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第8章 猫と娘と生徒たち
第65話ー① 帰還者
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8月31日、S級保護施設エントランスゲート前。
一台の車が停車して、その中から青年が降りてきた。
エントランスゲートをじっと見つめる青年。
「久しぶりだな」
そう呟き、その青年は施設の敷地内へと向かっていった。
* * *
暁自室内。
暁は着替えを終えてから水蓮が起きるまでの日課の読書をしていた。
一人だったら着替えてまっすぐ食堂に行くところだけど、今は――
そんなことを思いながら、スヤスヤと寝息を立てて眠る水蓮の方にちらりと視線を向けて微笑む暁。
「本当に父親になった気分だな」
そう呟いた暁は、再び読書を始めた。
それから数分後。職員室の方から物音を聞き、
「誰だ……?」
暁はそう言って首をかしげた。それから職員室に向かう暁。
「誰かいるのか……」
暁はそろりと職員室に入ると、
「あ! 先生、おはよう!! 起こしちゃったか?」
満面の笑みで立つ剛の姿があった。
「おはよう、剛! 予定より早く来たんだな!」
「えへへ。早く先生に会いたくてな! それに水蓮にも会いたかったし!!」
「ははは! そうか。……剛!!」
「ん?」
「おかえり!」
暁はそう言って剛に微笑むと、
「ただいま!!」
剛も笑顔で暁にそう返したのだった。
また剛と一緒にここで暮らせるなんて――暁はそう思いながら、進路相談を受けたあの日の夜のことをふと思い出した。
『先生みたいな教師になりたいんだ』
そう言って笑っていた剛の顔。そしてそれから起こった出来事。
今度は間違えない。あの時の俺よりも今の俺は成長しているから――
「これからもよろしくな、剛」
「こちらこそ、またお世話になります!!」
その後、剛は自室へと向かっていった。
剛から食堂に行こうと誘われた暁だったが、水蓮を置いてはいけないと思い、あとから行くよと伝えて剛を見送ったのだった。
「剛がここで住むことになるのなら、水蓮のことはちゃんと伝えたほうがよさそうだな」
それから自室に戻った暁は、再び水蓮が起きるまでの読書を始めたのだった。
数分後。
「んんん……」
水蓮は目をこすりながら、起き上がった。
「水蓮、おはよう」
暁はそう言って、水蓮に笑いかけた。
「せんせ……おはよ」
水蓮はそう言いながら、暁の胸に顔をうずめる。
「まだ眠たそうだな」
「ううん。ちゃんと、起きてるよ。もう眠くなぃ……すうう」
「はいはい」
暁は水蓮を抱き上げて、ベッドに寝かせた。
そしてすやすやと眠る水蓮の顔を優しく見守る暁。
本当に無邪気な顔で眠るんだな――
そう思っていると、水蓮の顔が急に苦しそうな表情になる。
「ま、ま……どこにいるの……ぱぱ、会いたいよ」
そう言って水蓮の目から涙がこぼれた。
「水蓮……」
そして水蓮をそっと抱きしめる暁。
俺がこの子を守らなくちゃ。だって水蓮の両親は――
そう思いながら、所長から聞いた水蓮の過去を思い出す。
「できるかどうかわからないけど、でも出来る限り水蓮の父親の代わりをしよう。もう悲しい思いはさせたくないからな」
そう誓った暁だった。
そして数分後。水蓮は完全に目を覚ました。
「先生、おはよう!」
そう言っていつもと変わらない無邪気な笑顔をする水蓮。
その様子から見ていた夢のことは覚えていないようだった。
「おはよう、水蓮」
暁はそう言いながら、笑いかけた。
「今日はいつもよりニコニコだね!」
「そうか? もしそうなら、大切な生徒が戻って来たからかもしれないな」
「たいせつなせいと??」
「おう! これから水蓮と一緒にお勉強する友達のことさ。会えばわかるよ!」
