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身代わりの罠
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すぐに後部座席へと向かい、女の無事を確かめる。
「お! 良かった。無事だな」
――――!?
「あなた……」
座席の上で猿ぐつわを外されたメビィは、驚きに瞳を見開いた。なんと男は鐘崎の伴侶である紫月だったからだ。
「……どうしてあなたが」
「アンタが連れ去られるところを目にしたんでね。それより怪我はねえか?」
「……どうして……ウチのチームは何処?」
「さあ? アンタのお仲間は行方を見失っちまったのかもな」
「……どうしてアタシを……?」
アタシはあなたから鐘崎遼二を奪おうと企んだ女よ? それなのに何故助けたりするの?
元々メビィの警護に鐘崎組は携わらないと言われていたのにどうしてと、女は戸惑い顔でいる。
「どうしてもこうしてもねえ。気がついた者が仲間を助けるのは当たり前だろうが」
ニッと笑いながら言う紫月の笑顔があまりにも爽やかで、メビィは言葉を失ってしまった。
「仲間って……あなた、アタシを恨んでないの……? アタシはあなたたちを嵌めた女よ? あなたのご主人である遼二さんを……奪い取ろうとした女よ?」
そんな相手を助けに来るなど理解できないといった表情でいる。
「ま、正直あんな写真をバラ撒かれたことは歓迎できねえけどな。それとこれとは別だろ? 俺たちは今、クラウス・ブライトナーを守るっていう同じ任務を背負った仲間だ。その仲間に何かあれば協力すんのは当然だべ?」
「あ……なた……」
「ほれ、突っ立ってねえで行くぜ! あいつらが意識を取り戻す前にしっかりお縄をくれなきゃいけねえ。アンタのチームも心配してるはずだ」
峰打ちで倒した男たちを見やる紫月に手を取られてメビィは堪え切れずにみるみると瞳に涙を浮かべた。
「どう……してそんなふうにしてくれるの? こんな……こんな女に……あなたは何故……」
今頃になって手篭めにされ掛かった恐怖が実感となって身体が震え出す。もしもこの紫月が助けに駆け付けてくれなかったらと思うと、確実に被害に遭っていただろう想像が頭の中に浮かんできてはガタガタと膝が笑い出す。情けなさと恐怖とですっかり涙を抑えることもできずに、メビィはしゃくり上げるようにして泣き出してしまった。
「おいおい……どうした。どっか痛めたか?」
見たところ外傷らしきは見当たらないが、もしかしたら腹などを殴られたりして怪我でも負ったのかと思い、そう訊いた。
「……っう……違……うの、もしあなたが来てくれなかったらアタシ……あの人たちに……」
肩を縮めて全身を震わせる。その様子で、怪我からくる痛みではないと悟った。今になって緊張の糸が切れて、それと同時に恐怖心が襲ってきたのかも知れない。そう思った紫月は穏やかな口調で言った。
「――そっか。怖かったよな。だがもう大丈夫だ」
彼女を怖がらせないようにと気遣いながらそっと頭を撫でる。
「お! 良かった。無事だな」
――――!?
「あなた……」
座席の上で猿ぐつわを外されたメビィは、驚きに瞳を見開いた。なんと男は鐘崎の伴侶である紫月だったからだ。
「……どうしてあなたが」
「アンタが連れ去られるところを目にしたんでね。それより怪我はねえか?」
「……どうして……ウチのチームは何処?」
「さあ? アンタのお仲間は行方を見失っちまったのかもな」
「……どうしてアタシを……?」
アタシはあなたから鐘崎遼二を奪おうと企んだ女よ? それなのに何故助けたりするの?
元々メビィの警護に鐘崎組は携わらないと言われていたのにどうしてと、女は戸惑い顔でいる。
「どうしてもこうしてもねえ。気がついた者が仲間を助けるのは当たり前だろうが」
ニッと笑いながら言う紫月の笑顔があまりにも爽やかで、メビィは言葉を失ってしまった。
「仲間って……あなた、アタシを恨んでないの……? アタシはあなたたちを嵌めた女よ? あなたのご主人である遼二さんを……奪い取ろうとした女よ?」
そんな相手を助けに来るなど理解できないといった表情でいる。
「ま、正直あんな写真をバラ撒かれたことは歓迎できねえけどな。それとこれとは別だろ? 俺たちは今、クラウス・ブライトナーを守るっていう同じ任務を背負った仲間だ。その仲間に何かあれば協力すんのは当然だべ?」
「あ……なた……」
「ほれ、突っ立ってねえで行くぜ! あいつらが意識を取り戻す前にしっかりお縄をくれなきゃいけねえ。アンタのチームも心配してるはずだ」
峰打ちで倒した男たちを見やる紫月に手を取られてメビィは堪え切れずにみるみると瞳に涙を浮かべた。
「どう……してそんなふうにしてくれるの? こんな……こんな女に……あなたは何故……」
今頃になって手篭めにされ掛かった恐怖が実感となって身体が震え出す。もしもこの紫月が助けに駆け付けてくれなかったらと思うと、確実に被害に遭っていただろう想像が頭の中に浮かんできてはガタガタと膝が笑い出す。情けなさと恐怖とですっかり涙を抑えることもできずに、メビィはしゃくり上げるようにして泣き出してしまった。
「おいおい……どうした。どっか痛めたか?」
見たところ外傷らしきは見当たらないが、もしかしたら腹などを殴られたりして怪我でも負ったのかと思い、そう訊いた。
「……っう……違……うの、もしあなたが来てくれなかったらアタシ……あの人たちに……」
肩を縮めて全身を震わせる。その様子で、怪我からくる痛みではないと悟った。今になって緊張の糸が切れて、それと同時に恐怖心が襲ってきたのかも知れない。そう思った紫月は穏やかな口調で言った。
「――そっか。怖かったよな。だがもう大丈夫だ」
彼女を怖がらせないようにと気遣いながらそっと頭を撫でる。
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