【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

文字の大きさ
上 下
86 / 161
役目を果たす時

85話 復讐の交渉

しおりを挟む
神殿の馬車に乗り、着いた場所は僕が一年弱過ごしたお城
……いいのかな、死んだことになってる僕達がここに来て
ケイ様はこのこと知ってるのかな

「ミリー、心配する事は何も無いからな」
「そんな事言われても……」

心配せずにはいられない
今一番心配なのはエリーだ
僕がお城にいた頃と大差ない見た目
顔立ちも身長も体格も大きな違いはない
髪型と髪色が違うだけで当時の僕にそっくりだ
そりゃ、双子だからそっくりなのは当たり前だけど
僕がここでしたことは、他の人から見ればエリーがしたことだ
悪女も聖女殺害未遂もエリーがやった事と思われるだろう
絶対に気付かれたらダメだ
とは言え、かなり注目を浴びてたから何人か勘づいてもおかしくはない


ドキドキしながらも案内に従うと、そこは謁見室だった
玉座には国王陛下が真剣な面持ちで鎮座している
すぐに跪こうとしたら、エリーに止められた

「私たち神子は国王よりも上の立場だ。失礼が無いようにだけすればいい」

ギリギリ聞こえる声でエリーは教えてくれた
神子が国王よりも上…
神に直接関わりがあるから何となくは分かってた
聖女でさえ、王室と同等の立場なのだから
それでも実感は無い

「久しいな。カメリア殿、アイリス殿」
「お久しぶりです国王陛下。本日はこのような場に呼んでいただきありがとうございます」

ずっと眠っていたとは思えない程に堂々としているエリー
緊張してることを上手く隠している
……前世から彼女は緊張を抑えるのが得意だからね
それを知らなかったら僕もエリーが緊張してるって気付かなかっただろう
緊張すると左手を強く握りしめる癖も変わらない

「積もる話もあるが…まずは二人に謝罪がしたい。我が愚息の行った事は謝罪の言葉などで許される事では無いが……」

陛下は立ち上がり僕達の前まで来ると、跪いてこうべを垂れた
一国の主が、まだ大人になったばかりの若い僕達に跪くその光景に恐怖を感じる
それだけ非を感じているのか、或いは神子がそれ程までに偉大な存在なのか
僕にはそれを判断する知識も無い

「まことに申し訳なかった……」
「…!なっ、やめて下さい!陛下が謝罪することなど何も……」
「私はその言葉だけで許しません」
「エリー…?」

僕はなんの非も無い陛下の謝罪を拒もうとした
それとは反対に、エリーは謝罪を足りないと言った
一瞬驚いたけど、次のエリーの言葉を聞いたら凄さを実感するしかない

「私は…私たちは謝罪の言葉よりも行動で示していただきたいです。例えば、ハルジオン・フォー・ラディクスを罰する権利…とか、どうです?もちろん命を奪う可能性もありますけど」
「……分かった。彼の全ての権利を譲渡しよう。もともと罪人として裁く予定だったのだ。被害を受けた者が自由に罰を与えることを良しとしない訳には行くまい」

そうして、僕達はハルを罰する権利を得た
こんな事がパッと浮かぶほどにはエリーも恨みがあるんだろうな
無理も無い
実際に殺されてるからね

そんなこんなで、ハルの復讐は確実なものになった
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 飛竜騎士団率いる悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治を目指すこと、そして敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成のためグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後、少しずつ歴史は歪曲しグレイの予知からズレはじめる…… *主人公の股緩め、登場キャラ貞操観念低め、性癖尖り目、ピュア成分低めです。苦手な方はご注意ください。 *他サイト様にも投稿している作品です。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

処理中です...