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34 目覚めた私
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頭がズキズキと痛み、体がとてもだるい。瞼が重くて目は開かないし、体も動かない……
どれくらい眠っていたのだろう?
目覚めた私は知らない部屋に寝かされていた。まだ体はだるくて自分で体を起こせず、部屋の中を眺めることしか出来ない。私に何があったというのか?
その時、誰かが部屋に入ってくる音がした。ドアの方に視線を向けると、部屋に入ってきた人物と目が合う。
「ローラ! 良かった……
なかなか目覚めなかったから心配していたんだ」
目覚めた私に気付き、安堵の表情を浮かべながら近づいて来るその人物を見た私は、絶望感に苛まれる。
「……どうし……て?」
今すぐに逃げなければならないのに、体が動いてくれない。
「そんなに怯えないで欲しい。
心配しなくて大丈夫だ。私がローラの面倒を見るからね。薬が強過ぎたらしくて、君はずっと意識を失っていたんだよ。まだしばらくだるさが残るらしいから、安静にするんだ」
目覚めたぼかりの時に、優しい口調で話しかけられたら普通は安心するだろう。しかし、私はその人物を見て警戒と恐怖しかなかった。
「……アストン様。ここはどこなのです?
どうして私はここにいるのですか?」
「ローラは、また私を家名呼びしているね……
私達は名前で呼び合う仲だったのに、家名で呼ばれるとただの知り合いのようで寂しく感じる。今までのように名前で呼んでくれるかい?」
この男と話が噛み合わない……。無理に話を逸らそうとしているようにも見えた。
「……名前で呼び合う仲を、裏切りによって壊したのは誰なのでしょうね?
それより私の質問に答えて下さい。ここはどこなのですか?」
「……っ! 私が悪かった。ずっと君に謝罪がしたいと思っていた」
アストン様の穏やかな表情が一変し、苦痛に歪んだものになる。
「謝罪は結構ですわ。もう終わったことですから。
それよりも私を帰して頂けませんか?
急に居なくなったら、知り合いたちに心配をかけてしまうと思いますので」
「終わってなどない。私は君に償うつもりでいた」
「結構です。それより、愛するリリーを放っておいていいのでしょうか?
ああ見えて孤独なのです。一人が嫌で構って欲しくて、色々な殿方と仲良くしようとしていたようですわ。早く行ってあげて下さい。新婚の二人を邪魔したくないのです」
ここまできつい言葉が次から次へと出てくる自分自身に嫌気がするが、この男に今更遠慮なんてしたくなかった。この男に良い子で振る舞う必要はないと思っている。
「あんな女を愛するわけない! 私が愛しているのは君だけだ」
私は挑発し過ぎてしまったようだ。
あの穏やかなアストン様が声を張り上げて、取り乱している。
しかし、この人は侯爵家の跡取りとして育ってきた人。私の驚いた顔を見てハッとし、感情を抑えたようだ。
「……すまない。私が全て悪かった。だが、私が愛しているのはローラだということは分かって欲しい。
とりあえず、君はまだ安静にした方がいいからこの部屋で休んでくれ。
メイドに飲み物を運ばせる。何かある時は、ベルを鳴らしてメイドを呼ぶように。
また来るよ……」
悲しげな表情をして、アストン様は部屋から出て行ってしまった。
結局、ここがどこなのか分からない私は、その後に飲み物を持ってきてくれたメイドに尋ねるのだが、『私達は何もお答えしてはいけない決まりになっております』と言われてしまい、何も聞き出せなかった。
しばらくして何とかベッドから立ち上がり、窓まで行って外の様子を見ようかと考えたのだが、フラついた私は家具にぶつかって転倒してしまった。
ぶつかった時の音でメイドが来てしまい、アストン様を呼ばれてしまう。
「ローラ、まだ安静だって言ったはずだ。
怪我をしてしまうから、一人で歩き回るのは禁止。守れないなら、私がずっと側にいることになる。
それも嫌なら、体を拘束することになるかもしれないよ」
「……気を付けます。一人で大丈夫ですわ」
いつものように優しい口調だったが、アストン様の目は笑っていなかった。
ゾッとした私は、反論することすら出来ずに黙って従うことにした。
どれくらい眠っていたのだろう?
