極道恋事情

一園木蓮

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厄介な依頼人

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 組員たちの住居は、この広大な邸を取り囲むように点在している。つまり、いつ何時、何が起こっても即対応できるようになっているのである。
 プライバシーという面では組員たちにとって有るような無いような状態だが、鐘崎組の一員となる時点でそういったことはすべて了承済みで、誰一人不満を言う者などはいない。組員としての自覚と誇りを持っている者たち故であった。
 清水が繭を通せと言った応接室は、いわば表向きの客専用で、例え組事務所であっても容易には建物内部の構造すら見せない鋼の警備体制といえた。裏を返せば、扱う案件がそれだけ機密事項であるということだ。
「偶然とはいえ、若と姐さんが居ない時でよかったな。この時間ならまだ当分はお帰りにならないだろう」
 手元の時計を確認しながらそう独りごちる。広い邸を足早に駆け抜け、清水は組の第一砦とも称すべき応接室へと向かったのだった。

 その頃、鐘崎と紫月は汐留にある周焔と冰の社を訪れていた。いつものように四人で落ち合い、ウィンドーショッピングなどを楽しんでから、今日は鐘崎の家で晩飯を共にする計画を立てていたのだ。季節は真夏、組の若い衆らの労いも兼ねて毎年行なっている納涼イベントに、今年は周らも呼んで中庭でバーベキューと洒落込もうというわけである。
「さて……と! 買い物も一通り見終わったなぁ。夕方までどっかで茶でもする? それともちょっと早えけどウチに行くか? 納涼会の支度ができるまで冰君たちの披露目ン時の写真とか見て過ごしてもいいしさ!」
 紫月が気持ち良さそうに伸びをしながらそう言うと、冰も期待顔でうなずいた。
「そうですね! バーベキューセットの組み立てとか、俺たちでお手伝いできることもあると思いますし」
「冰君、いつもお気遣いサンキュなぁ! まあ、支度は若いヤツらがやってくれてっと思うけど、庭に出ればシェパードたちと遊ぶこともできるぞー!」
「わぁ! いいですね! ワンちゃんたちとも久々ですし!」
 毎度ながら嫁同士仲のいいことである。
「まあ、週末の夕方だ。道も混み始めるだろうし、早めに帰るか」
「それがいい。冰の言うように俺らもご馳走になるんだし、何も手伝わんじゃ申し訳ねえしな」
 鐘崎と周の旦那衆もそう言うので、四人はこのまま帰ることとなった。
 組では例のご令嬢と鉢合わせることがないようにと、幹部の清水がハラハラと時計を気にしていたのだが、当人たちにしてみればそんなことは知る由もない。予定していたよりも早く鐘崎邸へ戻ることに決めてしまったのだった。



◇    ◇    ◇


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