白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第8章 猫と娘と生徒たち

第64.5話 静かな夏休み

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 優香と『ゼンシンノウリョクシャ』について話をしてから数か月が経った頃。

 ピコんとスマホの通知音が響き、暁はそのスマホに目を向けた。

「所長から……え!?」

 所長から届いたメールには剛の健康状態が確認できたため、施設に戻ることを許可した旨を知らせる内容だった。

「そうか。剛が……」

 そう呟きながら、ニヤニヤする暁。

「えっと……夏休み明けからか。今が7月だからあと1か月弱くらいだな」

 そして暁はカレンダーの9月1日に丸印をつけて、自室を出たのだった。



 暁は水蓮を連れて食堂に訪れていた。

「先生、今日のお昼ご飯はなんですか!」
「そうだな、今日は……」

 暁たちはそんな話をしながら、食べ物の並ぶカウンターへと向かう。

 そして――

「水蓮、今日はいい日だ!」

 暁は満面の笑みで水蓮にそう告げる。

「え、なんで?」

 そんな暁を見て、きょとんとする水蓮。

「見ろ! から揚げがある!!」

 そう言ってから揚げに指を差す暁。

「本当だ!! 今日は当たりの日だね!!」
「ああ! ようし、さっそく皿に盛りつけよう!」
「おー!」

 それから暁はトレーにから揚げを乗せた。

「あとはバランスよく……」

 暁はよくマリアが用意してくれたように色とりどりの野菜を取り、ご飯と味噌汁と少しの前菜をトレーに乗せた。

 そして暁と水蓮は席に着くと、手を合わせて「いただきます」と言ってから食事を摂り始める。

「サクサク、おいしいね!」
「おう!」

 そして暁はから揚げを頬張りながら、食堂が前より静まり返っていることに気が付いた。

 凛子も織姫も休日はあまり部屋から出てこない為、平日以外は顔を追わせることもない。そのせいもあって、休日はだいたいこの広い食堂で水蓮と2人きりとなる。

「もうみんなでわいわい食事を摂るってこともなくなるのかな……」

 反抗期を迎えた子供とあまり顔を合わせなくなる親の気持ちってこんな感じなのかな――と暁はふとそう思っていた。

「そういえば、俺って反抗期がなかったな」

 と言っても、反抗する親と過ごした時間が少ないって言うのもあるのかもしれないな――

 しみじみそう思いながら、暁は昼食を続けた。



 昼食を終えた暁は特に何かをするでもなく、自室で水蓮と過ごしていた。

「ミケさん、お手!」

 そう言いながら、右手をミケに向ける水蓮。

「いや、ミケさんは猫だからな? それはさすがに――」

 そしてミケは水蓮の右手に手を乗せた。

「できるんだな」

 そもそもミケさんは人間だったはずなのに、すっかりペットとしての自覚が目覚めてきているのでは、と思う暁。

 もしかして、ミケさんの自我が失われ始めているのか――

 不安に思った暁は、

「ミケさん! 俺の言葉、わかるか??」

 と尋ねた。

『何を焦っておるんだ。ちゃんと聞こえているし、別にペットの自覚が目覚めたわけじゃない。水蓮が喜ぶからそうしているだけだ!』
「そうか。よかった……ってあれ。俺の心の声も聞こえているんだな」
『ああ。だから暁の考えなんて筒抜けだぞ』
「あははは……」

 そう言って苦笑いをする暁。

「ミケさん、先生とばっかり話してないで、スイとも遊んでよぉ」

 暁の方ばかり見て鳴くミケを見て、水蓮は口を尖らせながらそう言った。

「にゃーん」

 ミケはそう鳴くと、水蓮にすり寄っていった。

「わーい」
「ははは。ミケさんは本当に面倒見がいいな」

 それから暁はふと外に目を向けた。

 そしてキリヤの案で開催した夏祭りのことを思い出す。

 あのころと今とはだいぶ環境が変わったなと思い、寂し気な表情をする暁。

「あ……そういえば、奏多と夏祭りに行こうって約束をしていたな」

 そして水蓮に目を向ける暁。

 でもさすがに水蓮がいる今はここからそう簡単に出ることは出来ないか――。

「奏多は日本にいるんだし、いつでも行こうと思えばいけるよな」

 そして暁は静かな夏を過ごしたのだった。
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