「うん! スイ、楽しみにしてるね!!」
それから水蓮を着替えさせてから、暁は水蓮と共に食堂へ向かった。
一台の車が停車して、その中から青年が降りてきた。
エントランスゲートをじっと見つめる青年。
「久しぶりだな」
そう呟き、その青年は施設の敷地内へと向かっていった。
* * *
暁自室内。
暁は着替えを終えてから水蓮が起きるまでの日課の読書をしていた。
一人だったら着替えてまっすぐ食堂に行くところだけど、今は――
そんなことを思いながら、スヤスヤと寝息を立てて眠る水蓮の方にちらりと視線を向けて微笑む暁。
「本当に父親になった気分だな」
そう呟いた暁は、再び読書を始めた。
それから数分後。職員室の方から物音を聞き、
「誰だ……?」
暁はそう言って首をかしげた。それから職員室に向かう暁。
「誰かいるのか……」
暁はそろりと職員室に入ると、
「あ! 先生、おはよう!! 起こしちゃったか?」
満面の笑みで立つ剛の姿があった。
「おはよう、剛! 予定より早く来たんだな!」
「えへへ。早く先生に会いたくてな! それに水蓮にも会いたかったし!!」
「ははは! そうか。……剛!!」
「ん?」
「おかえり!」
暁はそう言って剛に微笑むと、
「ただいま!!」
剛も笑顔で暁にそう返したのだった。
また剛と一緒にここで暮らせるなんて――暁はそう思いながら、進路相談を受けたあの日の夜のことをふと思い出した。
『先生みたいな教師になりたいんだ』
そう言って笑っていた剛の顔。そしてそれから起こった出来事。
今度は間違えない。あの時の俺よりも今の俺は成長しているから――
「これからもよろしくな、剛」
「こちらこそ、またお世話になります!!」
その後、剛は自室へと向かっていった。
剛から食堂に行こうと誘われた暁だったが、水蓮を置いてはいけないと思い、あとから行くよと伝えて剛を見送ったのだった。
「剛がここで住むことになるのなら、水蓮のことはちゃんと伝えたほうがよさそうだな」
それから自室に戻った暁は、再び水蓮が起きるまでの読書を始めたのだった。
数分後。
「んんん……」
水蓮は目をこすりながら、起き上がった。
「水蓮、おはよう」
暁はそう言って、水蓮に笑いかけた。
「せんせ……おはよ」
水蓮はそう言いながら、暁の胸に顔をうずめる。
「まだ眠たそうだな」
「ううん。ちゃんと、起きてるよ。もう眠くなぃ……すうう」
「はいはい」
暁は水蓮を抱き上げて、ベッドに寝かせた。
そしてすやすやと眠る水蓮の顔を優しく見守る暁。
本当に無邪気な顔で眠るんだな――
そう思っていると、水蓮の顔が急に苦しそうな表情になる。
「ま、ま……どこにいるの……ぱぱ、会いたいよ」
そう言って水蓮の目から涙がこぼれた。
「水蓮……」
そして水蓮をそっと抱きしめる暁。
俺がこの子を守らなくちゃ。だって水蓮の両親は――
そう思いながら、所長から聞いた水蓮の過去を思い出す。
「できるかどうかわからないけど、でも出来る限り水蓮の父親の代わりをしよう。もう悲しい思いはさせたくないからな」
そう誓った暁だった。
そして数分後。水蓮は完全に目を覚ました。
「先生、おはよう!」
そう言っていつもと変わらない無邪気な笑顔をする水蓮。
その様子から見ていた夢のことは覚えていないようだった。
「おはよう、水蓮」
暁はそう言いながら、笑いかけた。
「今日はいつもよりニコニコだね!」
「そうか? もしそうなら、大切な生徒が戻って来たからかもしれないな」
「たいせつなせいと??」
「おう! これから水蓮と一緒にお勉強する友達のことさ。会えばわかるよ!」
「うん! スイ、楽しみにしてるね!!」
それから水蓮を着替えさせてから、暁は水蓮と共に食堂へ向かった。
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