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復讐の旅、開始!
19.賢王と呼ばれた獣人の国の王
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ヴィンセントが休んでる間に、リットに事情を聴くことにした。ヴィンセントの体調不良と黄色い薬について。それからヴィンセントがどんな人物なのかを。
テーブルに椅子は二つしか無く、俺とグルーが座ってリットは立っていた。
「さて…リット、ヴィンセントのいくつか聞きたいが、まず…アイツの様子が急に変わった時がある。あんまりこういうことを言わない方がいいかも知れないが…発情期みたいだった」
「はい…その通りです。ヴィンス…ヴィンセント陛下は狼族ではあり得ない発情期があるのです」
「あり得ない?」
「狼の中で発情期があるのは雌のみです。ですが、陛下は雄でありながら数ヶ月に一度発情期が訪れ、その度に城から離れたこの家に自主隔離されます」
つまりは突然変異みたいなものか?じゃあ俺を襲った時、ちょうど発情期だった訳だ。でも最初の方は全然そんな感じしなかった。俺を森で拾った時はまだ『直前』だったのだろうか。
「じゃあそこの棚にある薬は…」
「抑制剤です。本来は兎族や鼠族でしか使われない雄の発情期の抑制剤……を改良したものです。未だ開発段階で、副作用が強く出てしまいますが」
なるほどな。まったく…動物の本能的なもので、しかも異例で対策出来ないとかじゃあ責められないな。俺のタイミングが悪かったとしか言えない。しかも、抑制剤は一時的なものだから発情期の感覚は短くなるらしい。ヴィンセントは結婚も婚約もしてないから相手がいないとか。
……って、王様のことをそう簡単に話してもいいのか?そういうのって国家機密レベルじゃないのか!?
「な、なぁ…、聞いておいてなんだが、それって話しても良かったのか?」
「駄目に決まってますよ」
「えっ!?」
「ですが…発情期中の陛下に会ってしまったということは、貴方はおそらく、その……被害を受けていることでしょうし………」
あー、巻き込んで申し訳ないから、みたいなとこか?被害…まぁ受けたな。噛み跡見て俺を『被害者』だと思ったんだろうな。
まぁ…発情期はちょっと予想外の答えも返ってきたけどなんとなくは予想通りだった。ただ、本題はヴィンセントがどんな人でどんな王なのか。どんな力を持っているのか。どうやって、どうして王になったのかだ。
その説明を求めたら、リットがいつかのグルーみたいにツラツラと話し始めた。
「陛下は生まれは孤児ですがそれでも誰よりも獣として力が強く出ていたのです。そう、きっとあの方は生まれながらに王となることが運命付けられていたのでしょう!まるで『賢王』と呼ばれる王になるために生まれてきたかのよう!獣に限らず生物に重要な“欲”が強く、生命力や統率者としての才能が頭ひとつ飛び抜けていらっしゃる!王の資格とも取れる才能を持ちながらも絆を重要視し、育ての親やその実子とも本物の家族のように過ごし、更には従える臣下一人一人と向き合っては最善の采配を即座に判断し的確に国を組織として動かしているのです!本能や欲望に忠実な獣人は『国』という一つの団体としてまとまらない事も少なくありませんがヴィンスは齢十になって間も無く国を一つにまとめ上げ、即位時の年齢など誰一人として気にする事なく彼に全てを預けてしまうほどのカリスマ性を持っているのです!ただ出生や自身の特異体質を本人はよく思っていないため、たまに自暴自棄になってしまうのですが…そうならないために彼は私を側に置いたのです。兄弟のように過ごした私以上に信用出来る者などいないと分かっていましたが、ヴィンスはそれでも私に頭を下げてまで頼んできたのです!民の前では王として堂々としながら、自身の側で仕える者には最大限の礼を持って仕事を頼む姿に断れる人などいないでしょう!努力家で誠実で公私を分け、己を削ってまで王の役割を果たすと言う内面的なカリスマ性ももちろんですが、何より注目すべきはその圧倒的な戦闘センス!先王の代は弱肉強食の国となり毎日のように死と血肉の臭いが充満する理性とは掛け離れた国でしたが、そんな暴虐の王を退けた者こそ当時たった九つの少年ヴィンセントだったのです!どれだけ力があれど統率も取れず護衛もいなかった先王などヴィンスには敵ではない!単身乗り込み先王の懐に潜り込むと彼はたった一晩でその首を狩り取り、夜明けと共に先王の首を掲げ声をあげたその日は正しく伝説の始まり!血を纏い、理性と武力を持って国をまるっと変えてしまったのです!それからというもの民達は理性を持って武を磨き、今も憎き人間と戦っている!あぁ…私が肉食獣であれば陛下と共に戦場に出向き侵略者どもの首を掻き集めたというのに………」
「ストーップ!!止まれ!止 ま れ ー ー ー!!」
早口すぎて何も入ってこないから!最後の最後に怖い事言ってたのしか分からないから!つまりどう言う事なんだって!?
