召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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復讐の旅、開始!

12.目的地、獣人の国まであと少し

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「んっ……」
「おはようございます、ヤト」


 グルーの腕の中で目が覚め、寝惚けた頭が急に覚めて一日が始まった。


 いや、そうだよな。昨日一緒に寝たもんな。でも心臓に悪いもんは悪い!至近距離で耳元でその声で喋られるの弱いんだって俺!

「どうしました?」
「その、あんまり耳元で喋るのは…」
「あぁ…、申し訳ありませんでした」

 いやその、責めてるわけじゃ無いからそんな本当に反省してますみたいなしょんぼり顔はやめてくれ…。はぁ、とりあえず退くか。俺がグルーの上に乗っかってるから退かないとグルーが動けないだろうし。




 枝を集めて、ピアスに魔力を通して火を出した。焚き火に火をつけて、携帯干し肉をパンに挟んでサンドイッチにして食べた。この世界に来てからサンドイッチが定番になってるな。

 あっ!いい事考えた!

「ヤト?何を…」
「えいっ!」

 地面に向かってとある魔法をチョンっと打った。そしてそれに水魔法と光魔法を掛けて植物魔法を活性化させれば……

 出来た!オレンジだ!

 今思うと地面に打った植物魔法に最初から光と水を入れておいた方が効率が良かったかも知れない。けどまぁ出来たからいっか。

「なんと…ヤトは教えても無いことを簡単に熟して見せますね」
「へへっ、まぁ…オレンジのサイズは小さいがたぶん成功でいいよな」

 皮を剥いたら一口で丸々一つ食べれそうなオレンジ。グルーから果物ナイフを借りてリンゴみたいにくるくると皮を剥いた。みかんじゃ無くてオレンジだから手で剥くと爪の中に入るんだよな。
 剥いたオレンジをグルーに渡して、もう一つ木から取って剥き始めた。あっ、グルーってオレンジ好きかな。嫌いだったら無理に食べさせることになるから先に確認しておけば良かった。

「ありがとうございます」
「グルーはオレンジとかって好きか?」
「好き嫌いは特にありませんが…貴方のくれた物ならなんでも好きですよ」

 なっ…!サラッとなんつー甘いセリフを恥ずかしげも無く……!恥ずかしさのあまり俺は無言でオレンジを頬張った。




 流石に自然に生えたわけじゃ無いオレンジの木は処理しないといけないらしい。炎の熱で水分を奪って枯らす。そんな方法で処理して、ナイフでバラバラにして薪としてアイテムボックスにしまった。

「よし、あとは顔を洗って行くか」
「そうですね。獣人の国まではあと二日程歩いて行きますが…昨日のように貴方を担いで走れば一日程で着くかと」
「勘弁してくれ…せめて自分で走らせてくれ」

 本当にグルーは二つの意味でドキッとさせてくる。冷たい川の水で顔を洗って落ち着きを取り戻した。


 準備を整えて、獣人の国に少し急いで向かった。
 本当はモンスター相手に戦い方を学ぶつもりだったが…俺が昨日おかわりをしてしまったせいでパンが残り少なくなって来てるとか。節約すればまだ持ちそうだけど、獣人の国で食料を満足に買い足せるか分からないらしい。

「そういえば、獣人の国で仲間にしたい人がいるって言ってたよな。どんな人なんだ?」
「獣人の王です。血統至上主義ではない獣人の王なので実力は確かですし、現在進行形で人間に国を奪われそうになってるので話に乗ってくださると思いますよ」
「へぇ…って、獣人の王!?」

 獣人を仲間にするって言ってそれが王とか思わないって!そもそも会えるのかすら怪しいぞ!?
 でもグルーの考えも理解出来る。話に乗ってさえくれれば…相当な戦力になるだろうな。なんてったって俺らの標的は人間の王だ。懐がガラ空きなわけも無いし、数では勝てないだろう。


 それにしても獣人の王か…やっぱり百獣の王のライオン?それとも神獣的な何かだったり。実力があるなら…ゴリラとか虎とか狼とか?
 そもそも獣人はまだ会ってないからどんな感じなのかも気になる。獣人って言っても耳とか尻尾とか角の特徴があったり、全身動物の毛が生えてて二足歩行の獣みたいな感じだったり…。元の世界でいろんな小説を読んでたけど、やっぱりいろんなパターンがあるからドキドキするな。




 そんな妄想を膨らませて走ってると、森小屋を見つけた。その周りには…見覚えのある鎧を着た兵士が何人かいた。あれってグルーが着てた鎧…ってことは人間の国の兵士だよな。何人かがたむろして、兜を外して話している。
 見つからないように気配を殺して茂みに隠れてこっそり通り過ぎようとした。

「おい、城から飛ばされた手紙読んだか?」
「なんて書いてあるんだ?」
「どれどれ…『城の兵士が囚人を解放し逃走中。二名を発見した場合速やかに捕獲、または討伐せよ。生死は問わない』だってよ。兵士の方はグルーって名前の赤い目のやつらしいけど、囚人の情報は全く分からないな」

 た、タイムリー…!それ、俺たちのことだ……!
 俺はともかくグルーの方は完全にバレてる。赤い目って特徴的らしいもんな。なんとか見つからないように通り去って……

「むっ?コソコソと何者だ!」

 やっべ……!そうだよな、兵士なら訓練されてるよな!音立ててないのに気配で気付かれたっぽい!完全に俺達の方に向かって叫んでたし…バレちゃあ仕方ない、『口封じ』するしか………



「おっ、その格好はもしかして兵士か!よかったぁ~、森の中で迷子になっちまってもうダメかと思ってたんだ!なぁ、町ってどっちに行けばいいんだ?」



 ………え、俺たちじゃない?木の影に隠れてよく見えないが、迷子らしい男が兵士達の気を引いてるうちに逃げるべきか?

「ヤト、兵士は外では基本十人以上で固まってます。ここでの戦闘は危険かと、この隙に行きましょう」
「あ、あぁ」

 コソッと兵士達の行動を教えてくれたグルー。あっぶな、考え無しに戦うのってやっぱり良く無いよな。今のうちに静かに逃げろっ!





 ーーーーー???ーーーーー





 ったく危ねーなアイツら!特による!殺気が漏れ掛けてたぞ!?ま、用意周到で大胆で、真面目な脳筋のアイツらしいがな。

「えーっと、あっちに行けば町があるんだな?助かった!」

 とりあえず回り道してすぐにアイツらのとこに行かねぇと。


 ……いや、それよりもアイツらが会おうとしてる獣人の王の情報を集めるべきか?だがグルーってやつも隠しごとしてるしな…。まだそっちの監視も続けたい。

 だが、やはり最優先はよるだな。さてと、それじゃあアイツに渡した魔法石の中にとするか。






「まったく…ここまで迷子になるなんてとんでもないやつだな」
「ん?あいつ一人か?二人くらい気配を感じたが…」

「な、なぁ…あの男の影、おかしかったよな」

「は?影なんか気にしちゃいなかったが…」
「なんか幻術でも使ってたんじゃねぇのか?」


「あの男の影…太陽に向かって伸びてたぞ」
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