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「お嬢様! 商業ギルドから連絡がはいりましたよー」
父がここを訪ねて来てから丸一日。思ったよりも早い展開になってきたみたい。吉報が届いたとばかりに、メモのような手紙を持ったユノンが部屋へ飛び込んできた。
商業ギルドは隣の街にあるものの、馬を急がせればさほどの時間がかからない位置にある。
「ねぇ、ちなみに商業ギルドはどっちが押しかけてるって言っているの?」
「とりあえず今日は、旦那様だけみたいですよー」
「そう。ま、あっちは仮にも侯爵家だものね。そう簡単には傾かないと思っていたのよね」
「でもまぁ、一つだけでもとりあえずは上々ね」
「予定通り全部回収をかける感じですか?」
「ええ。ギルド長にはそう伝えてあるわ。私が家を出た後に、お父様がお金を借りに来たら、融資をストップして元金も全て回収するように話してって」
これこそが私の前からの大きな計画だった。
商業ギルドと通して融資をしつつ、借金でどうにもならなくなったところで融資を切る。実家も、アレン様の家も、借金の担保は全て土地だ。
しかもその土地はちょうど都合よく、この領地の両隣にある。借金を払えなければその土地は回収され、うちの領地となる仕組みとなっている。
商業ギルドには名前を貸してもらう手数料として、一部のお金とあとはうちの領地で活動する際は手数料を半額にするという契約も。
だからこそ、商業ギルドは父たちの土地がうちの領地になることを望んでいる。
「きっと今頃、旦那様はすごい顔しつつ怒鳴り散らしてそうですね」
「あーでもさぁ、商業ギルトとはいえ、護衛とかしっかりしているから強面に囲まれて言うに言えないんじゃないのかな」
普通ならばこれ以上借金が出来ないことに困ったとなるはずなのに、きっとあの人は逆切れしているはず。だって、ギルドを訪れるまではこのまま借りれるって当たり前のように思っていたはずだから。
お金を貸し続けていたのも、利息だけの返済で良かったのも、みんな私の計画だなんて思わないでしょうね。そしてこの後の反応も、予想がつく。
「となると、その足でまたこっちに来るでしょうね」
「あー確かに。きっと小公爵様がいないって分かってるなら、かなり強くでるんじゃないですか? 激高して、また暴力を振るいそうだし」
「それはあるかもしれないわね。マルク様もいないし、きっとお金の無心をしにくるだろうし」
「さすがにうちはそんな男手はいないですよ」
「そうねぇ」
実家から引き抜いてきた使用人たちはいるものの、屈強な~と思えるような人物はいない。元からうちは、少し事情がある人ばかりを雇っているからなぁ。
病気があったり、完治しないケガを負っていたり、他では働けなかった人たちばかりなのだ。まさかそんな人たちに立ち合いを求めて、何かあったら困ってしまうし。
「冒険者ギルドにでも誰か護衛として今日は来てもらった方がいいかも」
「こんな時間に誰かいますかね」
確かに今は昼もとうに過ぎてしまっている。普通で考えたらみんな冒険に出て行っている時間だろう。運よく早く終わって帰ってきた人がいるかもしれないけど。
その期待はあまり高くない。ただユノンがいくら強い元冒険者といえど、女二人で大の男を相手にするのはどうなのだろう。
もしもってこともあるし……。
「ユノン悪いけど、やっぱり一度冒険者ギルドに誰か手が空いてる人がいないか一応聞いてきてくれる? もし激高した父が刃物でも振り回したら困るし」
「あー、ないとは思いますけどね。でも追い詰められたら何をするか分からないし。暇そうなやつを捕まえてきますよ」
「無理にはダメよ。いたら、でいいからね」
「はいはーい。ではひとっ走り行ってきます。もし誰もいなかったら、二人で人型モンスター退治といきましょう」
誰にも負けないというようなユノンの笑みを見ていると、なんだかたった二人であっても大丈夫な気がしてくる。
「そうね。その時は二人でやっつけましょう」
「じゃ、いてきまーす」
なんとかなるか。と思えるくらい青く晴れた空は、どこまでも高かった。