「はっ、も、申し訳ありません…!」
「で…なんだって?」
「私が要約しますよ」
お、ナイスグルー!グルーの要約と、それに対するリットの補足説明をまとめると………
ヴィンセントは幼くして両親を亡くし、リットの親に引き取られた。そのリットの母親が薬の調合を得意としていて、それで今も抑制剤を作ってもらっている。
そんな時、食料を集めていたリット達の父親が惨殺され、無法地帯に耐えきれなくなったヴィンセントは先王の首を一人で取った。そして王になったのが九歳の時で十九年前。勉強は即位してからで、ある程度の知識が整うまでは大人に協力を仰いでいた。
グルーと出会ったのは十六年前で、ちょうどヴィンセントが政治に関わり始めた頃。まだグルーが悪魔の国の王だった頃らしい。その時にヴィンセントはグルーを本能的に恐怖して、その時の感覚がトラウマになってるとか。
性格としては努力家で真摯、警戒心が強いが一度信用した相手には友好的になる。
戦闘能力は才能と努力の賜物で、幼い時には大人を軽く越える実力を持っていた。パワーとスピードはあるが、勢いが付きやすく咄嗟の切り替えは向いていない。
更に固有スキルの『服従の牙』は噛んだ相手にしばらくの間命令を聞かせるというもので、噛む場所は手でも効く。が、心臓や脳に近い首を噛む事で体の自由を奪うことが出来る。まぁ、俺がされたやつだな。
特異体質と、そのせいで起こる自己否定を除けば完璧と言える……らしいが、正直その特異体質とやらのデメリットは小さく感じる。それはもちろん俺の感覚で、だ。発情期があってそのせいで自己否定に陥りやすいなら…発情期を治めるパートナーがいれば解決する訳だ。俺みたいに特定の相手を作らない理由でもあるのかもしれないけど。
まぁ、聞いた感じじゃあ悪い人っぽくはないな。周りの人から見た評価はいいし、やってる事は英雄だ。ただ、本調子のヴィンセントとはまだ話せていないから様子見か。
「……おいリット、肝心なことを教えてねぇぞ」
「ヴィンス!騒がしくしてしまって眠れませんでしたか?」
あ、起きてたんだ…。顔色はだいぶ良くなってきてるし、意識もハッキリとして落ち着いて見える。良かった。
そう言えばヴィンセントとリットの二人って兄弟みたいに育ったんだっけ。愛称で呼んでるのに敬語って、なんだか不思議な感じだ。
それにしても…ヴィンセントの言う肝心なことってなんだ?
テーブルに椅子は二つしか無く、俺とグルーが座ってリットは立っていた。
「さて…リット、ヴィンセントのいくつか聞きたいが、まず…アイツの様子が急に変わった時がある。あんまりこういうことを言わない方がいいかも知れないが…発情期みたいだった」
「はい…その通りです。ヴィンス…ヴィンセント陛下は狼族ではあり得ない発情期があるのです」
「あり得ない?」
「狼の中で発情期があるのは雌のみです。ですが、陛下は雄でありながら数ヶ月に一度発情期が訪れ、その度に城から離れたこの家に自主隔離されます」
つまりは突然変異みたいなものか?じゃあ俺を襲った時、ちょうど発情期だった訳だ。でも最初の方は全然そんな感じしなかった。俺を森で拾った時はまだ『直前』だったのだろうか。
「じゃあそこの棚にある薬は…」
「抑制剤です。本来は兎族や鼠族でしか使われない雄の発情期の抑制剤……を改良したものです。未だ開発段階で、副作用が強く出てしまいますが」
なるほどな。まったく…動物の本能的なもので、しかも異例で対策出来ないとかじゃあ責められないな。俺のタイミングが悪かったとしか言えない。しかも、抑制剤は一時的なものだから発情期の感覚は短くなるらしい。ヴィンセントは結婚も婚約もしてないから相手がいないとか。
……って、王様のことをそう簡単に話してもいいのか?そういうのって国家機密レベルじゃないのか!?
