召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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復讐の旅、開始!

27.復讐の覚悟はしている

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 体は軽く感じるのに疲れが取れてない気がする。そんな感覚で目が覚めると既に朝になっていた。ここ、どこだ?
 中央に置かれた大きな天蓋付きのベッド。横になったまま部屋を見渡すと、右は窓と棚とドアがあり、左は鏡台と棚とドアがある。ゆっくりと体を起こすと、目の前にはテーブルとソファー、そして一番大きなドア。鏡台の上に掛かっている時計を見る感じ、まだ夜明け直後だ。



 何があったんだっけ。…そうだ、ルーカス(通称ルカ)って男娼に色々仕込まれて、授業代として精液を求められて搾り取られたんだっけ。はぁ…尻と腰に違和感。

 で、ここどこだ?


 とりあえず起きたけど、流石にパンイチでいるのもアレだし服を探した。
 鏡台の方にあるドアを開けるとそこはバスルームで、よく見ると入り口近くにびしょびしょの俺の服が掛けられている。洗って乾かしてる様だ。これは着れないな。
 窓の方にあるドアにも行ってみた。そこはどうやらウォークインクローゼットのようだ。色々な服が掛けられてるが、どれも布面積が少ない。

 参ったな…俺の着替えはグルーが持ったままだ。自分の服くらい俺の方のアイテムボックスに入れておけばよかった。仕方ないからベッドに戻って布団を被った。





 しばらく大人しくしてると、ヴィンスが部屋に着た。

「起きたか?グルージアに頼まれて着替え持ってきたぞ」
「…ヴィンス、ありがとう」
「ん?どうした、具合悪いか?」

 全然元気だけど具合悪そうに見えるか?寝起きだから弱々しく見えたのだろうか。
 とりあえずベッドまで運ばれた服に着替えるためにベッドから降りた。いつも通りのシャツとスラックスだが、獣人の国で買ったコートは洗濯して干してある。

「いや、大丈夫だ。ところでここはどこだ?」
「お前が連れ込まれた男娼館の部屋を借りてるんだ。グルージアはルーカスってやつに説教中。なんか『ヤトに身体的奉仕をさせる気は無い、余計な事をするな』って怒ってたぜ」

 そう言ったヴィンスの顔は血の気が引いていた。やっぱり怒ってるグルーは怖かったんだろうな。俺だってたまに怖い。ヴィンスの方が強面なのに雰囲気はグルーの方が怖いって、ちょっと不思議というか…『怒らせてはいけない人』って感じがするな。


 でも…俺に『身体的奉仕をさせる気は無い』か……。じゃあ俺、他に何が出来るんだろう。

 戦いは教えてもらって上達はしてるかもしれないけどグルーの方がやっぱり経験の差があって強いし、野宿の時も大した手伝いはしてないし、俺の服も食べる物もグルーが金を出している。
 これじゃあ、俺はグルーに協力するどころか足手纏いだ。せめてヴィンスみたいに戦いとか野宿の経験があれば、もっと力になれたのかもしれないのに。力も経験も知恵も立場も俺は不足してる。

 このままだと、その内ヴィンスにも迷惑をかける。ただでさえ昨日は背中に乗せてもらっていたし、きっとこれから他にも迷惑をかけることになりそうだ。

 俺達の目標が『復讐』である以上は戦える様になるのは最低限の事だ。このまま経験を積んでいけば俺も力になれるかもしれない。でもそれ以外俺は何も出来ていない!



 コンコンコン、とノックの音が聞こえてグルーが部屋に入った。怒ってるような、苦しそうな顔をしている。

「目が覚めたようですね。お体の調子は?」
「だ、大丈夫、何ともない……」
「ロープや錠で強く固定されていたのに?……嘘は吐かないで下さい」

 本当にもう痛みは無くなってる。跡だってほとんど消えてるし、嘘は言ってない。
 でも、一度心配させたら『大丈夫』なんて言葉は信じてもらえないってよく知ってる。俺も、異世界むこうで何度も喧嘩をしてはしょっちゅう入院をした。縫ったり検査入院したり、その度に心配を掛けては入院代を無駄に使った。

 迷惑を、心配を掛けるって分かっていても俺は変われなかった。

「心配なのは俺の方だ…。俺、このままだと足手纏いで復讐の邪魔になるんじゃ無いかって心配で…」
「そんな心配は無駄です」
「無駄なんて言うな!今まで俺は復讐のため、グルーのため、ヴィンスのために何も出来ていない!それが現状だ!」

 みんな俺のことを過剰に評価してる。俺が無理を通そうとすれば『優しさ』なんて捉えて、戦い慣れてない人間にしては強いからこれからもっと強くなるって期待して…。俺は『強いから逃げない』んじゃなくて、『弱いから逃げることも出来ない』だけなのに。