父がここを訪ねて来てから丸一日。思ったよりも早い展開になってきたみたい。吉報が届いたとばかりに、メモのような手紙を持ったユノンが部屋へ飛び込んできた。
商業ギルドは隣の街にあるものの、馬を急がせればさほどの時間がかからない位置にある。
「ねぇ、ちなみに商業ギルドはどっちが押しかけてるって言っているの?」
「とりあえず今日は、旦那様だけみたいですよー」
「そう。ま、あっちは仮にも侯爵家だものね。そう簡単には傾かないと思っていたのよね」
「でもまぁ、一つだけでもとりあえずは上々ね」
「予定通り全部回収をかける感じですか?」
「ええ。ギルド長にはそう伝えてあるわ。私が家を出た後に、お父様がお金を借りに来たら、融資をストップして元金も全て回収するように話してって」
これこそが私の前からの大きな計画だった。
商業ギルドと通して融資をしつつ、借金でどうにもならなくなったところで融資を切る。実家も、アレン様の家も、借金の担保は全て土地だ。
しかもその土地はちょうど都合よく、この領地の両隣にある。借金を払えなければその土地は回収され、うちの領地となる仕組みとなっている。
商業ギルドには名前を貸してもらう手数料として、一部のお金とあとはうちの領地で活動する際は手数料を半額にするという契約も。
だからこそ、商業ギルドは父たちの土地がうちの領地になることを望んでいる。
「きっと今頃、旦那様はすごい顔しつつ怒鳴り散らしてそうですね」
「あーでもさぁ、商業ギルトとはいえ、護衛とかしっかりしているから強面に囲まれて言うに言えないんじゃないのかな」
普通ならばこれ以上借金が出来ないことに困ったとなるはずなのに、きっとあの人は逆切れしているはず。だって、ギルドを訪れるまではこのまま借りれるって当たり前のように思っていたはずだから。
お金を貸し続けていたのも、利息だけの返済で良かったのも、みんな私の計画だなんて思わないでしょうね。そしてこの後の反応も、予想がつく。
「となると、その足でまたこっちに来るでしょうね」
「あー確かに。きっと小公爵様がいないって分かってるなら、かなり強くでるんじゃないですか? 激高して、また暴力を振るいそうだし」
「それはあるかもしれないわね。マルク様もいないし、きっとお金の無心をしにくるだろうし」
「さすがにうちはそんな男手はいないですよ」
「そうねぇ」
実家から引き抜いてきた使用人たちはいるものの、屈強な~と思えるような人物はいない。元からうちは、少し事情がある人ばかりを雇っているからなぁ。
病気があったり、完治しないケガを負っていたり、他では働けなかった人たちばかりなのだ。まさかそんな人たちに立ち合いを求めて、何かあったら困ってしまうし。
「冒険者ギルドにでも誰か護衛として今日は来てもらった方がいいかも」
「こんな時間に誰かいますかね」
確かに今は昼もとうに過ぎてしまっている。普通で考えたらみんな冒険に出て行っている時間だろう。運よく早く終わって帰ってきた人がいるかもしれないけど。
その期待はあまり高くない。ただユノンがいくら強い元冒険者といえど、女二人で大の男を相手にするのはどうなのだろう。
もしもってこともあるし……。
「ユノン悪いけど、やっぱり一度冒険者ギルドに誰か手が空いてる人がいないか一応聞いてきてくれる? もし激高した父が刃物でも振り回したら困るし」
「あー、ないとは思いますけどね。でも追い詰められたら何をするか分からないし。暇そうなやつを捕まえてきますよ」
「無理にはダメよ。いたら、でいいからね」
「はいはーい。ではひとっ走り行ってきます。もし誰もいなかったら、二人で人型モンスター退治といきましょう」
誰にも負けないというようなユノンの笑みを見ていると、なんだかたった二人であっても大丈夫な気がしてくる。
「そうね。その時は二人でやっつけましょう」
「じゃ、いてきまーす」
なんとかなるか。と思えるくらい青く晴れた空は、どこまでも高かった。
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