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謀反
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一方、香港で調査に当たっていた周隼と僚一らは、とあるバーのバーテンダーから気になる情報に辿り着いたところだった。羅がよく顔を出していたというバーで聞き込みを行っていた時のことだ。
「ええ……確かにこのお客様です。あの夜はお二人でお見えになられていまして、ファミリーを抜けて新しい組織を立ち上げるとかなんとか話しておられました。はっきり聞き取れたわけではありませんが、鉱山がどうのとおっしゃっていらした様な……」
本来であれば易々と客の秘密をバラすようなことは絶対にしないバーテンダーではあるが、やって来たのは香港を仕切るマフィアの頭領本人だ。話の向きからしても明らかに犯罪であると思われることから、見聞きした知り得る限りのことを打ち明けてくれたのだった。
羅と舎弟の顔写真を見せて確認したところ、バーテンダーはその二人で間違いないと証言した。
「鉱山というと、例の鉱山のことか? ヤツらの目的は掘り出した原石ってことか……」
だとすればかなり大掛かりな計画だ。人員もさることながら運搬の車両も必要となってくることだろう。まあ運搬中の車両ごと奪取するというだけなら不可能ではないか。
「なるほど……。それで焔を拉致したというわけか。あそこへは周一族の者が直接出向かない限り麓の村にすら入れないことになっている。奴らはそれを知っていてDAを盛ったってことか……。記憶を奪い、鉱山の視察に行くなどと上手いこと吹き込んで焔を鍵に使うつもりだろう」
僚一はすぐに隼らと共に鉱山へと向かうことにした。
同じ頃、汐留の冰らのところにも驚くような情報が舞い込んできていた。至急伝えたいことがあるとマカオの張敏が冰宛てに連絡をしてきたのだ。
リモートで繋ぎながら鐘崎らと共に張と対面で会話する。
『雪吹君、実はちょっと気になる情報を耳にしてね。以前キミのご主人たちを拉致したロナルド・コックスを覚えているかね?』
「ロナルド……ああ、もしかしてロンさんのことですか?」
『そうだ。今はキミのお父上の頭領・周から例の鉱山で三年間の労働を言いつかったロンだ。そのロンがどうしてもキミに連絡を取りたいと言って、知人を通して私のところへ連絡が来たわけだ』
知人というのは鉱山での拉致事件の時に協力してくれた地元マカオの裏社会を仕切るボスの男である。確かロンと彼とは幼馴染であったはずだ。
『実はキミのご主人の周焔さんが鉱山に視察にやって来たそうなんだが、ロンの話では以前とはまるで別人のようで、様子がおかしかったと言うんだ。ロンがキミのことを気に掛けて、姐さんはお元気ですかと声を掛けたらしいんだが、まるで無反応だったようでね。ロンの顔も覚えていないようで、なにより全く覇気が感じられないし、言い方は悪いが生気のない蝋人形のようだったと言うんだ』
第一、周一族が視察にやって来るなどという予定自体なかったのだが、突然数人で現れて視察がしたいと言ったそうだ。周の周りには側近らしき男たちが数人ついていたそうだが、その誰もが初めて見る顔ぶれの上、あまり愛想もなく高飛車な態度だったようで、どうにも怪しいと思ったロンが冰に知らせた方がいいのではと、マカオの幼馴染に連絡してよこしたということだった。
「ええ……確かにこのお客様です。あの夜はお二人でお見えになられていまして、ファミリーを抜けて新しい組織を立ち上げるとかなんとか話しておられました。はっきり聞き取れたわけではありませんが、鉱山がどうのとおっしゃっていらした様な……」
本来であれば易々と客の秘密をバラすようなことは絶対にしないバーテンダーではあるが、やって来たのは香港を仕切るマフィアの頭領本人だ。話の向きからしても明らかに犯罪であると思われることから、見聞きした知り得る限りのことを打ち明けてくれたのだった。
羅と舎弟の顔写真を見せて確認したところ、バーテンダーはその二人で間違いないと証言した。
「鉱山というと、例の鉱山のことか? ヤツらの目的は掘り出した原石ってことか……」
だとすればかなり大掛かりな計画だ。人員もさることながら運搬の車両も必要となってくることだろう。まあ運搬中の車両ごと奪取するというだけなら不可能ではないか。
「なるほど……。それで焔を拉致したというわけか。あそこへは周一族の者が直接出向かない限り麓の村にすら入れないことになっている。奴らはそれを知っていてDAを盛ったってことか……。記憶を奪い、鉱山の視察に行くなどと上手いこと吹き込んで焔を鍵に使うつもりだろう」
僚一はすぐに隼らと共に鉱山へと向かうことにした。
同じ頃、汐留の冰らのところにも驚くような情報が舞い込んできていた。至急伝えたいことがあるとマカオの張敏が冰宛てに連絡をしてきたのだ。
リモートで繋ぎながら鐘崎らと共に張と対面で会話する。
『雪吹君、実はちょっと気になる情報を耳にしてね。以前キミのご主人たちを拉致したロナルド・コックスを覚えているかね?』
「ロナルド……ああ、もしかしてロンさんのことですか?」
『そうだ。今はキミのお父上の頭領・周から例の鉱山で三年間の労働を言いつかったロンだ。そのロンがどうしてもキミに連絡を取りたいと言って、知人を通して私のところへ連絡が来たわけだ』
知人というのは鉱山での拉致事件の時に協力してくれた地元マカオの裏社会を仕切るボスの男である。確かロンと彼とは幼馴染であったはずだ。
『実はキミのご主人の周焔さんが鉱山に視察にやって来たそうなんだが、ロンの話では以前とはまるで別人のようで、様子がおかしかったと言うんだ。ロンがキミのことを気に掛けて、姐さんはお元気ですかと声を掛けたらしいんだが、まるで無反応だったようでね。ロンの顔も覚えていないようで、なにより全く覇気が感じられないし、言い方は悪いが生気のない蝋人形のようだったと言うんだ』
第一、周一族が視察にやって来るなどという予定自体なかったのだが、突然数人で現れて視察がしたいと言ったそうだ。周の周りには側近らしき男たちが数人ついていたそうだが、その誰もが初めて見る顔ぶれの上、あまり愛想もなく高飛車な態度だったようで、どうにも怪しいと思ったロンが冰に知らせた方がいいのではと、マカオの幼馴染に連絡してよこしたということだった。
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