「な、なぁ…、聞いておいてなんだが、それって話しても良かったのか?」
「駄目に決まってますよ」
「えっ!?」
「ですが…発情期中の陛下に会ってしまったということは、貴方はおそらく、その……被害を受けていることでしょうし………」
あー、巻き込んで申し訳ないから、みたいなとこか?被害…まぁ受けたな。噛み跡見て俺を『被害者』だと思ったんだろうな。
まぁ…発情期はちょっと予想外の答えも返ってきたけどなんとなくは予想通りだった。ただ、本題はヴィンセントがどんな人でどんな王なのか。どんな力を持っているのか。どうやって、どうして王になったのかだ。
その説明を求めたら、リットがいつかのグルーみたいにツラツラと話し始めた。
「陛下は生まれは孤児ですがそれでも誰よりも獣として力が強く出ていたのです。そう、きっとあの方は生まれながらに王となることが運命付けられていたのでしょう!まるで『賢王』と呼ばれる王になるために生まれてきたかのよう!獣に限らず生物に重要な“欲”が強く、生命力や統率者としての才能が頭ひとつ飛び抜けていらっしゃる!王の資格とも取れる才能を持ちながらも絆を重要視し、育ての親やその実子とも本物の家族のように過ごし、更には従える臣下一人一人と向き合っては最善の采配を即座に判断し的確に国を組織として動かしているのです!本能や欲望に忠実な獣人は『国』という一つの団体としてまとまらない事も少なくありませんがヴィンスは齢十になって間も無く国を一つにまとめ上げ、即位時の年齢など誰一人として気にする事なく彼に全てを預けてしまうほどのカリスマ性を持っているのです!ただ出生や自身の特異体質を本人はよく思っていないため、たまに自暴自棄になってしまうのですが…そうならないために彼は私を側に置いたのです。兄弟のように過ごした私以上に信用出来る者などいないと分かっていましたが、ヴィンスはそれでも私に頭を下げてまで頼んできたのです!民の前では王として堂々としながら、自身の側で仕える者には最大限の礼を持って仕事を頼む姿に断れる人などいないでしょう!努力家で誠実で公私を分け、己を削ってまで王の役割を果たすと言う内面的なカリスマ性ももちろんですが、何より注目すべきはその圧倒的な戦闘センス!先王の代は弱肉強食の国となり毎日のように死と血肉の臭いが充満する理性とは掛け離れた国でしたが、そんな暴虐の王を退けた者こそ当時たった九つの少年ヴィンセントだったのです!どれだけ力があれど統率も取れず護衛もいなかった先王などヴィンスには敵ではない!単身乗り込み先王の懐に潜り込むと彼はたった一晩でその首を狩り取り、夜明けと共に先王の首を掲げ声をあげたその日は正しく伝説の始まり!血を纏い、理性と武力を持って国をまるっと変えてしまったのです!それからというもの民達は理性を持って武を磨き、今も憎き人間と戦っている!あぁ…私が肉食獣であれば陛下と共に戦場に出向き侵略者どもの首を掻き集めたというのに………」
「ストーップ!!止まれ!止 ま れ ー ー ー!!」
早口すぎて何も入ってこないから!最後の最後に怖い事言ってたのしか分からないから!つまりどう言う事なんだって!?
「はっ、も、申し訳ありません…!」
「で…なんだって?」
「私が要約しますよ」
お、ナイスグルー!グルーの要約と、それに対するリットの補足説明をまとめると………
ヴィンセントは幼くして両親を亡くし、リットの親に引き取られた。そのリットの母親が薬の調合を得意としていて、それで今も抑制剤を作ってもらっている。
そんな時、食料を集めていたリット達の父親が惨殺され、無法地帯に耐えきれなくなったヴィンセントは先王の首を一人で取った。そして王になったのが九歳の時で十九年前。勉強は即位してからで、ある程度の知識が整うまでは大人に協力を仰いでいた。
グルーと出会ったのは十六年前で、ちょうどヴィンセントが政治に関わり始めた頃。まだグルーが悪魔の国の王だった頃らしい。その時にヴィンセントはグルーを本能的に恐怖して、その時の感覚がトラウマになってるとか。
性格としては努力家で真摯、警戒心が強いが一度信用した相手には友好的になる。
戦闘能力は才能と努力の賜物で、幼い時には大人を軽く越える実力を持っていた。パワーとスピードはあるが、勢いが付きやすく咄嗟の切り替えは向いていない。
更に固有スキルの『服従の牙』は噛んだ相手にしばらくの間命令を聞かせるというもので、噛む場所は手でも効く。が、心臓や脳に近い首を噛む事で体の自由を奪うことが出来る。まぁ、俺がされたやつだな。
特異体質と、そのせいで起こる自己否定を除けば完璧と言える……らしいが、正直その特異体質とやらのデメリットは小さく感じる。それはもちろん俺の感覚で、だ。発情期があってそのせいで自己否定に陥りやすいなら…発情期を治めるパートナーがいれば解決する訳だ。俺みたいに特定の相手を作らない理由でもあるのかもしれないけど。
まぁ、聞いた感じじゃあ悪い人っぽくはないな。周りの人から見た評価はいいし、やってる事は英雄だ。ただ、本調子のヴィンセントとはまだ話せていないから様子見か。
「……おいリット、肝心なことを教えてねぇぞ」
「ヴィンス!騒がしくしてしまって眠れませんでしたか?」
あ、起きてたんだ…。顔色はだいぶ良くなってきてるし、意識もハッキリとして落ち着いて見える。良かった。
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