目覚めた私は知らない部屋に寝かされていた。まだ体はだるくて自分で体を起こせず、部屋の中を眺めることしか出来ない。私に何があったというのか?
その時、誰かが部屋に入ってくる音がした。ドアの方に視線を向けると、部屋に入ってきた人物と目が合う。
「ローラ! 良かった……
なかなか目覚めなかったから心配していたんだ」
目覚めた私に気付き、安堵の表情を浮かべながら近づいて来るその人物を見た私は、絶望感に苛まれる。
「……どうし……て?」
今すぐに逃げなければならないのに、体が動いてくれない。
「そんなに怯えないで欲しい。
心配しなくて大丈夫だ。私がローラの面倒を見るからね。薬が強過ぎたらしくて、君はずっと意識を失っていたんだよ。まだしばらくだるさが残るらしいから、安静にするんだ」
目覚めたぼかりの時に、優しい口調で話しかけられたら普通は安心するだろう。しかし、私はその人物を見て警戒と恐怖しかなかった。
「……アストン様。ここはどこなのです?
どうして私はここにいるのですか?」
「ローラは、また私を家名呼びしているね……
私達は名前で呼び合う仲だったのに、家名で呼ばれるとただの知り合いのようで寂しく感じる。今までのように名前で呼んでくれるかい?」
この男と話が噛み合わない……。無理に話を逸らそうとしているようにも見えた。
「……名前で呼び合う仲を、裏切りによって壊したのは誰なのでしょうね?
それより私の質問に答えて下さい。ここはどこなのですか?」
「……っ! 私が悪かった。ずっと君に謝罪がしたいと思っていた」
アストン様の穏やかな表情が一変し、苦痛に歪んだものになる。
「謝罪は結構ですわ。もう終わったことですから。
それよりも私を帰して頂けませんか?
急に居なくなったら、知り合いたちに心配をかけてしまうと思いますので」
「終わってなどない。私は君に償うつもりでいた」
「結構です。それより、愛するリリーを放っておいていいのでしょうか?
ああ見えて孤独なのです。一人が嫌で構って欲しくて、色々な殿方と仲良くしようとしていたようですわ。早く行ってあげて下さい。新婚の二人を邪魔したくないのです」
ここまできつい言葉が次から次へと出てくる自分自身に嫌気がするが、この男に今更遠慮なんてしたくなかった。この男に良い子で振る舞う必要はないと思っている。
「あんな女を愛するわけない! 私が愛しているのは君だけだ」
私は挑発し過ぎてしまったようだ。
あの穏やかなアストン様が声を張り上げて、取り乱している。
しかし、この人は侯爵家の跡取りとして育ってきた人。私の驚いた顔を見てハッとし、感情を抑えたようだ。
「……すまない。私が全て悪かった。だが、私が愛しているのはローラだということは分かって欲しい。
とりあえず、君はまだ安静にした方がいいからこの部屋で休んでくれ。
メイドに飲み物を運ばせる。何かある時は、ベルを鳴らしてメイドを呼ぶように。
また来るよ……」
悲しげな表情をして、アストン様は部屋から出て行ってしまった。
結局、ここがどこなのか分からない私は、その後に飲み物を持ってきてくれたメイドに尋ねるのだが、『私達は何もお答えしてはいけない決まりになっております』と言われてしまい、何も聞き出せなかった。
しばらくして何とかベッドから立ち上がり、窓まで行って外の様子を見ようかと考えたのだが、フラついた私は家具にぶつかって転倒してしまった。
ぶつかった時の音でメイドが来てしまい、アストン様を呼ばれてしまう。
「ローラ、まだ安静だって言ったはずだ。
怪我をしてしまうから、一人で歩き回るのは禁止。守れないなら、私がずっと側にいることになる。
それも嫌なら、体を拘束することになるかもしれないよ」
「……気を付けます。一人で大丈夫ですわ」
いつものように優しい口調だったが、アストン様の目は笑っていなかった。
ゾッとした私は、反論することすら出来ずに黙って従うことにした。
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