ぐつわのせいで声にならない。放り投げられる勢いで車へと連れ込まれた、その時だった。駐車場の入り口から一人の男が走って来るのに気が付いた犯人たちが焦燥感に『チッ!』と舌打ちをした。
「クソッ! 追手か」
「車を出せ!」
慌てて発車させようにも運転手含め四人の男が乗り込むには多少のタイムロスが生じる。仕方なく扉を開いたままで急発進した。
「チッ! クラウス・ブライトナーの方に気を取られて、こっちは手薄だと思ったのによ……」
「しかも掻っ攫ってきたのが替え玉だ! ついてねえったら!」
車は猛スピードで駐車場の床に凄まじい摩擦音を轟かせている。
「構わねえ! 轢いちまえ! ここで捕まったら俺たちゃ終えだ!」
男たちは本気のようだ。
「は、舐めんじゃねえ」
ニヤっと口角を上げながら、向かってくる車のボンネットを踏み台にして軽々空へと舞い上がり――
「なにッ!?」
気付いた時には鈍い音と共に車が方向を失って急停止。なんと後ろ二輪のタイヤが見事にパンクさせられていたのだ。
「クソッ、何者だ!?」
「着物姿だったぞ! まさか例の余興の剣士か!?」
車の陰に隠れて姿は見えないが、後輪が両方ともパンクしては走り去ることもできずに、こうなったら降車して対戦するしか術はない。
「相手はたった一人だ! 急いで片付けろ!」
「この際、殺っちまっても構わねえ!」
男たちはメビィを座席に残したまま全員で外へ出た。と、身構える暇もなく、闇夜の駐車場に鈍色に光る長い刃が突如目の前に現れて、
「ギャアーッ!」
「ウヘァ……!」
とてつもない叫び声と同時にものの見事にその場へと沈められてしまった。男たちにとっては自分たちに襲い掛かってきたものが何かも分からないくらいの早技といえようか――ほんの一瞬で辺りは静けさを取り戻したのだった。
「なにッ!? 貴様、何者だ!」
「クソッ、やられたか……。こいつは替え玉だ」
男たちは焦れたが、こうなってしまった以上仕方がない。
「クラウス・ブライトナーの件は諦めるしかねえな。おちおちしていれば追手が来る!」
「畜生! とんだ煮湯を飲まされたもんだ!」
「だが、代わりと言っちゃなんだが、この女が残った。せめて楽しませてもらおうじゃねえか」
ニヤニヤと下卑た笑いを見せると、男たちはメビィを車に押し込めんと担ぎ上げた。
「偽物だがなかなかにイイ女だ。こいつぁいい思いができそうだ」
「俺たちで可愛がってやるからよ!」
『嫌ぁー! 離してッ!』
叫べども猿ぐつわのせいで声にならない。放り投げられる勢いで車へと連れ込まれた、その時だった。駐車場の入り口から一人の男が走って来るのに気が付いた犯人たちが焦燥感に『チッ!』と舌打ちをした。
「クソッ! 追手か」
「車を出せ!」
慌てて発車させようにも運転手含め四人の男が乗り込むには多少のタイムロスが生じる。仕方なく扉を開いたままで急発進した。
「チッ! クラウス・ブライトナーの方に気を取られて、こっちは手薄だと思ったのによ……」
「しかも掻っ攫ってきたのが替え玉だ! ついてねえったら!」
車は猛スピードで駐車場の床に凄まじい摩擦音を轟かせている。
「構わねえ! 轢いちまえ! ここで捕まったら俺たちゃ終えだ!」
男たちは本気のようだ。
「は、舐めんじゃねえ」
ニヤっと口角を上げながら、向かってくる車のボンネットを踏み台にして軽々空へと舞い上がり――
「なにッ!?」
気付いた時には鈍い音と共に車が方向を失って急停止。なんと後ろ二輪のタイヤが見事にパンクさせられていたのだ。
「クソッ、何者だ!?」
「着物姿だったぞ! まさか例の余興の剣士か!?」
車の陰に隠れて姿は見えないが、後輪が両方ともパンクしては走り去ることもできずに、こうなったら降車して対戦するしか術はない。
「相手はたった一人だ! 急いで片付けろ!」
「この際、殺っちまっても構わねえ!」
男たちはメビィを座席に残したまま全員で外へ出た。と、身構える暇もなく、闇夜の駐車場に鈍色に光る長い刃が突如目の前に現れて、
「ギャアーッ!」
「ウヘァ……!」
とてつもない叫び声と同時にものの見事にその場へと沈められてしまった。男たちにとっては自分たちに襲い掛かってきたものが何かも分からないくらいの早技といえようか――ほんの一瞬で辺りは静けさを取り戻したのだった。
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