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変化とはあまりにも速い
11話 差し出された手と選択肢
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大きな吊り目をさらに大きく開き、黄金の瞳をキラキラと輝かせるリージュ
愛らしく、素直で純粋な表情
どんなお願いでも聞いてあげたくなるような
だとしても、そのお願いが
「け、剣術ですか……?」
即答できるものでは無かった
この世界で女性が剣術を習うのは一般的な事だ
護身術や体力作りで護衛騎士や兄に習うと言うのはよくある
しかし、リージュは「ボクと習いませんか」と言った
ゲームの中ではリージュの剣の師匠は騎士団長
護衛騎士のいない僕は騎士団長では無いにしろ、他の騎士に習う事になるだろう
軽い訳がない
ただ、僕は周りから見れば女性だが実際には男
体力は欲しいとこだけど筋肉が少しでもついたら困る
なんとか断ろうとしたが、その前にリージュは動き出した
「姉上に剣術を教えてくれる人、探してきますね!」
満面の笑みでその場から走り去って行った
何という行動力
ガーベラとリンドーはやれやれと食器を片付け始めた
「行っちゃった…」
「すいません姉上…姉上の事情は分かっててもリージュを止める術を知らなくて」
「いえ、大丈夫ですよ。どうせ“悪女”に剣を教えようなんて人いませんから」
普通に考えればそうだろう
騎士を殺した人に剣を教える騎士なんているはずが無い
もちろん冤罪だが、それを知る人はいないだろう
アズも僕にした事を悔いて、こうして優しくしてくれている
まだ、“悪女”としての認識は消えていないだろう
そう思っていた
「姉上は悪女ではありません。そうですよね」
「え…?」
「冷静に考えれば分かる事でした。そんな細い腕で、体で、剣を振るうなんてこと出来ないですよね?」
アズは、分かってくれたのだろうか
僕が起こした事件で無いこと
僕が騎士達を殺していないこと
ちゃんと説明すれば……
そんな時に限ってネガティブな事が思い浮かぶ
説明そのものに意味は無い
アズは僕の境遇を知り、直でないにしろ僕に触れたから分かった
僕の言葉に信憑性は無い
「……私は、言葉通り何もできませんからね」
静かに姉のフリをして生きていく
僕に選択肢は無い
せめてもの反抗は、成功しようが失敗しようが僕の死を避けて通れない
「大丈夫ですよ、姉上。姉上のことは私が守ると決めましたから」
「私を…守る?」
「実は、姉上の専属魔法士になろうと思いまして」
「なっ、専属の魔法士⁉︎そんな、無理です!」
専属の魔法士になれば、その人以外に魔法を使う事を制限されてしまう
全てダメでは無いが、国の魔法士よりも魔法士としての立場は低くなる
それに……
「第一、王太子殿下も陛下も御許しにはならないでしょう?」
「いえ、どちらとも許可は取ってあります。あとは姉上がどうしたいか、それだけです。私は出来るかどうかも分からない事で大きな選択肢を提示しませんよ」
その目は確かに本気で
何で僕なんかをと言う疑問を一瞬でも忘れてしまう程に引き込んだ
気付いた時には、僕は差し出された手をそっと取っていた
愛らしく、素直で純粋な表情
どんなお願いでも聞いてあげたくなるような
だとしても、そのお願いが
「け、剣術ですか……?」
即答できるものでは無かった
この世界で女性が剣術を習うのは一般的な事だ
護身術や体力作りで護衛騎士や兄に習うと言うのはよくある
しかし、リージュは「ボクと習いませんか」と言った
ゲームの中ではリージュの剣の師匠は騎士団長
護衛騎士のいない僕は騎士団長では無いにしろ、他の騎士に習う事になるだろう
軽い訳がない
ただ、僕は周りから見れば女性だが実際には男
体力は欲しいとこだけど筋肉が少しでもついたら困る
なんとか断ろうとしたが、その前にリージュは動き出した
「姉上に剣術を教えてくれる人、探してきますね!」
満面の笑みでその場から走り去って行った
何という行動力
ガーベラとリンドーはやれやれと食器を片付け始めた
「行っちゃった…」
「すいません姉上…姉上の事情は分かっててもリージュを止める術を知らなくて」
「いえ、大丈夫ですよ。どうせ“悪女”に剣を教えようなんて人いませんから」
普通に考えればそうだろう
騎士を殺した人に剣を教える騎士なんているはずが無い
もちろん冤罪だが、それを知る人はいないだろう
アズも僕にした事を悔いて、こうして優しくしてくれている
まだ、“悪女”としての認識は消えていないだろう
そう思っていた
「姉上は悪女ではありません。そうですよね」
「え…?」
「冷静に考えれば分かる事でした。そんな細い腕で、体で、剣を振るうなんてこと出来ないですよね?」
アズは、分かってくれたのだろうか
僕が起こした事件で無いこと
僕が騎士達を殺していないこと
ちゃんと説明すれば……
そんな時に限ってネガティブな事が思い浮かぶ
説明そのものに意味は無い
アズは僕の境遇を知り、直でないにしろ僕に触れたから分かった
僕の言葉に信憑性は無い
「……私は、言葉通り何もできませんからね」
静かに姉のフリをして生きていく
僕に選択肢は無い
せめてもの反抗は、成功しようが失敗しようが僕の死を避けて通れない
「大丈夫ですよ、姉上。姉上のことは私が守ると決めましたから」
「私を…守る?」
「実は、姉上の専属魔法士になろうと思いまして」
「なっ、専属の魔法士⁉︎そんな、無理です!」
専属の魔法士になれば、その人以外に魔法を使う事を制限されてしまう
全てダメでは無いが、国の魔法士よりも魔法士としての立場は低くなる
それに……
「第一、王太子殿下も陛下も御許しにはならないでしょう?」
「いえ、どちらとも許可は取ってあります。あとは姉上がどうしたいか、それだけです。私は出来るかどうかも分からない事で大きな選択肢を提示しませんよ」
その目は確かに本気で
何で僕なんかをと言う疑問を一瞬でも忘れてしまう程に引き込んだ
気付いた時には、僕は差し出された手をそっと取っていた
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