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「あとずいぶん幅広く手を出してくれてるものだから、本当にいろいろ大変でしたよ。そうそう既婚者の方にも数名手を出してたようですね。それを相手の男性にもきちんと教えておきましたので」
え。まさかとは思っていたけど、既婚者にまで手を出してたの。見境なさすぎでしょう。
だけどそれに応じる方も、旦那さんがいるのに罪悪感わかないのかしら。
「そちらの方も、追って慰謝料請求が来るはずなので」
「そ、そんな」
「自分が全てしたことだろう? それに一番は、オリビアに手を出したことへの謝罪と賠償、あとはその罪もしっかり償わせるからな」
「ああああああ」
アレンは膝を着いて天を仰ぎながら、意味不明な叫び声をあげていた。
多額の賠償に、私への罪、そして決闘……命がいくつあっても足りなさそうね。しかもシーラは行く宛もない。
ああ、これで終わったのかな。やっと。
でも婚約のこととか、その前にユノンを助け出してもらわないと。
いっぱい考えなきゃいけないことがあるのに、頭が痛くてちょっと休憩したいっていうか……。なんだろう、ほっとしたら体が重いなぁ。
マルクにもたれかかったまま、意識と体重が地面にストンと落ちる感覚がした後、私の意識はなくなっていた。
◇ ◇ ◇
目を開けるとそこには見知らぬ天井ではなく、今にも泣き出しそうなユノンの顔があった。
「お嬢様!」
「ユノン、無事だったのね。良かった」
私はそのままユノンの顔に手を伸ばし、そっとその頬に触れた。大粒の涙が零れ落ちる。
「無事だったのじゃないでしょう。ご自分が何にも無事じゃないでしょうに」
「だってユノンが無事か心配だったんだもの」
「もーーー。そういうことです。ダメなのとこは」
「ごめん……。ちゃんと次は護衛付けようね。ユノンがいるから大丈夫かなーって思って、結局ケガさせちゃった」
「ホントですよ。次からはご自分へのお金をもったいないって言う癖は絶対に禁止ですからね」
「そうする。もうさすがにこりごりよ。節約も程よく、ね」
うちの金食い虫たちはきれいさっぱり私の元から消えてくれたから、もう節約なんてする必要もないんだけどね。
元から無駄遣いなんてする方じゃないし、そんなに使うトコもなし。必要な時に必要なだけ使えるくらいは、あるし。
必要なことややりたいことまで我慢をしてお金を貯めるのも違うって思うから。
「今日楽しみにしてたのにね」
「あー、予約ダメになってしまいましたね」
「ねぇユノン、あれからどれくらいたったの? そしてここはどこ?」
きょろきょろと辺りを見渡す。
シックな作りのカーテンや、それでもうちよりもかなり高そうなシャンデリア。
寝かされているベッドもふかふかで、とても肌触りがいい。そんなベッドには無駄に枕も四個。
しかも広すぎて、シーツの海で泳げてしまうほどの大きさがあった。
「公爵家ですよ。先ほど、他の侍女が小公爵をお呼びに言ったので来ると思いますよー」
「えーーーー。服も髪も顔もぼろぼろなんだけど」
「それはまぁ、諦めて下さいな」
諦めるってさぁ。いや諦めるしかない状況なのは分かるけど。
でも……なんかやだぁ。
「だいたいココまで運んできたのも小公爵様ですし」
「あ」
「ええ。大丈夫です」
「ぅえーん」
ボロボロなのをもうしっかりと見られた後だったのね。しかも抱きかかえられてってことは、他の使用人やご家族などにも見られたかもしれないってことだし。
婚約の挨拶とか何にもしてもいないのに。感じが悪すぎでしょう。
「ああ、でもそう……話をしないと、ね。さっきはうやむやにしちゃったし」
「まぁそんなに思いつめなくても大丈夫そうですけどねー」
「んんん? どういうこと?」
「会って話せば分かりますって」
ユノンはそこは何の問題もないとばかりに、私をなだめすかす。
