【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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役目を果たす時

85話 復讐の交渉

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神殿の馬車に乗り、着いた場所は僕が一年弱過ごしたお城
……いいのかな、死んだことになってる僕達がここに来て
ケイ様はこのこと知ってるのかな

「ミリー、心配する事は何も無いからな」
「そんな事言われても……」

心配せずにはいられない
今一番心配なのはエリーだ
僕がお城にいた頃と大差ない見た目
顔立ちも身長も体格も大きな違いはない
髪型と髪色が違うだけで当時の僕にそっくりだ
そりゃ、双子だからそっくりなのは当たり前だけど
僕がここでしたことは、他の人から見ればエリーがしたことだ
悪女も聖女殺害未遂もエリーがやった事と思われるだろう
絶対に気付かれたらダメだ
とは言え、かなり注目を浴びてたから何人か勘づいてもおかしくはない


ドキドキしながらも案内に従うと、そこは謁見室だった
玉座には国王陛下が真剣な面持ちで鎮座している
すぐに跪こうとしたら、エリーに止められた

「私たち神子は国王よりも上の立場だ。失礼が無いようにだけすればいい」

ギリギリ聞こえる声でエリーは教えてくれた
神子が国王よりも上…
神に直接関わりがあるから何となくは分かってた
聖女でさえ、王室と同等の立場なのだから
それでも実感は無い

「久しいな。カメリア殿、アイリス殿」
「お久しぶりです国王陛下。本日はこのような場に呼んでいただきありがとうございます」

ずっと眠っていたとは思えない程に堂々としているエリー
緊張してることを上手く隠している
……前世から彼女は緊張を抑えるのが得意だからね
それを知らなかったら僕もエリーが緊張してるって気付かなかっただろう
緊張すると左手を強く握りしめる癖も変わらない

「積もる話もあるが…まずは二人に謝罪がしたい。我が愚息の行った事は謝罪の言葉などで許される事では無いが……」

陛下は立ち上がり僕達の前まで来ると、跪いてこうべを垂れた
一国の主が、まだ大人になったばかりの若い僕達に跪くその光景に恐怖を感じる
それだけ非を感じているのか、或いは神子がそれ程までに偉大な存在なのか
僕にはそれを判断する知識も無い

「まことに申し訳なかった……」
「…!なっ、やめて下さい!陛下が謝罪することなど何も……」
「私はその言葉だけで許しません」
「エリー…?」

僕はなんの非も無い陛下の謝罪を拒もうとした
それとは反対に、エリーは謝罪を足りないと言った
一瞬驚いたけど、次のエリーの言葉を聞いたら凄さを実感するしかない

「私は…私たちは謝罪の言葉よりも行動で示していただきたいです。例えば、ハルジオン・フォー・ラディクスを罰する権利…とか、どうです?もちろん命を奪う可能性もありますけど」
「……分かった。彼の全ての権利を譲渡しよう。もともと罪人として裁く予定だったのだ。被害を受けた者が自由に罰を与えることを良しとしない訳には行くまい」

そうして、僕達はハルを罰する権利を得た
こんな事がパッと浮かぶほどにはエリーも恨みがあるんだろうな
無理も無い
実際に殺されてるからね

そんなこんなで、ハルの復讐は確実なものになった
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