婚約者と義妹に裏切られたので、ざまぁして逃げてみた

せいめ

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33 閑話 ルイス

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「リリアンを……愛してるって言って抱きしめてた……」

 涙を流す彼女が口にしたのは、あの男と彼女の義妹の不貞を見てしまったということだった。
 その瞬間、激しい怒りが込み上がってくる。
 しかし、弱々しく泣く彼女を見たら守りたいという感情が強く芽生え、そのおかげで私は冷静になれた。
 今は彼女を守ることを優先すべきだと考えた私は、セシリアと二人で彼女を家まで送っていくことにした。

 後日……

「セシリア。シーウェル伯爵令嬢は大丈夫なのか? お前は親友だろう? 早く会いに行ってやれ!
 きっと彼女のことだから、一人で泣いているに違いない」

「そんなことは分かったいるわよ! でも、王太子妃教育が忙しくて、しばらく休みがないの。
 フローラは社交をしばらく休んでいるし、深く落ち込んでるのは分かっているわ。
 私だって、今すぐシーウェル伯爵家に乗り込んで行って、あの義妹にビンタを食らわしたいくらいよ。でも、何とか我慢しているの」

 良くも悪くも自分の感情に正直で、真っ直ぐな性格であるセシリアがシーウェル伯爵家に行ったら、間違いなくあの義妹に報復するだろう。
 しかし、それを彼女は望んでいることなのだろうか?

「セシリア、勝手に報復しては駄目だ。シーウェル伯爵令嬢が何を望んでいるのかも考えないといけない」

「分かっているわよ! フローラはビンタしたいだとか、紅茶をかけてやりたいとか、何か復讐をしようとは考えていないと思うわ」

 王太子妃教育の賜物なのか、セシリアも短絡的な考えで動くことは良くないということを理解しているようだ。
 しかし、セシリアがシーウェル伯爵令嬢と会った後に教えてくれたことは、信じられない話だった。
 
「ルイスが届けてくれたマルコリーゼのチョコだけど、フローラはとても喜んでいたわよ。
 しかし、ルイスがこんな気遣いをするなんて凄いわね……」

「チョコを喜んでくれたのは良かった……
 それよりも、彼女は大丈夫だったか?」

「そのことなんだけど、婚約解消は難しそうだから家を出ると言っていたわ。
 どこか遠くで働いて生きていきたいそうよ。
 ……ルイス、フローラを助けて欲しいの」

 あの淑女の鑑と言われていたシーウェル伯爵令嬢が、家出を計画していると聞いて胸が張り裂けそうになる。
 じゃじゃ馬のセシリアなら家出くらいはあり得る話だが、あの真面目で穏やかな彼女がそんなことを言うほど深く傷つけられたということなのだろう。
 その話を聞いた私は、彼女を助けることに何の迷いもなかった。

 そこから彼女と一緒に二人への復讐と逃亡について計画することになる。
 淑女の鑑だと思っていた彼女が不意に見せる可愛らしい一面に、何度か平常心を失いそうになったが、何とか堪え今後の計画を立てる。
 そして彼女は無事に伯爵家から脱出し、愛し合う二人の結婚式を見届けた後、私の領地に行くことになった。
 領地に住む祖母が、前にセシリアの友人として紹介した彼女を気に入っていたし、彼女の話をしたら元じゃじゃ馬の祖母が匿いたいと言ってくれたからだ。
 その後、彼女は祖母と仲良くなったらしく、祖母がとても可愛がっていると報告がある。更に、紹介した学校の仕事も真面目にこなしていると聞いて安堵していた。

 しかし、学校長から届いた報告書を読んで私は苛々することになる。
 報告書には彼女が仕事を頑張っていて、生徒からも慕われていると書いてあったのだが、特に男子生徒から人気で、彼女の荷物持ちをやりたがる男子生徒が沢山いることや、彼女の年齢や婚約者の有無を尋ねる生徒がいるということが記されてあったからだ。
 彼女は先生なのに、男子生徒はなんて図々しい奴らなんだ! 学校長には、男子生徒に立場を弁えるように厳しく指導すべきだと文を出すことにした。
 この頃になって、ようやく私は彼女への思いを自覚したのだった。

 
「ルイス。そろそろフローラを王都に戻す計画を立ててちょうだい。
 あの男と義妹の評判は地に落ちたし、フローラに対して同情している貴族は沢山いるから、もう戻ってきても大丈夫だと思うのよ。フローラ自身もあの男に未練はないみたいだし」

 セシリアは、自分の結婚式の前には彼女に王都に戻って来て欲しいと考えているようだった。

「ルイスはいつまでシーウェル嬢を囲うつもりだ?
 愛人じゃなくて、正式な妻にしたいならそろそろきちんと動くべきだぞ。
 手紙のやり取りだけで喜んだり、苛々していたと思ったら、領地に行きたいから休みを沢山欲しいなんて言ってみたり……
 どう見ても彼女に恋をしているよな? こうしている間に、男子生徒と禁断の恋をしていたらどうするんだ? 〝先生、卒業したら僕と結婚して下さい。僕は平民でも、実家は裕福な商家ですから苦労はさせません〟なんて言われたら、案外、コロっと落ちてしまうかもしれないぞ」

 殿下には、私の彼女への気持ちにすぐに気付かれていて、時々こうやって揶揄われている。

「近いうちに、彼女には自分の気持ちを伝えるつもりでいますからご心配なく……」

 こう口にすれば、セシリアが期待を込めたような鬱陶しい目で私を見つめていて、少し恥ずかしい気持ちになってしまった。

 殿下とセシリアの結婚式が終わったら、彼女に自分の気持ちを伝えようと思っていた。
 しかし、それは叶わなかった。彼女はパレードを見に行った帰りに、忽然と姿を消してしまったからだ。
 結婚式とパーティーを終えて、彼女がいるはずの別邸に帰った私が家令から報告されたのは、彼女がいなくなってしまい、騎士や使用人達で捜索しているということだった。

 
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