でも一度沸いた不安は胸の中でくすぶり、マルクを待つ時間がとても長く思えた。
え。まさかとは思っていたけど、既婚者にまで手を出してたの。見境なさすぎでしょう。
だけどそれに応じる方も、旦那さんがいるのに罪悪感わかないのかしら。
「そちらの方も、追って慰謝料請求が来るはずなので」
「そ、そんな」
「自分が全てしたことだろう? それに一番は、オリビアに手を出したことへの謝罪と賠償、あとはその罪もしっかり償わせるからな」
「ああああああ」
アレンは膝を着いて天を仰ぎながら、意味不明な叫び声をあげていた。
多額の賠償に、私への罪、そして決闘……命がいくつあっても足りなさそうね。しかもシーラは行く宛もない。
ああ、これで終わったのかな。やっと。
でも婚約のこととか、その前にユノンを助け出してもらわないと。
いっぱい考えなきゃいけないことがあるのに、頭が痛くてちょっと休憩したいっていうか……。なんだろう、ほっとしたら体が重いなぁ。
マルクにもたれかかったまま、意識と体重が地面にストンと落ちる感覚がした後、私の意識はなくなっていた。
◇ ◇ ◇
目を開けるとそこには見知らぬ天井ではなく、今にも泣き出しそうなユノンの顔があった。
「お嬢様!」
「ユノン、無事だったのね。良かった」
私はそのままユノンの顔に手を伸ばし、そっとその頬に触れた。大粒の涙が零れ落ちる。
「無事だったのじゃないでしょう。ご自分が何にも無事じゃないでしょうに」
「だってユノンが無事か心配だったんだもの」
「もーーー。そういうことです。ダメなのとこは」
「ごめん……。ちゃんと次は護衛付けようね。ユノンがいるから大丈夫かなーって思って、結局ケガさせちゃった」
「ホントですよ。次からはご自分へのお金をもったいないって言う癖は絶対に禁止ですからね」
「そうする。もうさすがにこりごりよ。節約も程よく、ね」
うちの金食い虫たちはきれいさっぱり私の元から消えてくれたから、もう節約なんてする必要もないんだけどね。
元から無駄遣いなんてする方じゃないし、そんなに使うトコもなし。必要な時に必要なだけ使えるくらいは、あるし。
必要なことややりたいことまで我慢をしてお金を貯めるのも違うって思うから。
「今日楽しみにしてたのにね」
「あー、予約ダメになってしまいましたね」
「ねぇユノン、あれからどれくらいたったの? そしてここはどこ?」
きょろきょろと辺りを見渡す。
シックな作りのカーテンや、それでもうちよりもかなり高そうなシャンデリア。
寝かされているベッドもふかふかで、とても肌触りがいい。そんなベッドには無駄に枕も四個。
しかも広すぎて、シーツの海で泳げてしまうほどの大きさがあった。
「公爵家ですよ。先ほど、他の侍女が小公爵をお呼びに言ったので来ると思いますよー」
「えーーーー。服も髪も顔もぼろぼろなんだけど」
「それはまぁ、諦めて下さいな」
諦めるってさぁ。いや諦めるしかない状況なのは分かるけど。
でも……なんかやだぁ。
「だいたいココまで運んできたのも小公爵様ですし」
「あ」
「ええ。大丈夫です」
「ぅえーん」
ボロボロなのをもうしっかりと見られた後だったのね。しかも抱きかかえられてってことは、他の使用人やご家族などにも見られたかもしれないってことだし。
婚約の挨拶とか何にもしてもいないのに。感じが悪すぎでしょう。
「ああ、でもそう……話をしないと、ね。さっきはうやむやにしちゃったし」
「まぁそんなに思いつめなくても大丈夫そうですけどねー」
「んんん? どういうこと?」
「会って話せば分かりますって」
ユノンはそこは何の問題もないとばかりに、私をなだめすかす。
でも一度沸いた不安は胸の中でくすぶり、マルクを待つ時間がとても長く思えた。
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