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逮捕
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鬼嫁は、使用人のマリラをクビにするのに大活躍をした爺さんの孫のチャーリーを執務室に呼び出すことにした。
子供は正直でいいよねー。
「奥様、チャーリーが来ました」
「中に入れてあげて」
「失礼します!」
おー、チャーリーは『失礼します』って、きちんと言えるようになったのね!
私の護衛騎士や従者に言葉遣いを注意されたって報告は受けていたけど、チャーリーは素直に聞き入れて頑張っているようだ。
中身がおばちゃんだから、子供の成長は嬉しく感じちゃう。
「チャーリー。最近、頑張ってるって聞いてるわよ」
「本当?」
「本当よ! これからも頑張るのよ。お爺さんが喜んでくれるだろうからね。
頑張るチャーリーにお小遣いをあげるわ。無駄遣いしないで、大切に取っておきなさいよ」
平民の子供に金貨は高額だと判断したので、銀貨一枚と銅貨を数枚あげることにした。それでも、十分な金額だとメイド達に言われている。
「ありがとうございます!」
最近は伯爵様とその親族達にイライラしていたから、素直なチャーリーに癒されるわ。前世での甥っ子を思い出しちゃう。
「エリーもメイドのお手伝いを頑張っているから、お小遣いをあげるからね。無くさないで取っておくのよ」
チャーリーの妹のエリーも、私のメイド達が可愛がってくれている。両親を亡くして、爺さんは仕事で忙しくて構ってあげられなかったらしいから、メイド達はお姉さんみたいで嬉しいらしい。
「ありがとうございます!」
二人には時間に余裕がある時に、読み書きと計算も教えさせるようにしている。将来、悪い奴に騙されないように、しっかり教育していかないとね。
しかし、せっかくほのぼのとした雰囲気になっていたのに、この後、義弟のギルの来訪によってこの雰囲気がぶち壊されることになる。
「義姉さん。この前頼まれていた調査なんだけど、内容が内容だけに、人払いをしてもらいたいんだけど」
「分かったわ。みんな、少し外に出ていてちょうだい」
メイド達はみんな出ていき、扉も閉めてもらった。
ギルに頼んでいたのは、伯爵様の叔父のバード男爵についてだ。
この前、随分と身辺調査されたくなさそうにしていたし、あんなに困ったような態度を見せられたから、おばちゃんは非常に気になっていた。だから、実家の力を使って詳しく調べてもらうことにしたのだが……、結果は真っ黒だった。
私の実家では、薬局みたいなお店も経営している。当然なのだが、薬を売る場合は安全性を確かめて、国に許可を得て売らなければならない。その分、割高になってしまうので、うちのお店の客は貴族や平民の富裕層が多いのだ。
扱う薬の中には売れ筋の媚薬もあるのだが、バード男爵は、うちの店の媚薬の模造品を作って売っていたようだ。無許可で安全性が確認されていない危険なやつ。
バード男爵の令嬢もその商売に加担して、下位の貴族の友人達に格安で売っていたようだ。友人達には、ベネット家(私の実家)と親戚だから、安く仕入れることが出来ると話していたらしい。
「義姉さん。あの男の親戚であっても、今回のことは見逃す訳にはいかないから」
「分かっているわ。うちの商品だと思って購入した人の具合が悪くなったりしたら大問題だからね。
ギル……、ごめんね」
「義姉さんは悪くないだろ。気にしなくていいよ。それより、よくバード男爵が怪しいって分かったよな」
「ああ、それはね……少し前にバード男爵が来て、私が〝新婚なのに、一家の主人よりも仕事を優先している〟って噂で聞いたって言われて腹が立ったから、噂話をどこで聞いたのか、男爵の交友範囲を全て調べるみたいな話をしたら、すごく嫌そうにしていたから気になったのよ」
「……何だよそれ? あの男の親戚からそんな風に言われたの?
義姉さん、もう我慢しなくていいから帰って来なよ」
ギルが優しくて怖い!
「今すぐ離縁するのも難しいみたいだから、白い結婚が申請できるまで我慢するわね」
「あまりに酷いと判断したら、私が強引に連れて帰るから」
「……分かってる」
その数日後、バード男爵と令嬢が逮捕された。表向きは匿名で通報があったということになっているらしいが、実はギルと両親が仲の良い騎士団長に、調査結果を提出して動いてもらったらしいのだ。
バード男爵家は取り潰しになり、男爵は鉱山へ、令嬢は修道院に入れられると聞いた。
伯爵様は、王都から旅立つ二人を見送りに行ったらしい。仲の良い親族だったらしいから、ショックを受けたかもしれない。
後味の悪い結末になってしまった。
子供は正直でいいよねー。
「奥様、チャーリーが来ました」
「中に入れてあげて」
「失礼します!」
おー、チャーリーは『失礼します』って、きちんと言えるようになったのね!
