余命一年の転生モブ令嬢のはずが、美貌の侯爵様の執愛に捕らわれています

つゆり 花燈

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第二章

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「そんな事よりも、そっちこそさっきのは何? どこで覚えたの?」

「どこでって…」

 アリシティアが一瞬戸惑う。その隙にルイスは彼女をソファーの上に押し倒した。頭上で手首を交差して掴んだ上、体と長い足でアリシティアから自由を奪う。

 突然のルイスの動きに対応に遅れたアリシティアは、抜け出そうともがいてはみたが、ルイスに離す気はなさそうだった。

「さっきのは誰に習ったの? 僕は君の色事に関しては、指南役をつけてないんだけど?」

 ルイスの言葉使いはいつも通りだが、声にはわずかな苛立ちが含まれている。

「…何で怒るの? ていうか酷い!! 私の色事に関する指南役は自分でするとか言って、貴方も初めてだったなんて!!だからあんなに痛かったのね?!」

 アリシティアは16歳の誕生日を思い出して、半泣きで睨む。

「えっ、そんなに痛かった?! ごめん…ね?」

 そんなアリシティアを見て、ルイスはほんの少しだけたじろいだ。


「絶対に許しません!!だいたい何であんな事したの?」

「……だって、あれはそう言う事にしておかないといけなかった。君が叔父上に色ごとを使う影になるとか約束したりするから」

「はあ?そんなの私の問題でしょう?!」

「君以上に僕の問題だから。だって、うちの女の子達を使って、君に色事を教えるって叔父上に言われた」

「お姉様達に教わって何が悪いの?!」

「……その場合は、最後は必ず客の相手をさせられるよ?」

「えっ……」

 低くなったルイスの声に、アリシティアは息を呑んだ。
つまり、実技の最終試験のような物なのだろう。単純に影として異性からベッドの上で情報を聞き出すなら、情報さえ得られたら、そのあとは相手を眠らせるなりなんなりして、逃げればよい。

 けれど、決まった人間に取り入り情報を得る高級娼婦という名の影達は、決して性行為からは逃げられない。



「初めてを見ず知らずの客に渡したい?君は良くても僕は嫌だ。彼女達は娼館に売られて娼婦になってから、適正を見て影として育てるかどうか判断される。子供の頃から影として戦闘訓練を受けてきた君は違う。しなくて良い事までする必要なんてないんだ」

「でも……」

「そもそも君の戦闘力は影の中でもずば抜けている。君が本気をだせば僕なんて足元にも及ばない。今この時だって、君はやろうと思えば簡単に僕の拘束なんてはずせるだろ?」

 確かにアリシティアはルイスよりも強い。ルイスだけではない。影たちの中でアリシティアと対等に戦える者は数少ない。

 本気を出せば、ルイスを跳ね除ける事は多分できる。けれども、アリシティアはどうやってもルイスに甘い。前世で飼っていた猫のように、何をしても何をされても、つい許してしまう。

「それは確かにそうなんですけど……。だからってあなたが、私の相手をする必要は……」

 ルイスが不快そうに、眉根を寄せて、アリシティアを見下ろしてきた。


「僕がしない場合は、誰にして欲しいの?!だいたいね、君は終わるとすぐに眠ってしまったから、僕は初めてで猿みたいに暴走したいのを全力で我慢したのに。あの時の僕の理性を褒めて欲しいくらいだよ」

「えっ……」

 その時ようやくアリシティアは気付いた。過去にルイスに抱かれた時、必ず一度で終わっていた。それは、ルイスに賢者タイムがあるからだと思い込んでいた。

 だが現実は、単に終わると同時にアリシティアが爆睡してしまうから。




 それでもこの期に及んで、

──── 絶倫設定は流石にないわよね?だってここ、現実だもん。小説とは違うはず

などと考えていた。



「ねえ? 答えてよ。さっきのは誰に教わったの?!」

 ルイスの不機嫌なのに甘い声に、ほんの一瞬、意識を別世界に飛ばしていたアリシティアの思考が引き戻された。

「……や、館のお姉様方?」

一番無難な嘘をついてみる。だが…。

「館の女の子達は、逆に君から教わったと言ってたけど? 常識では考えつかないような体位とか、あと、体の位置をお互い逆にして、舐め合う…だっけ?」



──── よりにもよって、何でそれを言うのよ、お姉様!!




 アリシティアの顔色が悪くなる。挙動不審気味に、視線を彷徨わせた。娼館でお茶しながら、ルイスの手駒であるお姉様方とエロ談義などするのではなかったと後悔する。

 確かによく考えれば、彼女達は高級娼婦であるとともに、情報を集めてルイスに報告する義務があるのだ。彼女達をせめる事はできない。

「正直に話さないと、どんどん増えていくよ? 君の体中が、花びらだらけになっても、僕は全然構わないんだけど」

 ルイスはアリシティアの首筋に再び唇を這わせた。

「異国の本で読みました!!」

 

 これ以上キスマークを増やされては困る。アリシティアは早々に白状した。異世界の異国だが、嘘ではない。それに、この言い訳はお姉様方にも使っている。

「ふーん」

 無理矢理聞いておいて、ルイスはまったく興味なさげに相槌を打った。




──── いや、知ってたなお前!?



 アリシティアにしては珍しく、思いっきりルイスを殴り飛ばしたくなった。



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