「俺に使えるものなんて『多少優れた顔』と『壊れてもすぐ治る体』くらいだ。なのにそれすら使わせては…使ってはくれないのか?」
「そんなこと言わないでくださ………」


「ヤト、テメェ…歯ァ食いしばれ」


 グルーの言葉を遮って、ヴィンスは拳を振り上げた。殴られると頭では理解していても受け身が取れなかった俺は直撃を覚悟した。

 でも、その拳は俺の目の前で止まった。その代わりにヴィンスは俺の胸ぐらを掴み、俺の体が僅かに浮くくらい思い切り引っ張った。


「自分の身すら守れねぇヤツが『復讐』なんて語ンじゃ無ぇ!確かに自分も他人も使えるモン全部使ってまで足掻くヤツが強ェけどなぁ、自分の使い方間違えて使い物にならなくなるまですり減らすバカは全部まとめて『弱者』だろうが!」
「なっ…!だが使える物すら使わず何もしないのは『弱者』以前に『愚者』だろ!愚か者でいるくらいなら弱い方がまだマシだ!」

「だから『マシ』なんて考えが『愚か』だっつってんだ!テメェの復讐心がその程度ならすんじゃねぇ!復讐は自分が『奪う』立場になる覚悟があって初めて語っていいレベルのデカいことなんだよ!」


 その程度…なんかじゃない。そんな中途半端な気持ちで復讐しようなんて思ってない!

 俺だって、このまま逃げれば人間の王に捕まることなくこの世界で生きていけるって分かってる。きっと、グルーやヴィンス、アル坊もイヴァル爺さんもリットもルカも、俺が頼めば少しくらいこの世界で生きる術を教えてくれる。モンスターを倒して死体を換金すれば少しは稼げる。

 でもそれをしないのは!危険を冒してまで復讐するってグルーの手を取ったのは、俺がそんな生き方を許せなかったからだ!やられっぱなしは許せない。俺の痛みも、俺の大切な人の痛みだって何倍にもして返してやらないと、心の弱い俺には耐えられないから!


「もう…愚かだって弱くたって何だっていい!俺は、俺から大切なものを奪ったやつに苦痛を返さないと生きるも死ぬも嫌なんだ…!」


 俺が弱いことなんて、俺が一番よく知ってる。だから今だって俺の思いを否定されて泣いてる。でも、慰めて欲しくて泣いてるわけじゃ無い。俺は泣くほどの苦痛を全部捨てたいだけだ。俺だって、泣きたくは無いんだからな。

「……俺が本当のバカなら一人でさっさと殺りに行ってる。ヴィンス、お前の見当違いだ」
「違ぇだろ。復讐って目的があんのにお前は自分の体を代償に払おうとしてたんだろうが」
「いつ、誰が『代償』だと言った。いくら恩を返したいとは言え、俺だって股を開く相手くらいは選ぶ。お前達が…特にグルーが一方的に俺に尽くそうとしてくるから嫌なんだ」

 グルーは俺に惚れてるらしいし、俺に尽くすことで自身も満たされると言っていた。ヴィンスはたぶん、自分が動くのが一番手っ取り早くて確実だという自信があるから、結果的に俺を何度も手伝っている。それで俺は何度も助けられ、心から感謝しているんだ。


 俺が同じ事をして何が悪い!


「今の状況じゃ、俺ばっかりいい思いをして不公平だ!だったらせめてお前達を巻き込むくらいいいじゃないか!」

 頼むから、この言葉の意味を分かってくれ!

「……あ?それってつまり………」
「私達と身体を重ねる事が嫌では無く、むしろ互いに満たされる事を望んでいる………と?」

 伝わった…けど、言葉にして言われるのは恥ずかしいんだよ!たぶん今の俺ゆでたこみたいに顔が真っ赤になってる。
 二人は俺がイヤイヤ身体を許そうとしてると思ってたんだろう。恩返しに、代償として、仕方なく、この身を許そうと。そんなわけあるか。もし本当にそうしようとするなら、俺は女がトラウマになってない。
 まぁ…ヴィンスの時は本当にトラウマになりそうだったけど。あの時、最後までしないで踏み止まったから、ヴィンスのことを少しでも知って受け入れる気になっただけのこと。

 この二人は俺を傷付けたくないと思ってくれてるって、ちゃんと分かったから……



 グルーもヴィンスも、やっと理解して胸を撫で下ろした。

「ったく、そういうことかよ……。はぁ、そう言やぁお前って淫乱そうだもんな」

 ………ん?『そう』って何?ヴィンスお前今『そう』って何のルビとして言ったんだおい。


「………魅力的なお誘いですが、私は受け入れられません」
「え…?」


 以外にもグルーは真剣な顔で断った。な、なんで俺が振られるみたいになってるんだ?これで断られたら本当にグルーから一方的に与えられることになる。

「もうすぐ分かります…。ヤト、悪魔として、王としての私を知ってなお変わらなければ……いえ、そんなことはきっと無いでしょう。私の過去を知ったら、貴方は必ず後悔します。だから、私からその身を守ってください。これからは貴方に性的に触れることもありません」

 そう言ったグルーの顔は、本当にどこか諦めたような冷たい目をしていた。それが今までで一番恐ろしいと思った。

 グルー…何を隠してる……………?
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