極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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「そうでしたか。張さん、ありがとうございます!」
 周の様子がおかしかったのはDAという薬物を食らったせいだろう。覇気がなかったというし、おそらく記憶が曖昧になり、ロンのことを覚えていなかったのもうなずける。羅辰たちはまんまと周を使って鉱山に潜り込んだというわけだ。
『ロンの話では現地の採掘公たちは全て外へ追い出されて、現在は立ち入りさえ禁じられているようでね。こんなことは初めてだと皆戸惑っているそうだよ。鉱山の坑道には周焔さんと側近の者たちだけが入って行かれて、採掘自体が休止状態になっているそうだ』
「追い出されてって……どうしてそんな。視察というなら現地のロンさんたちの案内がないと困るでしょうに……」
「つまり、ヤツらの狙いは掘り出された原石を奪うことか……」
 横から鐘崎が口を挟む。
「そんな……!」
 その推測に冰は驚き、大きく瞳を見開いた。ちょうどその時だった。香港の僚一からも連絡が入り、たった今、張から聞いたのと同じ内容が語られた。
「冰、すぐに鉱山へ飛ぶぞ! 氷川は間違いなくそこだ」
「鐘崎さん……。はい! すぐに支度をします!」
 羅辰の目的が鉱山にあると確信した一同は、急ぎ現地に向かうことにしたのだった。



◇    ◇    ◇



 中国南部、鉱山――。

「姐さんー! 姐さん! お久しぶりです!」
 冰らが麓の村に着くとロナルドことロンが待っていて駆け寄って来た。すっかり鉱山での生活にも慣れ、たいそう真面目にやっているようで、現場でも責任のある地位に抜擢されているらしく、冰はもちろんのこと鐘崎らもひどく驚かされてしまった。
「ロンさん! お元気そうでなによりです! この度はご連絡くださってありがとうございます!」
「いえ、まさかこんなにすぐ来ていただけるとは!」
 一通りの挨拶を終えるとロンが心配そうな顔つきで現状を報告してきた。
「早速ですが、実は先週から降り続いている雨の影響でここいら一帯も地盤が緩んでおりまして。俺たちは採掘場から追い出されちまったんで中の様子が分からないんですが、この調子だと落盤などの危険性もあって心配してたとこなんです」
 既に雨は上がっていたが、冰らが到着する直前までは結構な勢いで降り続いていたという。本来ならば早く様子を見に行きたいところなのだが、周と共にやって来た男たちにしばらくは現場に近寄るなと言われていて、どうしたものかと思っていたそうだ。
「周はその人たちと一緒に鉱山に入って行ったわけですね?」
「はい。ですがご主人は格好からして普通のスーツ姿でしたし、あれじゃ坑道を歩くだけでもたいへんなんじゃねえかと」
「ロンさんのことも覚えていなかったんですよね?」
「ええ、こんな言い方したら失礼ですが、なんだかボーッとしてて、前に見た時とは別人ってくらい雰囲気が変わっちゃっててね」
 おそらくは薬物のせいだろう。例のDAを盛られたのは間違いなさそうだ。
「そうですか……。ロンさん、すぐに助けに行きたいと思うんですが、ご案内をお願いできますか?」
 落盤の危険性もあるというし、一刻も早く救出に向かうべきだろう。だが、相手は羅辰たちだ。武器を持っていないとも限らない。
 鉱山のことなど何も分かっていない素人の彼らだけで中に入って行ったこと自体が既に驚愕なのだ。救出に向かうにしても相応の準備が必要不可欠である。どうしたものかと思っていた矢先、香港から周隼と僚一らが到着した。
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