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第8章 猫と娘と生徒たち

第64話ー⑤ その力の真実を

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 車がエントランスゲート前に到着すると、暁は眠ってしまっている水蓮とミケの方を見て、

「ほら、2人とも。施設に着いたから、そろそろ起きろー」

 そう声を掛けた。すると、水蓮は目をこすりながら身体を起こす。

「もう、着いたの?」
「おう。また部屋でお昼寝しような、水蓮」
「はあい」

 そしてそんな暁たちのやり取りを見て、運転手の青年は笑っていた。

「え? もしかして、何か変でした!?」
「いえ、なんだか本当の親子みたいだなって思って」

 傍から見てるとそう見えるものなんだな――と暁は頷きながらそう思った。

「先生、スイのパパになってくれるの??」

 水蓮は、眠たい目をこすりながらそう言った。

「俺は水蓮の先生だからな……パパにはなってあげられないんだよ」
「そっかー」

 水蓮は残念そうな表情をして、そう答えた。

「よし、じゃあ降りるぞ」
「うん」
「じゃあ今日はありがとうございました。またよろしくお願いします」

 暁は運転手の青年にそう告げてから、ミケを抱き上げて車を降りた。

「ありがとう、ございました!」

 水蓮もぺこりと頭を下げてそう言ってから暁に続いて車を降りた。

 それから車は来た方向に帰っていった。

「ミケさんも自分で歩いてくれよ……」
『ぐうぐう』

 本当に寝てるのか? まさか狸寝入りとかじゃないよな――そんなことを思いつつ、暁はミケを見つめた。

「ミケさん、ねむねむなんだね! あとでスイと一緒にお昼寝しようね!」

 水蓮はそう言って、ミケに微笑みかけていた。

「水蓮は優しくて、いい子だな」
「えっへん!」

 暁たちはそんな会話をしながら、自室へと向かっていた。



 暁、自室――。

「ミケさん、スイとお昼寝だよー」

 そう言って水蓮は暁からミケを受け取って、ベッドに寝転んだ。

「じゃあ水蓮。あとはミケさんをよろしくな」
「はーい」
「俺はちょっとだけお仕事するから、何かあったら何でも言ってな?」
「うん」

 それから暁は自室の机に向かい、PCを起動した。そして残っていた書類仕事を片付けていく暁。

 そして仕事をしながら、暁はふと優香のことを思い出していた。

 俺は帰っても水蓮やミケさんがいるから、能力のことを悶々と悩むことはない。でも優香はどうだろうか――

「今のキリヤに優香を支える元気はあるのかな」

 そんなことを思い、険しい顔になる暁。

 いつもなら一緒に話を聞いて、きっと優香なら大丈夫って言っていたはず。でもキリヤもキリヤで今、何かにもがき苦しんでいる。離れているとなかなか2人のことをわかってあげられないんだな――と暁は歯がゆい気持ちになっていた。

「はあ。優香に時間を無駄にするなとは言われたけど、やっぱり生徒が悩んでいると思うと、いてもたってもいられないんだよな。……まあ何ができるわけでもないんだけどさ」

 本当にどうすることもできないのか……? もしかしたら、能力を消失させる方法があるんじゃないのか? 残り7年しかヒトとしていられない運命なんて、そんなの俺は――

 暁はそう思いながら、ぼーっとPCの画面を見つめる。

「あまり時間はないけど、俺のできる限りで方法を模索しよう。俺にも関わる問題だしな」

 それから暁は書類仕事を再開したのだった。



 その力の真実を知ってしまった優香は、これからどう考えて生きていくのか。

 それを知らせた暁自身は、どう行動を起こすのか。

 2人の運命はどう変わっていくのだろう――
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