私の護衛騎士や従者に言葉遣いを注意されたって報告は受けていたけど、チャーリーは素直に聞き入れて頑張っているようだ。
中身がおばちゃんだから、子供の成長は嬉しく感じちゃう。
「チャーリー。最近、頑張ってるって聞いてるわよ」
「本当?」
「本当よ! これからも頑張るのよ。お爺さんが喜んでくれるだろうからね。
頑張るチャーリーにお小遣いをあげるわ。無駄遣いしないで、大切に取っておきなさいよ」
平民の子供に金貨は高額だと判断したので、銀貨一枚と銅貨を数枚あげることにした。それでも、十分な金額だとメイド達に言われている。
「ありがとうございます!」
最近は伯爵様とその親族達にイライラしていたから、素直なチャーリーに癒されるわ。前世での甥っ子を思い出しちゃう。
「エリーもメイドのお手伝いを頑張っているから、お小遣いをあげるからね。無くさないで取っておくのよ」
チャーリーの妹のエリーも、私のメイド達が可愛がってくれている。両親を亡くして、爺さんは仕事で忙しくて構ってあげられなかったらしいから、メイド達はお姉さんみたいで嬉しいらしい。
「ありがとうございます!」
二人には時間に余裕がある時に、読み書きと計算も教えさせるようにしている。将来、悪い奴に騙されないように、しっかり教育していかないとね。
しかし、せっかくほのぼのとした雰囲気になっていたのに、この後、義弟のギルの来訪によってこの雰囲気がぶち壊されることになる。
「義姉さん。この前頼まれていた調査なんだけど、内容が内容だけに、人払いをしてもらいたいんだけど」
「分かったわ。みんな、少し外に出ていてちょうだい」
メイド達はみんな出ていき、扉も閉めてもらった。
ギルに頼んでいたのは、伯爵様の叔父のバード男爵についてだ。
この前、随分と身辺調査されたくなさそうにしていたし、あんなに困ったような態度を見せられたから、おばちゃんは非常に気になっていた。だから、実家の力を使って詳しく調べてもらうことにしたのだが……、結果は真っ黒だった。
私の実家では、薬局みたいなお店も経営している。当然なのだが、薬を売る場合は安全性を確かめて、国に許可を得て売らなければならない。その分、割高になってしまうので、うちのお店の客は貴族や平民の富裕層が多いのだ。
扱う薬の中には売れ筋の媚薬もあるのだが、バード男爵は、うちの店の媚薬の模造品を作って売っていたようだ。無許可で安全性が確認されていない危険なやつ。
バード男爵の令嬢もその商売に加担して、下位の貴族の友人達に格安で売っていたようだ。友人達には、ベネット家(私の実家)と親戚だから、安く仕入れることが出来ると話していたらしい。
「義姉さん。あの男の親戚であっても、今回のことは見逃す訳にはいかないから」
「分かっているわ。うちの商品だと思って購入した人の具合が悪くなったりしたら大問題だからね。
ギル……、ごめんね」
「義姉さんは悪くないだろ。気にしなくていいよ。それより、よくバード男爵が怪しいって分かったよな」
「ああ、それはね……少し前にバード男爵が来て、私が〝新婚なのに、一家の主人よりも仕事を優先している〟って噂で聞いたって言われて腹が立ったから、噂話をどこで聞いたのか、男爵の交友範囲を全て調べるみたいな話をしたら、すごく嫌そうにしていたから気になったのよ」
「……何だよそれ? あの男の親戚からそんな風に言われたの?
義姉さん、もう我慢しなくていいから帰って来なよ」
ギルが優しくて怖い!
「今すぐ離縁するのも難しいみたいだから、白い結婚が申請できるまで我慢するわね」
「あまりに酷いと判断したら、私が強引に連れて帰るから」
「……分かってる」
その数日後、バード男爵と令嬢が逮捕された。表向きは匿名で通報があったということになっているらしいが、実はギルと両親が仲の良い騎士団長に、調査結果を提出して動いてもらったらしいのだ。
バード男爵家は取り潰しになり、男爵は鉱山へ、令嬢は修道院に入れられると聞いた。
伯爵様は、王都から旅立つ二人を見送りに行ったらしい。仲の良い親族だったらしいから、ショックを受けたかもしれない。
後味の悪い結末になってしまった。
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